【犬の心原性肺水腫】救急!! 獣医師が解説します。

肺水腫ならば、早急な治療が必要で、どんなに治療をしてもさらなる急変や急死が起こることがあります。状態改善のためには、とにかく動物病院での治療が必須です。

動物病院では、利尿薬の静脈内注射や、血管を広げる薬の舌下錠と呼ばれるものを粘膜に接触させることで症状の改善を試みますし、酸素室にどうぶつを入れて、呼吸の補助をすることが多いでしょう。外来で治療して、その後はお家で薬を飲んで治るかというと、ほとんどはそうではなく入院管理が必要です。それでも、急変や急死が起こることがあります。

心臓の病気を持っている犬や猫、そして、心臓の病気の話など獣医師から聞いたことがないけど、急に苦しそうに息をしているどうぶつには、もしかしたら肺水腫が起こっているかも知れません。
肺水腫の症状は、呼吸数が増えて、苦しそうに上を向いたりしながら息をすることです。呼吸数が吸えることは、頻呼吸と言いますし、苦しそうな呼吸はそのまま呼吸困難と言います。

多くは、口を開けて呼吸をする、いわゆる開口呼吸をします。

そして、伏せたり、お座り姿勢を取りながら、息をして横になることができないことが多いですね。あと、普段から意識して見ておかないとわかり辛いのですが、舌の色が悪くなります。冷た目のプールに長くいた時の唇の色みたいになることがあります。

こうなりますと、多くのどうぶつは水も食事も欲しがりません。時に、水だけは飲むっていうこともありますから、飲食の様子だけではそうだとも、違うとも判断は難しいですけどね。そして、大切なこととして、頻呼吸も呼吸困難でもないけれども、ハアハアしている時には、具合が悪そうに見えますから、それだけで病気だ!ってことでもないですからね。

このような、病気でも病気でなくても、見られる症状を、非特異的な症状と言っています。

犬の心臓の病気では、時に咳がよく見られますが、肺水腫と咳の関係は今ひとつ確かなものではありません。猫の場合は、心臓病でも肺水腫でも、あまり咳は見られませんし。

なぜこのようなことが起こるかと言いますと、肺に水(組織間液)が異常な量で溜まってしまい、正常な肺で行われている二酸化炭素と酸素のガス交換ができなくなってしまうために、低酸素血症や呼吸困難が起こるからです。

飼い主さんは、何をしたら良いでしょうか。

まずは動物病院に連絡を取ることです。できれば向かいながら。

夜間や、かかりつけの動物病院がお休みの時には、救急病院などに行くように、普段からセカンドチョイスを持っておくことも大切です。

もし肺水腫で間違いがないのであれば、もしもの時に備えて、救命処置を希望するかしないかを獣医師に伝えておいても良いと思います。

呼吸が止まれば、呼吸を補助するための気管チューブの挿入や心臓マッサージ、薬物療法などが始まります。どうぶつの場合には、救命処置に対して、NO!と言えるので、希望しない場合には、あらかじめ獣医師に伝えておくことが大切です。また、どんなことをしてでもできるだけのことをするという場合、そのこともまた担当獣医師に伝えておくと良いでしょう。

ほとんどの獣医師は、入院管理を勧めるはずです。

よほど軽い場合や、飼い主が強く願って救命処置を行わない場合などには、入院はしないかもしれませんけどね。

では、動物病院では何をするかと言いますと、まずできれば胸部X線検査、レントゲンを検査をします。どうぶつに状態によっては、横にしてレントゲンを撮ると、そのまま亡くなってしまうくらいにギリギリのこともありますから、他の診察項目で、肺水腫と判断して治療を開始することになります。


