【犬の生命を脅かす急性下痢】その全てを獣医師が解説します。

犬の急性下痢

犬の下痢の多くは、自然に回復するものです。治療をしてもしなくても治るものですが、治療をすることで回復までの時間はかなり短縮できます。しかし、中には生命を脅かす下痢があります。あなたはきっと、ご自身の犬が下痢をしたとき、それが生命を脅かすものではなさそうだということがわかることで安心されると思います。

動物病院での検査が必要です

急性の下痢が、犬の生命を脅かすものなのか、自然に回復するものなのかを診断するためには、動物病院での診察が必要です。なぜなら、次の検査が必要だからです。

糞便検査(複数回必要)、糞便細胞診、全血球計算(CBC)、血液生化学検査、尿検査、腹部X線検査、腹部超音波検査(エコー)、子犬の場合にはパルボウイルス感染症の検査、腸毒素分析、またときに、肝生検、レプトスピラ症の抗体価検査、上部消化管バリウム造影によるX線検査

この全てと行う訳ではありません。この中から必要な検査が何かを判断し、実施して、検査結果を検討する必要があるために動物病院を受診する必要があるわけです。

生命を脅かす下痢の原因

重度に危険なものを食べてしまった場合、重度な寄生虫寄生、腸閉塞、パルボウイルス感染、出血性胃腸炎、全身性疾患(急性膵炎、急性肝疾患、急性腎不全(レプトスピラ症)、犬ジステンパー感染、サルモネラ、カンピロバクター、クロストリジウム

生命を脅かす可能性のある急性下痢の症状

中程度から重度の脱水、腹痛(腹部不快感)、抑うつ、粘液便や血便、獣医師が触診可能な腹部の腫瘤、獣医師が触診可能な腸の拡張、頻繁な嘔吐、全身性疾患症状(ぐったりとしている、食欲不振を含む)、糞便の粘液過剰、中等度かた重度な排便回数の増加、1回の排便量の減少(少量の便を頻繁にする)、乾いた粘膜、皮膚の緊張の低下、眼球陥没、四肢冷感、発熱、黄疸、腹水、リンパ節症、乏尿や無尿(尿量の減少)、肝臓腫大、目やに、鼻水、咳

これらの症状からいずれかがみられます。

自然回復性下痢の場合、多くは3日以内に回復しますし、長くても7日以内には回復します。しかし、それ以上に下痢が続いたり、悪化したり、みられる症状が増えて行くようであれば、生命を脅かす問題が存在しないかを評価する必要があります。

懸命な治療で回復することがある病気

重度の寄生虫寄生、無分別な摂食(異物、植物、化学物質、毒素、薬物、腐敗した食べ物、残飯、質の悪い食べ物、突然の食べ物の変化、ゴミ)

積極的な治療で回復することがある病気

パルボウイルス感染症(それまでに受けたワクチン接種回数による)、出血性胃腸炎

早期手術ができれば回復することがある病気

異物の腸閉塞、腸重積、小腸閉塞、腫瘍

一般に回復も認める病気

細菌の感染症

原因が全身性疾患による急性下痢症は、予後が不良です。

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