【犬の緑内障】初めは目薬で治療する。獣医師が解説します。

犬の緑内障で、眼圧が40mmHg以上が1週間以上続けば、慢性的に失明していると考えられ、視覚の回復は困難になります。初めは、目薬で眼圧を調節しますが、それも長く継続することは難しくなります。

そして、これらの検査で欠かせないのが、眼圧計です。その他の検査機器も使いますが、必ずなければならないのが眼圧計です。犬の場合、眼圧計がないと緑内障を診断することや、その後の治療経過を診ることは困難です。

犬の眼圧が30mmHg以上であれば、それは異常値です。その時点で、緑内障という診断が立ちます。多くは慢性的な高眼圧へ向かいます。初めは目薬で眼圧を下げるようにしますが、それも長期間は困難です。では、どれくらいの期間、安全な眼圧を目薬で保つことができるかと言いますと、個々に違うのは当然ですが、ほとんどの場合は、治療開始からおおよそ半年、つまり、緑内障と診断されてから6か月もすれば、目薬で眼圧を安全な状態に保つことが難しくなります。

多くの場合、緑内障の犬の眼圧が、6か月を超えて、あるいは、年の単位で目薬だけで安定することは極めて困難なのです。

では、どうなっているのでしょうか。恐らくは、目薬を差した時にだけ一時的に眼圧が下がり、その他の時間は、高眼圧になっている可能性があります。

では、どうするべきでしょうか。緑内障は、痛みを伴う病気で、眼圧が高い時には目に痛みがあるはずです。その痛みを目薬で取り除くことができないわけですがから、最終形として、眼球摘出であるとか、シリコンインプラントを入れて、犬の目の痛みを取り除くことがあります。

しかし、眼球摘出やシリコンインプラントを選択するご家族は少ないかも知れません。なぜか?それは、犬は目が痛くても痛みをわかるように表現しないことが多いために、痛くはないようみ見えたり、痛くはないと信じたいというのが理由の一つと、もう一つは、犬の目を失うことが心理的に困難なので、選択できないというのが理由の二つ目です。

そこで、中には、安定しない眼圧にも関わらずに、漫然と目薬を続けたり、あるいは、途中でドロップアウトしたりします。

緑内障とは、どのような病気でしょうか。もしあなたに医学的、獣医学的な知識が少ないとすれば、白内障は目が白くなる病気だから、緑内障は目が緑色になる病気かな?という印象をお持ちかも知れません。

緑内障とは、視神経に障害が起こり、視野が従来よりも狭くなる病気です。犬の場合には、眼圧が高くなることが特徴とされていますが、ヒトに場合には、眼圧だけで評価することはないようです。

緑内障と診断された場合、これは治るか、治らないかで言いますと、基本的には治りません。しかし、急性緑内障で、すぐに治療を開始できれば、回復する可能性があります。それは、緑内障になって2日間未満に気づけた場合の回復の可能性ですが、犬の緑内障の初期症状を、ご家族が気づくことは簡単ではありません。

現在も犬の緑内障の診断は、眼圧に頼るところがほとんです。犬の眼圧の基準値とされるのが、15から25mmHgで、これが30mmHg以上で緑内障と診断されます。そして、急性緑内障では、45mmHg以上になっていることがあり、この段階では失明しています。眼圧が下がれば、視覚の回復が見込めますが、2週間を超えて、緑内障治療のための点眼薬を続ける必要があれば、恐らくは治ることのない緑内障と考えて良いでしょう。

目の表面にある組織が角膜です。そして、瞳孔の少しだけ奥に水晶体があります。その角膜と瞳孔(虹彩)の間が前眼房です。犬の緑内障では、その前眼房に異常が起こります。前眼房にある液体成分である眼房水は、作られて排出されます。眼圧を調節するのは、その作られる量を減らすか、排出を促して増やすかの2つです。

そして、この2つの作用をする目薬がいくつかあります。眼房水の産生を抑制する目薬と、排泄を促進する目薬です。多くの動物病院でも、これらの目薬を使って犬の緑内障の初期管理を行うはずです。

この目薬を使った治療以外には、手術を行う方法があります。