まずは血管確保といって、これから何回か静脈注射をしますから、すぐにできるように小さな留置針というものを腕の血管に装着します。

そしてできるだけ早くに利尿薬を注射します。利尿が見られるまで、何回か繰り返して注射します。

通常は利尿が見られるのは、注射から5分から30分以内です。

私は、だいたい30分以内に排尿があるとチームには伝えていて、それを観察するように指示しています。

同時に、酸素室に入れて、通常の空気中の酸素濃度が20%ほどのところ、酸素室は酸素濃度の設定を30から40%にしてありますので、通常の2倍ほど濃い濃度の酸素の中にいることで、呼吸を楽にすることができます。

薬を使って利尿をかけて、舌下錠で血管拡張させ、やや高濃度の酸素室に入れる。まずはそこまでしてから、後を考えるくらいに、そこまでは迅速に行います。

肺の水を取り除くのに、血管を拡張させるのはなぜか?

これは、肺水腫の原因が心臓にある場合、血圧を低めにしてあげる必要があるからです。高い血圧ですと、肺水腫がさらに悪化することもあるからです。血管が広がると、血圧は上がらなくなったり、下がったりします。飲みのもを飲む時に、細いストローと太いストローを使うと、吸うために必要な吸う力が違うように、ストローや血管は太い方が弱い力で使えるからです。ちょっと例えが分かりづらいですかね?それが血管を拡張させるメリットです。

ここで、心原性肺水腫の治療中に静脈点滴が必要かという議論があります。

利尿薬を使っている。すなわち、水分を抜こうとしているのに、点滴で水分を入れることは矛盾するのだと言われます。しかしながら、血圧が低い場合には、利尿をかけながら、強心剤を持続的な点滴に入れて治療することもあります。

入院中は血圧や不整脈に注意しながら、とにかく呼吸数が安定するように管理することになります。治療効果を評価するのは、呼吸数の安定化と、レントゲン検査での肺水腫の改善の程度です。

私が診察する心原性肺水腫の犬は、4-5日間の入院をして落ち着いてくることがありますが、もっと短い時間で大丈夫なこともあれば、そのまま良くならずに亡くなることもあります。これは治療方法によるというよりも、その子その子の心臓の病気の程度によるものだったり、悪化の早さによるものだったり、性格的に非常に心臓に負担をかけることだったり、本当に様々です。

肺水腫が順調に改善する時のレントゲン検査結果は、まるで肺全体を覆っていた白い霧がすっきりと晴れるように澄んできます。当然、呼吸も安定して食欲も戻ってきます。

一度肺水腫を経験すると、日常的に利尿薬を使うことになります。この時には、注射ではなく内服薬です。ときに、その後に利尿薬が必要なくなる子もいますが、多くはありません。

心原性肺水腫で、一度生死の境を彷徨った犬でも、半年を超えて長生きできることもあります。
そして一つ大切な情報があります。
心臓の病気である、弁膜症、特に僧帽弁閉鎖不全症によってこの肺水腫が起こることは非常に多いのですが、この僧帽弁閉鎖不全症は手術でかなり改善することもあります。

この手術は非常に特殊な手術ですから、手術設備がある診療施設はかなり限られます。

費用は、おおよそ150万円くらいから200万円くらいと聞いています。そして私が知っている成功率は、おおよそ90%前後です。

比較的心不全の程度が軽い方が成績が良いという報告があります。

心臓病は発見からしばらくの間は、あまり症状が悪化せずに本当に病気なのか、薬が必要なのかどうか心配される方もあります。しかし、必ず悪化はします。程度は様々ですが。そのまま苦しい思いをせずに最後を迎えられるところまで行けば、それはそれだと思いますが、肺水腫は見ていても苦しそうです。どうにか、早期に発見してあげられるように、動物病院から提案される定期検査は欠かさず受診されることをお勧めいたします。

犬の肺水腫では、肺のどこに、どのように水が貯まるのか、下の動画でも解説しています。よろしければ。

下の動画では、肺水腫の犬が動物病院に行くと、どのような治療が行われるのかの一例をご紹介しています。

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