犬が何かを飲み込んで、急に息苦しそうにしたら、それは食道内異物として犬を苦しめているのかも知れません。すぐに動物病院に急いでください。
大きめの異物の多くは、胸郭入口、心基底部、胃食道接合部に留まっています。
通常であれば、口から入ったものは、食道を通過して胃に到達します。食道内異物は、何かしらの原因で、口から入ったものが胃に到達できずに、食道に留まったことで、どうぶつの健康に大きな障害を及ぼします。
食道にとどまってしまうのは、釣り針のように食道に引っかかってしまうからと、大きなものですと、胃の入り口の直前の狭いところを通過できずに、動かすことができなくなることがあります。胃の入り口、食道の終わりには、噴門括約筋というものがあります。この筋肉は、胃の入り口にある巾着袋の紐のように、胃の入り口を閉じているものです。大きくて、ここを通過できずにとどまるものがあり、それが呼吸困難を引き起こします。
食道内異物がある犬に見られる症状
ヨダレが増える、呼吸困難、ものを飲み込むことが難しくなる、口の周りや口の中を引っ掻こうとする、落ち着きがなくなる、元気がなくなる、食欲がなくなる
どのような治療をするの？
まずは、引っ掛かった異物を取り除く必要があります。
食道内異物になりやすいものには、次のような物があります。
骨、おもちゃ、ボール、コイン、針、ピン、釣り針、果物の種、大きめの肉片などです。
これらを取り除くためには、まず異物が何であるかを検査で調べておかなければなりません。X線検査(レントゲン)は必須ですが、ときにX線造影検査を行います。よく消化管造影で使うバリウムではなく、ヨウ素系造影剤と呼ばれるものを飲ませてX線撮影をします。
釣り針のようなものであれば、内視鏡で取り除くことができる場合があります。しかし、ときに、食道に穴が開いてしまったり、食道が裂けてしまっていることがありますので、その場合には、手術が必要です。
また、大きな異物の場合、私が見た中には、チワワが唐揚げを詰まらせたことがあり、これは胃の中に押し込んで解決をしました。しかし、ボールや果物の種、とりわけ桃の種のように大きなものは、胃に中に押し込んだとしても、後で取り除く必要があります。中には、胃にも押し込めず、口からも引っ張れないものもあります。噴門括約筋があることで、大きめの物を胃に押し込めないこともあるのです。
食道内にあることで、急性呼吸不全が起こっている場合には、できるだけ早くに取り除く必要があるのですが、手術や内視鏡で取り除くとしても時間がかかる場合には、まずは胃に中に進めることがあります。その後に、呼吸が安定してから、胃の中にある異物を取るための処置を行います。胃切開を行う場合もありますし、内視鏡で取り除くこともありますが、そもそも噴門括約筋で動かなくなっていた異物の場合には、口の方から取り出すときに再度引っかかったり、食道を傷つけたりすることがありますので、胃切開を選択した方が確実で犬に優しいこともあります。
食道内異物は、その後良好な経過をたどることも多いですが、そのまま死に至ることもあります。どのような物が、どのように引っかかっているか、あるいは詰まっているかで、その後が大きく変わります。
食道内異物は、ご家庭で運よく解決することがないとは言えませんが、できるだけ動物病院で診察を受けた方が助かる可能性が高くなることは言うまでもありません。
