【犬のアナフィラキシーショック】ワクチン再考の場面。獣医師が解説します。

まず、アナフィラキシーとは、アレルギーの一つで、アレルギーの原因物質(アレルゲン)と接触してから、反応が起こるまでの時間が非常に短い、即時型過敏症反応とか即時型アレルギー、または、I型アレルギーなどと言われるものです。

そして、ここで言うショックとは、急激に血圧が下り、血液の前進への循環が悪くなる、末梢循環障害のことを言います。

このようなことが起こる原因には、ワクチンがあります。ワクチン以外には、抗菌薬、昆虫に刺されたとか、何かしらの食べ物、検査のための造影剤や麻酔薬などです。

ワクチン接種後に起こるアナフィラキシーは、そのほとんどが30分以内で、ときに1時間以内ですが、アナフィラキシーショックとまでなりますと、ほとんどが5分以内です。

ただ、即時型アレルギーとは、2時間以内に起こることが多いものです。

どのようになるかと言いますと、犬の症状としては、急にぐったりします。末梢循環障害が起こっています。急激な血圧低下があると言うことです。

アナフィラキシーショックの場合、代表的なものとして血管拡張が起こります。血管が広がってしまいます。

ここで、例えてみますと、細いストローをくわえて、思いっきり息を吐きます。このときと、今度はタピオカドリンクにでも使うような太いストローで同じことをした場合、当然ながら、細い方が口の力が伝わりやすく、勢いよく息を遠くまで届けることができます。

つまりは、心臓という血液を全身に循環出せるポンプの力が伝わりやすいのは、血管が細いときで、その血管が太くなりますと、心臓の力が伝わり難くなり、結果として、血液の循環が悪くなります。

これが、末梢循環障害です。

そこで、治療としては、抹消血管を収縮させる薬を使います。これは、強い血管収縮作用があります。この薬を使いますと、血管が収縮するので、循環が回復します。

それでも、循環不全が続く場合があり、最悪の場合には死に至ります。

ヒトでのアナフィラキシーは、0歳で最も多いという報告があります。私がみた犬のワクチン後のアナフィラキシーショックの犬は、0歳でした。

ワクチンを接種後、5分ほどしたところで、キャーンとないてから突然元気がなくなってしまいました。

すぐに口を開けて舌の色をみますと、まるで死んでいる犬のような色をしていました。それでも、まだ0歳の子犬は尻尾をそよそよと振ってくれます。さっきまで元気だった姿はなく、眼結膜の色も真っ白です。

すぐに抹消血管を収縮させる薬の濃度を調整してから、子犬の体重に合わせた量を注射しました。さらに後数種類の薬を注射しました。

子犬は程なくして、元気を取り戻し、いつものようにキャンキャンと大きな声で鳴き始めました。少しだけおやつをあげてみると、勢いよく飛んできて食べたり、その後食事もいつものように食べてくれました。

あまり遭遇するものではありませんが、この子犬はその後ワクチン接種はオススメできません。今後は、ワクチン抗体価検査などで抗体の有無を調べることになるでしょう。

ヒトの場合、0歳で見られるアレルギーの原因で最も多いものは卵です。だからといって、アレルギーが起こったことがない人は卵を平気で食べるのと同じで、ワクチンに対してアレルギーのない犬が、アレルギーを避けるという目的でワクチン接種をしないのは、まるで卵アレルギーではないのに、卵でアレルギーの人が多いからという理由で卵を避けるようなものです。

それでも、不必要なワクチン接種は必要がないわけですので、適切なワクチンの種類の選択と、(簡易検査ではない)ワクチン抗体価検査を行いながらのワクチンプログラムを獣医師と相談することをオススメします。