【犬と猫の食事】嘘と本当を獣医師が解説します。

犬や猫にどのような食事を与えるかは、多くの飼い主を悩ませています。

一部の犬の飼い主に、生の食事、とりわけ生肉を犬や猫に与えることが注目されています。実は、生の食べ物を犬や猫に与えることは、明確な検証がなされていません。犬や猫の障害に渡るような、長期的な影響については、利点も欠点も、科学的な検証はまだ行われていません。

生の食事、生肉を犬や猫に与えることが、良いことか、良くないことかは、わかっていないというのが、現在の正しい回答です。

この生の食事、生肉をもてはやす風潮は、食糧科学や栄養生理学の知識からの推測でしかないのです。現在、生の食事を流行させたと考えられてるのは、オースオラリアの獣医師が書いた本が始まりだとされています。ちなみに、その本は、Give your dog a boneというものです。

しかし、犬や猫に生の食事、生肉を与えることは、誰もその効果については検証を行なっていません。

にも関わらずに、これが流行と呼ばれるような波を起こしているのには、多くの犬や猫の飼い主に受け入れられやすいストーリーがあるからだと予想されます。

そのストーリーとは、そもそも、犬や猫の食べていた物は、獲物であり、これらは決して調理されていたわけではないというものです。生の食事、生肉を与える基本的なやり方は、生肉、骨付き肉、内臓の割合を多くして与えるのというものです。

動物の家族が、犬や猫のために生の食事、生肉を与えたいと考えるのは、できるだけ自然なものを与えたいという願いからだと思われます。

次には、添加物についてです。

添加物を悪いものとして、できるだけ使われていない食べ物を選ぶ傾向がありますが、実は、生の食事、生肉では補うことが難しい、必須ビタミン(ビタミンA、E、D)や微量元素(亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン)も添加物という呼び方がなされていて、これらはむしろ食事に添加されているのが望ましい物です。

グルテンフリーについて

グルテンや穀物は犬や猫には有害であったり、必要がないという考え方も、科学的な根拠は全くありません。グルテンを含む食べ物を避けた方が良いのは、グルテン不耐性と呼ばれる病気の犬だけで、しかも、そのような病気の犬や猫はまれな存在です。

当然ですが、ヒトでも言えることです。グルテンを取らない方がよのは、グルテン不耐性やセリアック病の人くらいでしょう。そして、そのような病気のヒトは少ないという事実です。

自分でもグルテンを取らず、犬や猫にも与えないという人がいたら、根拠のない流行に流されているか、憧れの有名人がそうだから、自身もどうぶつ家族も真似をしているという人かも知れません。

食材がから受ける影響

熱をかけることで不足するものがあるために、生で与えるのが良いとする考え方があるようですが、これにも根拠がありませんし、誤りも見られます。

ビタミンBやビタミンAなどの栄養素は、熱で不安定になるとされていますが、ドッグフードなどの製造過程では、熱によって不足すると考えれるビタミン類を補うことで問題はなくなります。

また、肉に含まれる必須アミノ酸が、熱を加えることで犬や猫の体で使われ難くなるという発想もあるようですが、良質な動物性のタンパク質を含んでいるドッグフードであれば、そのような心配はありません。

また、最大の理由として、生の食事や生肉には、消化を助けるための酵素が含まれており、これらが熱で失活するから、生で与えた方が良いのだという考え方もあるようです。熱による酵素の失活は、完全な間違いではありませんが、消化には、食材に含まれる酵素に頼る必要はそもそもないのです。ですから、食材に熱を加えることで、消化に必要な酵素が減退するというのは、誤った理解です。

消化が良い

生の食事、生肉は、非常に消化が良い物です。しかしながら、消化の良い手作り色は、熱を加えても作ることができます。

を噛ませると、が丈夫になる

犬や猫の歯は、咀嚼には向きません。そのような歯で、硬いものを噛むことで、むしろ歯を傷めてしまうことがあり、ときには犬や猫の歯は破損してしまいます。動物病院に来院する、歯のトラブルで多いのは、硬い物を噛んで歯が折れたりかけたりした犬です。破損してすぐの治療が可能であれば、修復もできますが、時間が立っていると、抜歯をしなければならないことも少なくはありません。

