【犬と猫の直腸脱】お尻から腸が出た。獣医師が解説します。

犬の直腸脱は、肛門から直腸(大腸)の粘膜が出ている状態を言います。しかし、初めて見た方には、肛門から出ているものが何かわかりにくいはずです。

肛門から出ている腸の程度も様々です。数ミリから数十センチのものまであります。これが腸ですので、真っ赤でツヤツヤとしています。ときに、この出ている腸に触れると痛がることがあります。

原因は、しぶりだと言われます。

しぶりとは、便意があっても少量しか出ないけれども、頑張って頑張って、ちょこっとだけ排便があるような、そのような状態で、痛みを伴うものです。

それ以外の原因には、先天性の異常、消化管内寄生虫、腸炎、腸内異物、便秘、難産、尿路結石、前立腺疾患、肛門括約筋の弛緩、そして会陰ヘルニアの整復手術後に起こることがあります。

治療は、飛び出した直腸を元に治めることですが、ときには外科手術が必要なことがあります。

私が先日診察をした子犬は、わずかに飛び出した直腸脱でしたが、触ると痛がりますし、飛び出した腸も、真っ赤に腫れて、そして浮腫んでいました。これをどうにかして元に戻そうとすると、全身麻酔をかけたり、肛門周りを縫合したりと、やや子犬に負担をかける手技を用いることになります。一度は肛門の中に治めようと試みましたが、浮腫があるために、大きさとして肛門に入るものではありませんでした。

そこで、無理に戻すことはせずに、まずは直腸の浮腫を治療すべく、塗布薬を使って直腸粘膜の浮腫を改善させますと、自然に肛門の中に戻りました。浮腫はすぐには引きませんので、塗り薬を塗って帰ってもらいました。翌日の診察で、飼い主さんに報告を受け、ご自宅でしばらくしてから元に戻ったということでした。この子犬は、まだ生後数か月ですが、この直腸脱で3-4回ほど来院され、その都度、同じような肛門から出ている直腸の浮腫を治療することで治療ができています。

そして、今はもう直腸脱が起こらなくなりました。

結果として、行ったことは、肛門から飛び出している直腸の浮腫を治すことで、直腸脱も改善しました。

直腸脱の一般的な治療方法は、外科手術です。外科手術も、大掛かりなものから、わずかに肛門周囲を縫合する簡易的なものまであります。また、今回私が選択した、脱出している直腸粘膜の浮腫を治すだけで、元に戻る場合もあります。