猫の変形性関節症(OA)は、骨や関節に起こる異常です。本来は痛いはずですが、猫は上手に痛みを隠します。X線検査で、かなりの痛みがありそうに見えても、猫は平然としていることがあり、このような場合に、薬を使って痛み止めを行う必要があるかは難しい判断になるかも知れません。見た目に無症状の猫でも、X線検査をすると変形性関節症(OA)が見られることは一般的なことです。
変形性関節症(OA)は、猫にとって最も一般的な疾患の一つです。12歳を超える猫の90%に、一つ以上の関節に変性性の変化があることがわかっています。猫の変形性関節症(OA)は、原因を特定することができずに起こる特発性疾患と呼ばれるものに含まれ、年齢が上がるに連れて起こりやすくなります。
高齢の猫であれば、この変形性関節症(OA)があると見ても間違いではないでしょう。
猫の変形性関節症(OA)の概要
犬に見られる変性性関節症(OA)と異なり、変形性関節症(OA)の猫では、足をあげたり、引きずったり、捻って痛がったりと言った症状はあまり問題になりません。つまりは、外から見てもわかりづらいのです。それ故に、猫の変形性関節症(OA)の診断のためには、ご家族の方からの慎重な聞き取りが最も大切な情報になります。
私が見る、猫の変形性関節症(OA)の症状は、トイレで鳴くというものです。排泄の時に、腰を落として用を足すわけですが、その姿勢が辛いようです。X線検査をすると、腰に非常にわかりやすい変形性関節症(OA)が見られることがあります。
X線検査、レントゲン撮影では、6歳を超える猫の60%以上に変形性関節症(OA)が認められるという研究結果があります。
高齢の猫には、変形性関節症(OA)の症状として、痛みがみられることがあります。しかし、痛みを外から評価することは難しく、以前ほど動かなくなったとか、高いところに上らなくなったなどの様子から、痛みについて調べるきっかけを探すことになります。
検査には、X線検査が最も使われています。そして、この病気は、進行性ですので、治ることはありませんし、悪化を続けます。
治ることがないので、長期間にわたる慢性疼痛を和らげる必要があります。猫の疼痛には、非ステロイド系消炎鎮痛薬が有効だという研究結果が数多く存在します。
猫の変形性関節症(OA)は、長期疾患で、治ることがありません。どれだけ上手に付き合うかが大切です。しかも、猫はX線検査で想定されるよりもはるかに痛みを過小にしか表現しません。痛み止めは、あなたがわかる範囲での症状の緩和を行うことになるでしょう。
よく聞かれる、猫の変形性関節症(OA)の症状には、次のようなものがあります。
キャットタワーやお気に入りの高いところに上らなくなった、トイレ以外で排泄をすることが増えてきた、以前のように遊ばなくなった、一人で静かにしている、爪とぎをしなくなった
治療や管理方法には、どのようなものがあるのか?
猫の変形性関節症(OA)の治療や管理方法は、5つに分けられます。すなわち、痛み止め(薬剤)、食事やサプリメント、理学療法(リハビリテーション)、体重管理、定期的なモニタリングです。
痛み止め(薬剤)
猫の変形性関節症(OA)は、治ることがなく、初めはほぼ無症状でも、一度症状が見られると、痛み止めが必要になることがあります。そして、痛み止めを長期間使うことになりますが、猫に使える痛み止めで、長期間使って良いと認可された薬はありません。
そこで、獣医師は、長期に使って良いと認可はされてはいないが、長期使用が安全であるという研究結果に基づいて薬を処方することになります。適応外使用をすることが一般的になっています。
ここで使用されるのは、非ステロイド系消炎鎮痛剤です。
食事とサプリメント
猫の変形性関節症(OA)に有効だとされるサプリメントは、ほとんどありません。しかし、市販品には、変形性関節症(OA)に利用できるとして、数多くのサプリメントが存在しています。文献的には、オメガ3脂肪酸が役に立ったとするものが存在しています。
理学療法(リハビリテーション)
理学療法テクニックは、猫だけではなく、全ての動物の変形性関節症(OA)で重要だとされています。猫の薬物療法には、ある程度の制限や限界があるので、併せて理学療法は重要になります。
動物が何であれ、変形性関節症(OA)に理学療法を用いる目的は、痛みを和らげること、運動機能や関節の可動域を最大に保つこと、そして、正常な活動、動きを維持することです。
これらは、かかりつけの獣医師に相談して、必要なプログラムを組んでもらいましょう。
環境改善
猫が過ごしやすくなるように、環境改善は大切です。その一例です。
トイレに容易に行けるように側面の高さを低くする、ジャンプできないところに届きやすいようにステップを用意する、猫のベッドを暖かくしておく、猫が食べやすいように食器を複数用意しておく
体重管理
猫の変形性関節症(OA)で、肥満と痛みの関連性は、明確にはわかっていません。高齢の猫で、肥満は少なく、ある程度肥満傾向にあった猫でも恒例になると痩せてくることがあります。それでも、猫が肥満であれば、関節への負荷が大きくなりますので、体重管理を行うことでその負荷を軽減できます。
猫の高齢化が進むに従い、変形性関節症(OA)の治療や管理についての情報が増えてくることが予想されます。猫の変形性関節症(OA)は今後ますます重要な疾患として取り上げられる可能性が高いものです。