消化管間質腫瘍のことをGISTと呼びます。消化管、特に小腸、盲腸にみられる腫瘍です。他には、胃や大腸にみられることがあります。そして、この腫瘍は、消化管間質ということろにできます。消化管間質は、例えるならば、ハンバーガーのピクルスのようなものです。ピクルスのように、層の中に隠れています。周りからはよく見えません。いくらぐるぐると回してみても、見ることができないのです。
そして、消化管間質腫瘍(GIST)がある犬が、どのような症状を見せるかと言いますと、嘔吐、下痢、食欲不振です。そして無症状のことが多く、それが故に大きくなることがあります。発見されたときは半数以上が5cmを超えています。したがって、消化管穿孔と言いまして、腸に穴が開くことがあります。そうなりますと、急性症状がみられ、犬の状態が一気に悪くなていきます。
症状がなく、見えないところにできるので大きくなることが多いので、偶発的に見つかることが多い腫瘍です。偶発的とは、健康診断のときの腹部の触診や、腹部超音波検査(エコー検査)を行なっているところで見つかることがあります。また、5cm以上になることが大半ですので、犬のご家族の方が気づかれることもあります。
診断には、病理組織学的検査が必要ですが、内視鏡では組織を取ることができないことがあるので、開腹手術を行なって、切除する必要があります。この消化管間質腫瘍(GIST)が診断できるようになったのは、1980年以降ですので、比較的新しく診断や治療が始まっている腫瘍です。
治療は外科的切除が第一選択です。つまりは、手術をして取り除くということです。すでに摘出が不可能だとわかっていたり、転移があったり、不完全切除やその他再発が見られる場合には、内科療法、すなわち分子標的治療薬が選択されます。
一般的には、外科手術で取り除くことで、十分に長生きができます。しかし、手術不能だった場合には、分子標的治療薬であるイマチニブメシル酸塩、トラセニブリン酸塩が使われますが、イマチニブメシル塩酸塩は、国内ではまだ販売されていません。
最後に、ちょっと細かい話ですが、消化管間質腫瘍(GIST)は、どの細胞から起こる腫瘍かと言いますと、カハール介在細胞と呼ばれる細胞から起こります。カハール介在細胞とは、腸が周期的に動くときに、ペースメーカーのように動きの開始を行う電気を発生する細胞で、消化管に広く存在しています。
動物病院の定期健康診断では、腹部超音波検査も行うことが推奨されます。