【猫の角膜分離症、角膜黒色壊死症】治らない目の病気を獣医師が解説します。

どんな病気?

猫の目の表面に、黒い斑点ができます。通常は1個です。そして、涙の量が増えます。ときに、黒い斑点の周りに潰瘍ができることがあります。そうなりますと、とても痛いので、猫は目をショボショボさせるようになります。この潰瘍は直りますが、黒い斑点は、治りません。黒い斑点を削り取る手術が行われることがあります。統計的には、その手術を受けた50%ほどの猫の目に改善が見られるものの、そのうち20%は再発すると言われています。つまりは、手術を受けても角膜分離症、角膜黒色壊死症が治る猫は多くはありません。そして、幸運にも治ったとしても、その痕が白く残ることもあります。角膜は透明のガラスのようなもので、一度大きな傷がついてしまうと、元の透明な状態に戻ることが難しいのです。

何が原因?

FHV-1感染が原因と言われますが、詳細な原因や、どのようにして起こるのかと言ったメカニズムはわかっていません。FHV-1とは、猫ヘルペスウイルス1型と呼ばれるウイルスです。いわゆる猫風邪ウイルスで、猫ウイルス性鼻気管炎を引き起こします。つまりは、猫の角膜分離症、角膜黒色壊死症がみられる猫は、猫風邪の病歴があるはずです。猫風邪の症状には、涙、目ヤニ、結膜炎、鼻水、クシャミ、などがあります。猫ヘルペスウイルス1型の感染症による慢性的な角膜潰瘍のような角膜への刺激が原因だと言う報告があります。

下まぶたが内側(眼球側)にやや巻き込まれてしまう眼瞼内反症という病気がありますが、これによる慢性刺激も原因になることがあるとされています。しかし、多くはFHV-1感染によるものでしょう。

どのように診断するの?

見た目で判断することになります。はじめは、薄い色素が現れて、次第に濃く黒くなっていきます。はじめは薄い茶色の斑点です。

治療

角膜にできた傷を治療する目薬を使うことがあります。ヒアルロン酸ナトリウムです。また、抗菌薬の目薬を合わせることもあります。そして、眼瞼痙攣や多めの涙が続くような痛みがある場合、そして、壊死した黒い斑点が剥がれて、目の表面、角膜に傷が見られる場合には、必ず抗菌薬の眼薬を使うようにします。

そして、外科手術を行って、角膜表面の黒い壊死した部分を剥がすこともありますが、当然ながら必ず治るとは言えません。

治療に対して、ちょっと消極的になる猫の目の病気ですが、時間が経てば治らないことの方が多いので、初期治療には積極的になっても良いと思います。それでも、完治すると言う