【猫の腎不全】腎臓病の血液検査でわかることを獣医師が解説します。

猫の腎臓病をモニターするときに調べるのは、血液中の尿素窒素とクレアチニン濃度を使うのが一般的です。血中尿素窒素(BUN)と血漿あるいは血清クレアチニン濃度(CRE)と呼ばれます。

血中尿素窒素(BUN)や血清クレアチニン濃度(CRE)の数値が高ければ高いほど、猫の腎臓に障害があるわけですが、どの程度の障害かは今ひとつわかりにくいかも知れません。

この記事では、まず血中尿素窒素(BUN)が高いとは、どのようなことか、次に、血清クレアチニン濃度(CRE)が高い場合、腎臓の機能がどれほど残っているのかをご紹介します。

血中の尿素窒素(BUN)レベルが高ければ、それは高窒素血症と呼ばれる状態です。高窒素血症には、その原因が腎臓にある腎性、そして腎臓の前にある腎前性、おなじく後ろにある腎後性があります。

通常、腎臓に問題があるわけですが、もともとの異常が腎臓にあって、腎臓が弱っているのか、腎臓の前、多くは心臓に問題があり、ぞの影響として腎臓に問題があることがありますし、また、腎臓の後ろ、多くは尿管、膀胱、尿道に異常があり、その影響が腎臓に起こっているのか、と分けることができます。

腎前性:腎臓には、血液が入って、出て行きます。その入る血液が減ることで、腎臓の働きが低下します。腎臓に入る血液が減る原因としては、心臓機能の低下、循環不全、そして低血圧を招くような重い脱水症が原因になります。

腎性(原発性内因性腎不全):腎臓には、小さなろ過装置がたくさんあるのですが、この1つ1つをネフロンと言います。ろ過機能の最小単位です。ちなみに、ヒトの場合は、1個の腎臓にネフロンが100万個ほどあるとされます。100万個のネフロンが集まって、腎臓の働き(ろ過、再吸収、分泌、濃縮)を行っています。このネフロンの数が減っていくことで腎機能の低下が起こります。腎性の高窒素血症は、このネフロンが働きを失って、使えるネフロンの数が減ることで起こります。

腎後性:通常、尿は腎臓から尿管→膀胱→尿道→排泄と進むのですが、どこかに閉塞が起こりますと、腎臓に圧力が生じます。例えば、尿管に結石が詰まると、腎臓で作られた尿は進む道を閉ざされてしまいます。すると、腎臓に尿による圧力がかかることになります。圧力がかかりますと、ろ過機能が低下することになります。このときに圧力を受ける腎臓の組織は、ボーマン嚢と呼ばれ、先に書きましたネフロンの始まり部分にある袋状のものです。

統計的な数値ではありませんが、私が診察をする腎臓病、腎不全の猫の場合、原発性内因性腎臓病が多く、老廃物の排泄が低下しています。

獣医師は、猫の腎臓病、腎不全を見つけたら、それが腎前性か腎性か腎後性かを鑑別します。そして、これが腎性、すなわち原発性内因性腎臓病だとわかると、次に行うべきは、急性か慢性かの判断です。

ときに、急性と慢性を区別することが難しいことがありますが、次のようなことがあれば、慢性腎臓病を強く疑うことになります。

  • 慢性的な体重減少と3か月以上にわたって水を多くのむ
  • 両側の腎臓が小さく萎縮して、表面の形が不整
  • 毛艶が悪く、痩せてきている

次には、血漿中のクレアチニン濃度をからわかることには、下のようなことことがあり、このことは、よく腎臓病、腎不全がわかったときに、獣医師から説明を受けることが多いかも知れません。

血漿中のクレアチニン濃度と残存する腎機能

  • 1.6未満であれば、ステージ1で腎臓の100%が機能しています。
  • 1.6以上2.8未満であれば、ステージ2で腎臓の33%が機能しています。
  • 2.8以上5.0未満であれば、ステージ3で腎臓の25%が機能しています。
  • 5.0以上であれば、ステージ4で腎臓の10%が機能しています。

通常、血液検査で異常値と出るのは、血漿中のクレアチニン濃度が1.8mg/dl以上です。もしそうであれば、例えば、血漿クレアチニン濃度が2.0mg/dlであれば、その猫の腎臓は33%が機能していて、67%は機能していないとも言えます。

急性腎不全であれば、回復可能なこともあり、慢性腎不全は、多くの場合には完治は困難でしょう。