口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)、聞きなれない病気ですよね。歯周病から起こることがほとんどで、これは口と鼻との隔たりがなくなって、口と鼻が貫通する病気です。ちょっとわかり難いですよね。下の写真をご覧ください。
これは犬の歯の模型です。
口腔鼻腔瘻管とはどのような病気なのでしょうか?
この大きい歯が犬の犬歯で、上に鼻腔、すなわち鼻があります。犬歯の根っこの先端から、鼻の空間である鼻腔までを隔てるのは上顎骨という骨ですが、この上顎骨の厚みはたったの1-2mmしかありません。
ほとんどは歯周病です。私は歯周病以外で口腔鼻腔瘻ができてしまった犬を見たことがありません。経験不足かも知れませんが。他には、外傷、異物の貫通、咬傷、そして電気ショックによるものや口や鼻にできた腫瘍によるものも報告されています。
そのような訳で、上顎の歯に歯周病が起こって歯槽骨や上顎骨の破壊や吸収があると口と鼻を貫通する穴(瘻管:ろうかん)が開くわけで、これを口腔鼻腔瘻と言ったり、口鼻瘻管(こうびろうかん)と言ったりします。主には犬歯に起こりますが、その他第三切歯や第二前臼歯にもみられます。それ以外でも、上顎の歯であれば、どの歯であっても口腔鼻腔瘻が起こることがありますが、ほとんどは犬歯です。
ちゃんと治すには、原因となる歯を抜かなければなりません。しかもほとんどが犬歯ですので、犬なのに、大切な犬歯なのに、残念ながら抜くしか方法はないのです。もちろん、口腔鼻腔瘻であればという前提です。
ときに、下顎の犬歯の並びが良くなくて、上顎を貫通して穴があくこともあります。極めて稀なことだと思います。そして、ほとんどが犬で、猫ではほぼ起こりません。
どのような症状がみられるの?
どの犬種にも起こりますが、圧倒的に多いのは、ミニチュア・ダックスフンドです。次はトイ・プードルでしょうか。とにかくミニチュア・ダックスフンドでみられることが多いです。
そして、症状はくしゃみ、鼻水、鼻出血がみられる慢性鼻炎です。
私の場合は、ミニチュア・ダックスフンドが、よく鼻水が出るとか、くしゃみをよくすると言って来院されると、まずは口腔鼻腔瘻ではないだろうかと考えます。そして、くしゃみにしても鼻水にしても、歯周病がある口と鼻が小さな穴(瘻管)とは言え繋がっている訳ですから、少々きつい匂いがします。鼻水なのに口臭いということです。
治療は抜歯をしてから歯肉を縫合します。
しっかりと診断をして、確定診断ができたら、原因となる歯を抜歯します。歯周プローブを使ったり、歯科レントゲン検査を行ったりして診断します。歯周プローブを口側から犬歯に沿ってそっと優しく挿入すると、鼻血がみられることがよくあります。貫通している証拠です。
検査も治療も全身麻酔で行います。犬の口腔鼻腔瘻の手術についてに詳細は、下の記事をご覧ください。
犬歯の場合も、他も歯でも同様ですが、抜歯をした後に歯肉を縫合します。特に犬歯の縫合は破綻しやすいので、術後も注意が必要です。歯肉を縫って、貫通していた穴を塞ぐ訳ですが、その縫合が解けて、傷口が開いてしまうことがあります。そうなると、再度縫合し直さなければなりませんから、術後はできるだけ縫合部には触らないようにしなければなりません。エリザベスカラーが必要なこともあります。その他、術後2週間ほどは硬いおもちゃや食事を与えないようにします。
症状も治療も結構大変ですが、しっかりと治療すれば完治します。慢性的に鼻炎がみられた犬の飼い主さんは、もっと早くにやっておけばよかったと言われることもよくあります。くしゃみうや鼻水の原因が歯だとは思っていらっしゃらなかったということもありますし、獣医師から言われていて、口腔鼻腔瘻であることはわかっていても全身麻酔が心配で決断が遅くなったということもあります。
とにかく鼻の違和感がなくなり、くしゃみも鼻水もなくなってスッキリとした犬は、さぞかし快適なはずです。
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