【犬がタバコを食べてしまった。】急性のニコチン中毒を獣医師が解説します。

結論から書きます。

犬が間違ってタバコを食べてしまった場合には、早期に発見できた場合で、何も症状がなければ、動物病院で吐かせる処置をします。もし犬がすでにニコチン中毒の症状の一つである嘔吐の症状があるならば、さらに吐かせる処置は必要ないでしょう。

もし、すでに誤食から時間が経っていて、いつもと違う様子であれば、動物病院で治療をしなければなりません。もし、犬の体重にもよりますが、大量に食べてしまった場合で、状態が数時間以内に安定しなければ、命の危険を伴うことがあります。

先日私が診察した小型犬は、タバコを食べて、ある程度早期に夜間の救急病院で処置を受けたようでしたが、朝になっても様子がおかしいと来院されました。

症状は、なかなか止まらないヨダレ、運動失調、抑うつが見られ、心電図では、不整脈がありました。いつもはとても元気とのことですので、かなりはっきりとわかる症状が見られていました。

ニコチン中毒になった犬に見られる一般的な症状は、次のとおりです。

過剰な興奮、発作、ヨダレ、過敏な反応、運動失調、散瞳(瞳孔が開く)、過呼吸、脈が速くなる、高血圧、反射性徐脈(脈が遅くなる)、抑うつ、嘔吐、下痢、振える、などです。

これらの中で、いくつかの症状が見られることがあります。

心電図では、頻脈性不整脈が見られることがあります。

ニコチン中毒が起こるものには、タバコ、葉巻、タバコの吸い殻、ニコチンパッチ、ニコチンガム、電子タバコ、などです。

治療

見られる症状に応じた、支持療法を行うことになります。

そもそも、ニコチンで何が起こる?

ニコチンは、自律神経や、脳、脊髄、副腎などに影響を及ぼします。体には、ニコチン受容体というものがあって、ニコチンが作用するポイントが存在します。

ニコチン受容体には、筋肉型、末梢神経型、中枢神経型があります。筋肉型は、神経筋接合部にあり、末梢神経型は副腎に、そして、中枢神経型はシナプスにあります。最後の、シナプスというのは、神経細胞を伝わる信号を次の神経細胞や筋線維に渡すための節のようなものです。

これらに作用して、心臓では心拍数が低下します。そして、血管の平滑筋という筋肉に働くことで、血管が収縮して血圧が上がります。また、消化管に働くことで、消化管が動き出します。私は喫煙をしませんので、よくわかりませんが、タバコを吸うことで消化管の運動が促されると、トイレに行きたくなるかも知れません。

そして、筋肉の収縮が起こるとけいれんが見られることがあります。

これらを止める働きがあるのが、アトロピンという物質で、お薬としては硫酸アトロピンとして使われます。

動物病院では、この薬を使うこともあれば、活性炭飲ませたり、ときには内視鏡で取り除いたりすることがあります。

このような食べてはいけない物は、犬が普段は興味を示してはいなくても、突然に好奇心を持って食べることがあります。うちの犬は大丈夫、などと思っていると危ないことになるかも知れません。多くの誤食がこのパターンです。ご注意くださいね。