【犬のチョコレート中毒】結局どれくらいの量を食べると危ないの?獣医師が解説します。

犬がチョコレートを食べてしまうことがありますよね。私は20年以上にわたって動物病院の獣医師として仕事をしていますが、幸運にもチョコレート中毒の犬を見たことがありません。もちろん、チョコレートを食べた犬はたくさん見ていますし、その他のカフェイン中毒も見るのですが、チョコレート中毒は多くはないはずです。

でも、でも、…飼い主さんの心配は、おそらくはどれくらい食べると危険なのかがわからないので、心配されるんですよね。

いろいろと書きますが、先にあなたが最も知りたいことを書いておきますね。

参考までに

ここで言うブラックチョコレートとは、甘味料を入れていないカカオ100%チョコレートです。ガーナチョコレートは、ミルクチョコレートでいいと思うのですが、これは1枚で50gです。ハワイその他、海外のお土産にあるマカダミアナッツチョコレートは、おおよそ1粒で14gですが、これはマカダミアナッツを含んだ重さですので、実際には12gくらいでしょうか。

犬がチョコレートをどれくらいの量食べると嘔吐や下痢が起こるか

チョコレートで嘔吐や下痢
体重2.5kgの犬:ミルクチョコレート 24g、ブラックチョコレート 3.6g
体重5.0kgの犬:ミルクチョコレート 48g、ブラックチョコレート 7.2g
体重7.5kgの犬:ミルクチョコレート 72g、ブラックチョコレート 10.8g
体重10.0kgの犬:ミルクチョコレート 96g、ブラックチョコレート 14.4g

チワワの平均的な体重が2.5kgですので、ガーナチョコレートを1/2枚食べる量です。5.0kgと言いますと、平均的なダックスフンドの体重ですが、ガーナチョコレートですと1枚くらい食べた量です。

犬がチョコレートをどれくらいの量食べると心臓への影響が起こるか

チョコレートで心臓への異常
体重2.5kgの犬 : ミルクチョコレート 48g、ブラックチョコレート 7.2g
体重5.0kgの犬 : ミルクチョコレート 96g、ブラックチョコレート 14.4g
体重7.5kgの犬 : ミルクチョコレート 144g、ブラックチョコレート 21.6g
体重10.0kgの犬 : ミルクチョコレート 192g、ブラックチョコレート 28.8g

チワワの平均的な体重が2.5kgですので、ガーナチョコレートを1枚食べる量です。5.0kgと言いますと、平均的なダックスフンドの体重ですが、ガーナチョコレートですと2枚くらい食べた量です。

犬がチョコレートをどれくらいの量食べるとけいれんや昏睡が起こるか

チョコレートで脳に影響
体重2.5kgの犬 : ミルクチョコレート 72g、ブラックチョコレート 10.0g
体重5.0kgの犬 : ミルクチョコレート 144g、ブラックチョコレート 20.0g
体重7.5kgの犬 : ミルクチョコレート 216g、ブラックチョコレート 30.0g
体重10.0kgの犬 : ミルクチョコレート 288g、ブラックチョコレート 40.0g

チワワの平均的な体重が2.5kgですので、ガーナチョコレートを1枚と半分食べる量です。5.0kgと言いますと、平均的なダックスフンドの体重ですが、ガーナチョコレートですと3枚くらい食べた量です。

犬がチョコレートをどれくらいの量食べると致死的か

チョコレートの致死量
体重2.5kgの犬 : ミルクチョコレート 120g、ブラックチョコレート 18.0g
体重5.0kgの犬 : ミルクチョコレート 240g、ブラックチョコレート 36.0g
体重7.5kgの犬 : ミルクチョコレート 360g、ブラックチョコレート 54.0g
体重10.0kgの犬 : ミルクチョコレート 480g、ブラックチョコレート 72.0g

チワワの平均的な体重が2.5kgですので、ガーナチョコレートを2枚と半分くらい食べる量です。5.0kgと言いますと、平均的なダックスフンドの体重ですが、ガーナチョコレートですと5枚くらい食べた量です。

2.5kgというと、だいたい標準的なチワワの体重ですが、チワワがマカダミアナッツチョコを10粒食べると致死的です。チワワの胃に1度には10粒は入らないと思います。しかし、これらのメチルキサンチンは、一度体内に吸収されますと3-4日は残ります。そうすると、一度に食べた量が少なくても、3-4日の間にさらにチョコレートを食べると、その濃度はまた上がります。一度に食べなくても3-4日間に何回かに分けてでも食べることは同様に危険なのです。

チョコレートの成分で、中毒を起こすものは何か?

チョコレートがダメというよりも、ダメな成分がチョコレートに入っている訳です。それは、キサンチン誘導体です。

キサンチン誘導体とは?キサンチンのメチル誘導体には、下の3つがあります。メチルキサンチンと言ったりします。

カフェイン、テオフィリン、テオブロミンがキサンチン誘導体です。

これらを含むもの

お茶:カフェインと少量のテオフィリン

ココア、チョコレート:テオブロミンと少量のカフェイン

コーヒー:カフェイン

キサンチン誘導体(カフェイン、テオフィリン、テオブロミン)の薬理作用には、中枢神経に対する作用、循環系に対する作用、平滑筋・骨格筋に対する作用、腎臓に対する作用、その他の作用があります。

一例として、お茶やコーヒーを飲んでトイレに行きたくなるのは、これらに含まれるカフェインによる腎臓に対する作用で、利尿作用が現れるからです。

ココア、チョコレートに含まれるテオブロミンの有害量

テオブロミンの有害量
軽度な異常が起こる量 犬の体重1kgあたり20mg
嘔吐や下痢などが起こる量 犬の体重1kgあたり60mg
中枢性のけいれんが起こる量 犬の体重1kgあたり100mgから200mg

これらが、どれくらいの量かを示したのが、初めの方の記事です。そして、カフェインの毒性用量は、犬の体重1kgあたり140mgです。これは、コーヒーやお茶で摂るのは、結構な量になります。普通のコーヒー約1杯に含まれるカフェインの量は60mgから90mgとされます。

コーヒーでカフェイン中毒になる量は、体重1kgあたり約2杯です。つまりは、平均的な体重が2.5kgのチワワの場合には、コーヒー5杯という量です。まあ、飲みませんよね、普通に考えて。そして、コーヒー5杯がチワワが飲めるところにあるという場面もあまり想像できません。

しかし、同様にカフェインを多く含む飲み物があります。レッドブルやモンスターエナジーです。これらも高容量のカフェインを含んでいますし、しかもコーヒーよりも犬が好みます。甘いからです。そして冷やしてあることが多いので、熱いコーヒーよりも飲みやすいのです。

モンスターエナジーを飲んで、カフェイン中毒になった犬を診察したことがあります。

メチルキサンチン中毒の症状

嘔吐、下痢、過活動、不穏、多尿、運動失調、筋肉の振盪、頻脈、徐脈、不整脈、高体温、けいれん、昏睡、死亡

これらの症状は、摂取後1から4時間ほどで発症します。

メチルキサンチンに対する特異的な解毒剤はありません。ですから、基本的に吐かせます。さらに行うならば、胃洗浄をしますし、活性炭を飲ませたり、点滴を行ったり、ときには入院管理を行います。

簡単に、チョコレートを犬の届くところに置かないようにと言いますが、そう簡単ではありません。気をつけていて起こることがほとんどなのです。

ときに、チョココロネを食べたけど大丈夫かな?という問い合わせがありますが、まあ、大丈夫ですよね。もちろんだからと言って食べさせてはいけませんよ。