犬の椎間板ヘルニアを症状の程度から分類します。症状の軽いものから重いものへ番号がついています。獣医師は、この番号で椎間板ヘルニアを分類しています。
まずは、椎間板とは何か?
ヒトも犬も、背骨は1列に並んでいます。例えるなら、だるま落としの胴体のようです。それぞれが分かれているので、動かせる範囲が広くなります。しかし、だるま落としの胴体ですと、骨と骨が当たっているところでは、堅いもの同士が擦れますので、傷んでいきます。
そこで、衝撃を和らげるものとして、椎間板があります。これは、例えるなら、だるま落としの胴体の1個1個の間に、衝撃を和らげるゴムシートを置いたとして、このゴムシートが椎間板です。
1個1個の背骨の間にあります。(例外的に、首の骨の1番目と2番目の間にはありません)
この椎間板が正しい場所にあるときには、問題は起こりませんが、両側の背骨に強い力がかかると、衝撃吸収のための椎間板が壊れてしまうことがあります。
椎間板がつぶれて壊れてしまうと、元の場所からはみ出してしまいます。このはみ出した部分が、背中にある大切な神経(脊髄)に触れることで、いろいろな症状が現れます。壊れた椎間板は、神経(脊髄)に触れるだけではなく、神経(脊髄)を圧迫することがあります。
このようなことが起こると、犬は痛みを訴えたり、さらに進行した状態では足が麻痺して歩くことができなくなることもあります。
その、痛みから麻痺に至るまでの、重症度を分類します。
よく使われる分類
分類方法はいくつかありますが、よく使われる分類をご紹介します。
- グレード 1 初めての背部痛、神経学的異常はない。
- グレード 2 疼痛の再発、歩行可能な不全麻痺
- グレード 3 歩行不可能な不全麻痺
- グレード 4 対麻痺、深部痛覚あり
- グレード 5 対麻痺、深部痛覚なし
グレード 1
背部痛とは、背中の痛みのことですが、判断が難しいことがよくあります。背中が痛い、背中が痛いとわかりやすく表現してくれるといいのですが、なかなかそうはいきません。
私がみる椎間板ヘルニアのグループ 1の犬は、背部痛があるために、極端に動きが悪くなります。例えば、いつも飛び乗っていたソファーに飛び乗らないとか、飼い主さんが帰宅されても、出迎えに来ないとか、抱っこしようとするとギャンとなくとか、このような症状を見せることが多いですね。
また逆に、じっとしていることができずに、ウロウロと歩き回ってなかなか座ったり寝たりしない犬もいます。後ろ足が震える犬も多く、飼い主さんは、震える犬を見て、寒いのかな?と思う方もあります。
診察で背中を触診しますと、やはり痛い反応が見られます。
神経学的異常とは、麻痺の程度を調べる検査で異常が見られるということです。この犬の椎間板ヘルニアのグループ1では、神経学的異常は見られません。
グレード 2
グループ2からは、麻痺が見られます。疼痛とは、強い痛みのことです。特に飼い主さんに触られたときに、ギャンギャンと鳴くことがあります。すると、飼い主さんの中には、その触ったところが痛いのだろうと思われることも多く、例えば、服を着せようと前足を持ったときにギャンギャンと犬が鳴けば、前足を痛がっていると言って来院されることがあります。
その痛そうに見えた前足でも、歩くときにあげたり引きずったりもせずに、普通に歩くことが多いので、飼い主さんもあれほど強い痛みがありそうだったのにと困惑されることもあります。
そして、不全麻痺とは、千鳥足のように、ふらふらとはするけれどもまだ歩けるし、足に感覚がある状態です。
グレード 3
足に感覚があっても歩くことができないことがあります。これが犬の椎間板ヘルニアのグループ3です。
グレード 4
ここからは、対麻痺と言って、足に感覚がない麻痺です。全く力がはいりません。座ったままだったり、だらんと後ろに投げ出されたりして、犬は自らの意思で足を動かすことができません。
ここでさらに分類を分けるのが、深部痛覚とよばれるものです。これを調べるためには、後ろ足の先端をつねってみます。痛いはずですので、つねられた方の足を振り向いて反応があれば深部痛覚ありと判断します。
犬がつねられた方の足を蹴るように動かすことがありますが、顔でその足を見るような反応をしない場合には、この蹴る仕草は別の反応として、深部痛覚ではないと判断されます。
グレード 5
深部痛覚を判断できるのは獣医師だと思います。対麻痺が起こったこと、すなわち、完全に感覚を失ったように見えることは飼い主さんにも判断してもらうことはある程度可能だと思います。
この深部痛覚が見られなくなってからの時間によって手術をした場合の成功率でが変わるとされています。深部痛覚があるうちの方が手術の成功率は高いですし、消失してからの時間によっても変わる言われます。
ただし、これについては、また違う意見もありますから、術後成績とは切り離して症状を分類することが良さそうです。
次の記事では、グループ分ごとの治療法や手術をした場合の成績を紹介します。
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