【猫の扁平上皮癌】口の中にできる悪性腫瘍。獣医師が解説します。

猫の口の中にできる悪性腫瘍、扁平上皮癌

とっても怖い病気です。猫の場合、中央生存期間は3か月ほどです。これは、口の中に扁平上皮癌ができてしまった猫の生存期間の中央値が3か月ということです。多くの猫が発症から1年を超えて生存することはできません。1年生存率は25%以下です。

猫の口の中にできる悪性腫瘍でも最も多いのが扁平上皮癌です。猫の口の中にできる悪性腫瘍の約75%と言われていますので、猫の口の中に悪性腫瘍ができたら、それはほぼ扁平上皮癌の可能性が高くなります。

病気の初期は気づかれないことがある

そして、猫の口の中にできる扁平上皮癌は、初めは発見されないことも多いものです。小さくて見つけ辛いという訳ではなく、デキモノという見え方をしないことがあるからです。まるで口内炎や歯周病のように見えることがあるために、初めはこれら炎症性の変化として治療が始められることがあります。しかし治らない。そして、炎症性の変化では起こりにくい悪化が始まることになります。

どのような症状が見られるの?

このできものが多くみられるのは、歯肉と舌です。猫の始めの症状は、食べづらそうにすることや、ヨダレ、食べこぼし、口臭、口や舌からの出血、歯の動揺などです。そのまま顎が腫れたり、口が開けられなくなることもありますし、頬に穴が開いて口の中の匂いが頬に開いた穴からしてくることもあります。私がみる猫の口の中の扁平上皮癌では、出血、ヨダレ、口臭が特に多いですね。

猫には口の中の炎症も多く起こるために、初めは歯周病や口内炎として治療が始まることがよくあります。そして、治らないということで、次の動物病院に転院したりする中で、扁平上皮癌と診断されることも同様に多いことです。私も猫の口の中の扁平上皮癌をみるのは、結構他の動物病院からの転院ということを多く経験しています。

治療方法は?

そしてこの病気は残念ながらほとんど治りません。

かなり大掛かりな手術をしても、完治するほど取り切れることは稀で、放射線治療でも反応が良くなく、進行速度も速いものです。

残念ながら、この病気になった場合には、できることはあまりありません。

猫の体調を考えて、栄養の補助のために点滴をしたり、強制給餌が可能ならば、流動食やペースト状の食事をシリンジで口に入れたりしましす。猫は食べたいことが多く、食事を欲しがりますが、思うように食べることができません。

突然に多めの出血が見られることもあり、飼い主さんもかなり動揺されることが多くなります。

私も手術をして積極的に治療にのぞんだことがありますが、最近はあまり手術は勧めません。結果、手術をした場合としない場合で生存期間には大きな違いがなく、しない方が生活の質がある程度確保されるという印象です。

最後の日まで、真剣に向き合う

獣医師として、最終的に猫を救うことができませんが、できる補助治療だけはしっかりと行うようにしています。食べることができない場合の点滴や、強制給餌、そして急な出血に備えて飼い主さんとの連絡をいつでも取れるようにしたりしています。

組織検査で診断を立てた時から、最後の日を想定しながらの治療になります。予後をはっきりと使えることで、飼い主さんの気持ちが変わる印象があります。もちろん良い方向にです。一緒に最後まで付き合ってもらえることが多いですね。