【犬の歯石取り?】歯周病治療について獣医師が解説します。

どうぶつの歯科ケアはとても大切なことです。これを否定する人はいないのではないでしょうか。

そして、多くの犬が歯周病を抱えています。統計からみますと、ほとんど犬と言ってもいいくらいです。

どれくらいの割合で犬が歯周病にかかっているかについて、色々な報告があります。ある報告では、2歳までの犬の80%程度が歯周病にかかっているとされ、また小型犬であれば、1歳のときにすでに90%が歯肉疾患にかかっているとされます。

そして、犬の歯周病治療は、必ず全身麻酔で行う必要があります。

そして、全身麻酔に関しては、実際以上に恐怖を感じる飼い主が多いのも現状です。私も多くの犬猫の歯周病治療を行なっていますが、麻酔に恐怖を感じている飼い主は多いということを感じています。

全身麻酔はどれほど危険なのでしょうか?

犬が健康であって、特別な麻酔リスクにつながる病気でなければ、麻酔関連死と呼ばれる麻酔による事故は、10,000頭に1頭の割合という報告があります。これは一般的で妥当な数値だと思います。つまりは、10000分の1です。これは、自動車事故で死亡する確率と同等です。ちなみに、交通事故死ではなく、交通事故に関わってしまうのは、10000分の120という統計があります。

確率だけでいいますと、歯科治療の全身麻酔で、麻酔関連死が起こることを心配するのは、自動車事故死しないかを心配するのとあまり変わりません。

獣医師が一人の動物病院で、年間にどれくらいの全身麻酔を行うかご存知でしょうか。だいたい200件から300件くらいでしょう。もし仮に年間300件の全身麻酔を行うとしますと、10000件に達するのに33年かかることになります。つまりは、麻酔関連死という残念なできごとは、獣医師がその獣医師生命のある中で、1-2件は経験する計算になります。統計どおりであればという仮定はありますが。

ですから、もし1件の動物病院で麻酔関連死が3件以上あったとなると、統計的には「多い」と判断することになるでしょう。ただ、注意しなければならないのは、麻酔関連死というのは、事前にも予測不可能で、異常が起こった後にできる手段を全て講じても蘇生することができなかったこと言いますし、適切に行われた麻酔以外に原因が認められない場合の死です。そもそも、出血であるとか、心臓の病気による循環不全だとか、肺に腫瘍があってとか、手術に行った輸血でできた血栓によってとか、他の原因がある場合には、麻酔関連死とは言いません。

獣医師は安全な手術を心がけるわけですが、ときに極めてリスクの高い手術でも行わなければならないことがあります。そこで懸命の治療にも関わらずに思わぬ結果になったとしても、それを麻酔関連死とは言わないわけです。

それでも100%の安全を保証してくれないと、全身麻酔には同意しないとなれば別ですが、そうでなければぜひ歯周病治療を受けることをお勧めします。メリットは計り知れません。

もっと掘り下げますね。

なぜ、ここまで歯科治療にも関わらず、麻酔の話をするかと言いますと、多くの飼い主さんが歯科治療のときの全身麻酔を大変に不安に思うことにつけ込んで、麻酔をせずに歯石を取りますという動物病院があるからです。

不安を逆手にとって、不十分なことをして、飼い主さんに麻酔をせずに歯科治療をしてもらったという誤解を与えています。

一応、ご参考にしていただきたいのですが、無麻酔での歯石除去の危険性を訴えて、推奨していないのは、私だけではありません。

日本小動物歯科研究会、アメリカ獣医歯科学会、ヨーロッパ獣医歯科学会、アメリカ動物病院協会のいずれもが、無麻酔での歯石除去が危険な行為だと提唱していますし、無麻酔での歯石除去を推奨していません。

しつこいくらいに、無麻酔での歯石除去がムダなことで、本来やるべきではないということを書きました。飼い主さんの麻酔に対する不安につけ込んで、不適切な処置をする動物病院に行く意味はあるのでしょうか。

ここから、歯周病治療について書きますね。

私の動物病院では、今日もあったことですが、くしゃみが続く犬が来院しまして、よく調べますと口腔鼻腔瘻でした。

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そして、犬の口は本来は無臭です。口臭があるということは、歯磨きを始め、何かしらの治療が必要です。

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歯周病が進行すると、怖い病気も始まります。

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