【犬の食欲不振】犬が病気で食べないときにはどうしたらいい?食べない理由と対処方法。獣医師が解説します。

はじめに、食べない理由がわかっていて、つまりは病気の診断が立っていて、どうにか食べさせたいときの対処法です。その後で、食べない場合に考えられる理由(病気)について書いてみます。

これは、例えば腎不全のように、自然には食べるようにすることが難しい場合で、長期にわたって食欲不振が続く場合の対処法です。元気な犬が、1日だけ食べないとか、1食残したとか、そのような場合の方法ではありません。

もしあなたの犬が、嘔吐をしていなければ、どうにか食べさせる方法を考えなければなりません。口に腫瘍があるとか顎の骨を骨折しているなど、そもそもルートがない場合は別としまして、まずはとにかく好きな物を与えてみることです。

私がお勧めするのは、お肉です。鶏肉や、薄切りの豚肉、牛肉などを茹でるなりして火を通して与えてみてください。ときに獣医さんが、腎臓病の犬に腎臓に良いというドッグフードを処方することがあります。これを食べるなら、それでももちろんいい訳ですが、腎臓病の犬で処方食を食べる犬は、ある程度初期の段階で診断が立った場合に限られるのではないでしょうか。つまりは、まだそれほど悪くはないので、食欲も結構あるという場合です。
それに限らず、獣医さんが提案してくれたフードを食べないのであれば、それをどうにかして与えるよりも、まずは好きな物でも構いませんから、犬のお腹を満たしてあげるべきです。
獣医さんが勧めてくれたドッグフードは、犬がある程度いろいろと食べるようになってから再度挑戦しても良い訳です。

もし茹でたお肉を食べなかったら、私は次に焼いたお肉を与えてみてもらっています。同じお肉でも、調理方法を変えると食べてくれることがあります。
はじめから焼いたお肉を与えないのは、どのような食事でも犬は飽きてしまうからです。
そのことを前提に考えますと、嗜好性の高いものはできるだけ後に与えた方が良い訳です。

そして、それでも食べない場合には、強制給餌というものをすることがあります。
注射器のシリンジや、それに似た物を使って口に直接食事を入れます。このとき、そのシリンジに入る食べ物でないと、この方法は難しいですので、特別な形状の食べ物を与えることになります。よく私が好んで使うのが、Hill’s社のa/d(エーディー)という缶詰です。これはペースト状になっていますので、シリンジで吸って、犬の口に入れやすい物です。次には、手作りご飯などであれば、ミキサーやフードプロセッサなどで細くしてからシリンジに入れて与える方法ですが、レバーペーストくらいの結構細かくしないとシリンジでは吸えないかも知れません。

お豆腐を与える場合には、攪拌してからシリンジに入れて与えるのも良い方法です。

それでも初めての場合には、動物病院でやり方を見せてもらってください。

安全にやらないと状態を悪くすることもあります。

そのほか経鼻や経腸カテーテルなどを使って、胃や腸に直接流動食を流す方法や胃瘻と言って、胃からお腹の皮膚を貫通するチューブを設置して、そこから胃に直接食事を送る方法もあります。ここまでを希望される飼い主さんは少ないかも知れませんが、胃瘻を設置するとほぼストレスなく必要な量の食事を流し込むことができますので、犬も元気になって体重が増えたりすることもあります。

胃瘻の設置には麻酔を使いますが、内視鏡があるとかなり短時間に処置が終わります。胃瘻設置に承諾することは、なかなか勇気のいることかも知れませんが、もしあなたの担当獣医師が胃瘻の設置を進めてくれたら、獣医師の方も勇気ある決断をしていることがほとんどですので、前向きに検討してもいいと思います。

次に、食べない犬の診察でまず行う問診には、下のようなものがあります。

私はまず診断を立てることを必須事項と考えますので、確定診断が出なくても、仮診断までは行い、対症療法に終始することはないようにしています。

問診では、次のように質問することが多いですね。

いつから食べないのですか?

いつもの半分は食べるますか、全く食べないのですか?

普段でも食べないことがありますか?

食べない以外にいつもと違うことはありますか?
食べない理由として、何かお心当たりはありますか?

はじめに、「食べない」という症状だけで、一つの病名を診断することはできません。

犬が病気で食べなかったらどうしたらいいか?

動物病院に連れて行くべきか?

あなたが知りたいことは、きっとここでしょう。

前に書いたように、「食べない」という症状だけでは、何の病気かを特定することができませんので、連れて行くべきだとも、様子を見ても良いとも断定はできません。しかし、もし動物病院に連れて行けそうなら、まずは行って先生と相談してみることをお勧めします。

なぜなら、連れて行くほどではないよ、と思う方は、きっとこの記事を読まれないだろうからです。迷うくらいに犬の様子がいつもと違うから連れて行くに越したことがないことはわかるけれども、お金もかかるし、時間もかかるし、行かなくてもよければそうしたいということだと思います。

それを前提に、それでも様子を見ても良いのか、すぐに病院に行った方が良いのかの判断としては、1食だけ食べないだけで、それまではよく食べていたし、元気もあるという時には、様子を見ても良いと思いますよ。いつもは残すことなく食べていて、1食だけでも残すことはないとしても、これで必ず病院に行かなければならない訳ではありません。

しかし、丸々1日全く食べなかったら、その時には動物病院に行った方がいですね。すぐに行けなければ、翌日でも。大きな病気ではないかも知れませんが、明らかにおかしいですので。

特に元気であっても、むしろ元気なのに食べないというのは何かある可能性が高いです。

私の考える、動物病院に行くかどうかの判断は、1食だけなら様子見もあり、丸々1日全く食べなかったら即病院に行くということです。

では、いつもの半分くらいとか半分以上は食べるということであれば、どうするか。
食欲不振以外に何も症状がないことが前提ですが、そうであれば3日間くらいは様子見もありだと思います。それ以上続くようですと、おそらく体重も減るでしょうし、何か治療が必要な異常があることがほとんどでしょう。

食べることは、体を維持するために欠かせないことですので、それができなかったり少ない場合には、本来は早急に解決すべきですが、それが難しい場合には、少しの間は様子を見ることもアリだと思います。

しかし、食べないということ以外に、何かしらの症状、例えば吐くとか、元気が無くて動かないとか、下痢をしているとか、そのようなことがあれば、それはたった1食たべないだけであっても動物病院に行くべきです。治療をしなくても治ることも多いとは思いますが、早くに原因がわかり、治るまでの時間も相当短縮できるはずですから。