【犬のホルネル症候群】目と神経の病気。獣医師が解説します。

ホルネル症候群?

犬の目の病気です。写真のように、第三眼瞼と呼ばれるものが見えるようになります。本来は引っ込んでいて、見えるところにはありません。

犬のホルネル症候群は、眼瞼下垂(まぶたが下がる)、眼球陥没(眼球が奥に入ります)、そして第三眼瞼の突出(写真のような膜が上がってきます)、そして瞳孔が小さくなる縮瞳を特徴とする異常です。

神経の異常で起こるもので、その異常とは、炎症感染外傷椎間板疾患線維軟骨塞栓症腕神経叢障害腫瘍中・内耳炎鼻咽頭ポリープ球後疾患などなどです。

(神経の異常とは、視床下部と言われるところから、眼球までの交感神経走行路中のいずれの部位の障害でも起こることがあります。ちょっと難しですね。)

ときに、この椎間板疾患とは、椎間板ヘルニアで起こる進行性脊髄軟化症と呼ばれるものでも起こることがあり、この場合、ホルネル症候群が現れると生命の危険が迫っていることを意味します。

特発性三叉神経炎という病気がありますが、この炎症が三叉神経に組み込まれている節後性交感神経に波及すると、ホルネル症候群が起こることがあります。この場合、多くの犬が3週間ほどで回復します。

基本的には、特発性ホルネル症候群では、回復に時間がかかるものの、5%フェニレフリンという目薬を1日に4回ほど点眼することで4か月くらいで治ることがあります。そして、ホルネル症候群のほとんどが特発性だと言われています。

ホルネル症候群の特徴

通常は片目に起こります。私がみるホルネル症候群も片目に起こることが多いですね。軽い充血や上まぶたが下がったり、眼球陥没、第三眼瞼の突出、縮瞳が見られます。

特発性ホルネル症候群が治るとして、ときに治らないこともありますが、治る場合には4か月ほどかかります。すると、飼い主さんはなかなか待ちきれずに、結構ご心配される方があります。早くは治らないことが多く、どうしても4か月ほどはかかります。

ホルネル症候群を診断するために必要な検査

  • 一般眼科検査(前部ぶどう膜炎との鑑別、暗室での左右瞳孔の不同、対光反射)
  • 血液検査(全血球数算定、生化学検査)
  • X線検査
  • 超音波検査(眼窩、胸部)
  • CT・MRI検査
  • 脳脊髄液検査
  • 5%フェニレフリン液を使った試験

5%フェニレフリン液を使った試験

5%フェニレフリン液を両眼に点眼します。そして、20分ほど待ち、正常な目よりも早くに瞳孔が開けば節後性障害というものが考えられ、瞳孔が広がらなければ中枢性あるいは節前性障害が考えられます。

節前性障害があっても点眼後40分もすると瞳孔が開くので、この場合、点眼後40分程度で瞳孔が開けば節前障害を、60分以上で散瞳してくれば中枢性障害もしくは正常な交感神経支配眼が示唆されます。

節前線維、節後線維とは?

かなり詳細なことです。節前線維とは、交感神経節前線維のことで、節後線維とは、交換神経節後前線維のことです。私にこれをわかりやすく説明する力がなく残念です。

ホルネル症候群の治療

5%フェニレフリンを2-4回点眼します。ホルネル症候群のほとんどが特発性なので、多くはこの点眼を4か月ほど続けることで回復することがあります。