【犬の白内障】目の病気である白内障の原因は老化よりは遺伝性が多いですよ。獣医師が解説します。

犬の目の病気である白内障の原因は、老化よりもその他の原因の方が多い。

犬の白内障の発症原因は、先天性、遺伝性、代謝性、外傷性、薬物性そして続発性があり、ときに老化によっても白内障が起こることがあります。老化に伴う加齢性白内障は、加齢以外に白内障が起こる原因が確認できない場合に、そう診断します。そして、加齢性白内障はその進行が緩徐なために、積極的な治療(手術)対象になることは多くはありません。

本当に、歳をとったからという理由(原因)だけで白内障になったとすると、それは加齢性白内障ということになり、進行がかなりゆっくりなために、治療をしなくてもあまり問題になることはありません。もちろん、絶対ではありませんが。

と言うことは、10歳くらいでパッと見でもある程度ハッキリと分かるような白内障になっていたら、老齢性ではない白内障であることがほとんどです。

では、何か。それは遺伝性です。

10歳くらいの小型犬の目が、レンズやライトを使わなくても、白く見えるような白内障は、通常老齢性白内障ではないことがほとんどです。この場合、遺伝性の可能性が高く、ついで代謝性が多いですね。もっともっと若いうちから見られていると、若年性かも知れませんし、目をケガしてから起こるものですと、外傷性かも知れません。

老齢性白内障の進行はゆっくりですが、その他は、それほどゆっくりではないことが多く、真っ白くなるまでいってしまうことも多いです。

白内障の有効な治療は、外科手術以外はありません。

内科治療で治すことは不可能です。

しかしながら、外科手術を行う犬は全体からすると多くはないですね。私は白内障を犬を多く診察しますが、手術を考える方は多くはありません。手術をしないで、内科療法も効果がなければ何もしないかと言うと違います。
白内障があると、水晶体起因性ぶどう膜炎と言うものが起こることがあり、その予防はしっかりとやっていた方が良いです。どのような予防があるかと言いますと、目薬です。
私はよくジクロフェナックナトリウムという成分の目薬を使うことが多く、かなり良い結果が出ています。

外科手術を希望される場合には、信頼できる眼科専門の動物病院を紹介するようにしています。
ちょっとうちの動物病院からは多いんですけどね。

白内障だとわかって、手術をしないと決めたとしても、この水晶体起因性ぶどう膜炎の予防処置として点眼はやった方が良いと思います。やらずにぶどう膜炎になると、そのまま緑内障にまで進行するかも知れませんから。緑内障については、また別記事でお話しますね。

白内障みたいな病気もあります。

これは核硬化症と呼ばれるもので、見た目は目がやや白く見えます。しっかりと診察できる獣医さんですと、白内障と核硬化症を分けて話をしてくれると思います。

ここだけの話ですが、この核硬化症を診断できない獣医さんも一定数あるようで、眼科の専門医の先生が、白内障って紹介される犬の中には結構な割合で核硬化症の犬がいるということです。つまりは、誤診されているのです。

私が診察をする犬の中には、核硬化症もあり白内障もありという犬もいます。混在しているんですね。ちなみに、核硬化症では失明に至ることはないと言われます。

他には、目の表面、角膜が真っ白になるものもあります。

目が白くなりますと、飼い主さんは白内障と思われるようですが、白内障は水晶体が濁るもので、角膜は濁りません。角膜が白くなるものには緑内障もあります。角膜浮腫と呼ばれるものが見られているんですね。眼圧が高いと、角膜が白くなることがあります。急速に眼圧を下げる必要があり、目薬を使ったりして眼圧を下げるのですが、すると霧が晴れるように角膜の白さが消えていきます。それでも1週間くらいかかることもありますけどね。

あと、白内障が治る目薬が紹介されることがあるようですが、白内障は目薬では治りませんからね。白内障とは、水晶体と呼ばれるものがタンパク変性して起こるわけです。よく例えられるのが、生卵の白身です。熱を通すと透明な白身が白くなりますね。あれもタンパク質の熱による変性です。あの白くなった卵の白身を透明に戻すっていっているのと同じなのです。常識がある人なら、信じませんね。(ファンタジー好きなら、飛びついてしまうかも知れませんけどね。)

そして、この目薬がなかなか興味深いのは、海外製でありながら、どうにか買える値段なんですよね。数千円くらいの。ですから一度使ってみようかなった方が現れるわけです。残念ながら、効果はありません。

犬の白内障をしっかりと診察してくれる獣医さんは多くはないかも知れません。

そして、白内障にその進行を遅くする目薬を出して終わりになるかも知れませんが、それはそれであっても良いわけですが、ある程度の段階では、ぶどう膜炎予防の目薬を処方してほしいところですね。

最後に、遺伝性の白内障が多い犬種は、ボストンテリア、フレンチブルドッグ、トイプードル、柴犬、アメリカンコッカースパニエルで、遺伝性の先天性白内障は、ボストンテリア、ジャーマンシェパード、ミニチュアシュナウザー、ウエストハイランドホワイトテリア、オールドイングリッシュシープドッグです。

私が若年性の白内障をよく見るのは、アメリカンコッカースパニエルやプードルです。

あと、特筆しなければならないのは、糖尿病性白内障です。犬は糖尿病での白内障がとにかく多いですね。糖尿病の初診時に白内障になっているのは、全体の約60%よ言われていて、糖尿病発症から1年が経過することになると、白内障の犬は75%と言われています。

また、白内障が原因というよりも、白内障になる病気として網膜の病気があります。よくダックスフンンドで見るのが、進行性網膜萎縮という病気で、これは確実に失明するし、確実に白内障になります。これに限らす、網膜変性では、白内障はほぼ避けられません。