私自身は、歯や顎を鍛えるために硬いものを噛む習慣はありませんし、知人、友人で、硬いものを噛んで歯や顎を鍛えている人を知りません。

犬や猫に生の食事生肉を与えることの危険性

栄養バランスが偏る、生の食材の衛生面でのリスク、骨を食べることで起こる問題点、不適切で有害な食材

生食で栄養バランスが偏ることがあります。その偏りは、次のような可能性があります。

タンパク質が多すぎる。このことは、成長期や健康な犬には問題はありませんが、肝臓疾患、腎臓疾患の犬や猫には、好ましいことではありません。そのような疾患があっても、食欲が低下しているときに、量を考えて与える分には、肉は良い食材です。このときには、生では与えないようにしましょう。

タンパク質が少ない。生肉には、タンパク質と脂肪が含まれますが、脂肪が多い生肉の場合には、タンパク質が必要量取れないことがあります。

脂肪が多く含まれすぎている。脂肪が多いと、膵炎になるリスクが高くなります。

カルシウムが多い、あるいは少ない、そして、リンとのバランスが不適切。これは、特に成長期の子犬にとっては良いことではありません。犬や猫の飼い主さんの中には、カルシウムは、取れば取るだけ良い物で、少なくて問題が起こることはわかりつつ、多くて問題が起こることなど想像されない場合もあるようですが、実は多すぎても問題が起こります。そして、カルシウムを与えるときには、リンとのバランスが適切であることが求められます。リンは、お肉にも含まれます。

ビタミンAが不足したり多すぎたりする。ヒトと異なり、猫はカロテノイドをビタミンAに変換ができません。ビタミンAを含む動物性の食べ物をとる必要があります。手に入りやすい食材ではレバーです。犬や猫に与えるときには、熱を加えてくださいね。

ビタミンEやD、微量元素の不足。ここで必要な微量元素とは、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガンなどです。

生肉による衛生上のリスク

豚肉を生で与えてはいけないことは、多くの飼い主さんがご存知ですが、同様に他の食事も生肉には危険が潜んでいます。ヒトの食材として調達されていなければ、危ないかも知れません。

肉には、ウイルス、細菌、そして寄生虫が含まれていることがあります。その中で、細菌とは、大腸菌、サルモネラ、キャンピロバクターなどのような腸内に存在するものです。

食肉となる動物は、トキソプラズマのキャリアになっていることがあります。キャリアとは、病気の症状をあまり見せないでいて、他の動物に病原体を感染させる危険性があるもののことです。

もしもサルモネラに汚染された肉を食べて無症状であってもキャリアとなった犬や猫は、サルモネラのような人に対しても病原性のある細菌を長期間にわたって便中に排泄します。そして、家中に細菌を撒き散らすことになります。

犬や猫に与える食材は、できるだけヒトの食材として流通しているものを使うことをお勧めします。そして、熱を加えることで、安全性を維持しやすくなります。

生の骨を食べることの問題点

犬や猫に骨を与えて起こる可能性のある問題点は、口の中の怪我、歯が折れる、喉や食道に刺さったり、詰まったりする、便秘、消化管閉塞、胃を傷つけることなどが挙げられます。

生で与えない方が良いその他の食材

ニンニク、卵、魚、豆類

生の食事、生肉を犬や猫に与えることを既に一つの形となっている可能性がありますが、いろいろな危険性があることも知っておくべきです。犬や猫の飼い主は、最良のものを与えたいと願うものです。しかし、その食事を選択するための情報は、客観的に裏付けのある情報ではいことが多く、ほとんどが不正解だということを知っておく必要があります。

犬や猫に、しっかりとした食事を与えたいならば、生の食事、生肉を与えることは再度検討が必要でしょう。