ジステンパーとは、犬ジステンパーウイルスに感染して起こる感染症で、発熱、食欲廃絶、鼻汁、発咳、嘔吐、下痢、痙攣発作などの症状がみられます。免疫応答の強さによって、症状のみられ方が異なり、重篤な症状がみられた場合には多くが死亡します。発症した場合には回復は困難です。予防方法はワクチン接種で、根本的な治療方法はありません。
犬ジステンパーウイルスへの感染は、感染している動物と接触することで起こります。多くは、犬から犬へ感染します。また、エアロゾル、すなわち、空気中に漂う微細な粒子として感染します。人獣共通感染症ではないので、ヒトへは感染しません。
この記事では、下のように区別して記します。
・ジステンパー:病気の名前
・犬ジステンパーウイルス:ジステンパーの原因になるウイルス
ジステンパーに感染したり、症状がみられたり、どのように回復するかを決定する要素があります。それは、蔓延しているウイルス株に対応したワクチン接種ができているか、犬の免疫状態はどうかです。以下、解説します。
<犬の免疫状態>
犬の免疫応答によって、みられる症状に違いがあります。免疫応答とは、今回の場合、犬ジステンパーウイルスから体を守るために体の中で起こる反応のことです。この反応の強さによって、犬の症状に違いがみられます。
・免疫応答が不十分→重篤な症状がみられ死亡することが多い
・免疫応答が中等度→軽度の感染が起こる
・免疫応答が強い→明らかな症状はみられない
犬が回復したとしても、ウイルスは、肺、皮膚、中枢神経に残ります。また、明らかな症状が見られないとしても、中枢神経症状がみられる可能性があります。
中枢神経とは、脳と脊髄のことです。また、中枢神経症状とは、中枢神経に異常が起こった場合にみられる症状で、今回の場合は、痙攣発作や運動障害が一般的ですが、その他にも、脳炎、脳脊髄炎、などの症状がみられる場合があります。
<ウイルス株>
ジステンパーには、さまざまな株が存在します。
・国内のペットで蔓延している株
・国内の野生動物に蔓延している株
・海外の発生例で蔓延している株
これらの中で、あなたの犬が接種されたワクチン株が周囲の環境で蔓延している株に対して必要な免疫を誘導できるかが重要です。ワクチン接種をしたけれども、野外で蔓延している株に対して無効なこともあります。
予防接種は不可欠です。
急性期を乗り越えた犬ジステンパーウイルス感染症の犬は、症状が何もみられなくても、少なくとも2週間は健康な犬から隔離する必要があります。犬の中には、感染後、最長で3か月間ウイルスを排泄し続けるものがいます。
ジステンパーは、犬だけではなく、キツネ、タヌキ、フェレット、ミンク、スカンク、アライグマ、ライオン、トラ、海洋哺乳類などにも関係のある病気です。国内だと、感染した犬だけではなく、野生のキツネやタヌキにも注意が必要ですよ。
あなたの犬に、下のような症状はありませんか?特に、ワクチン未接種だったり、前に接種してから数年が経っていたりした場合には注意が必要です。
- 鼻水
- 眼脂(メヤニ)
- 下痢
- 嘔吐
- 発熱
- 食欲廃絶
- 発咳
- 痙攣発作
- 運動障害
ジステンパーの基本的な情報
罹患率と死亡率が高い病気です。回復しても、その後に症状が現れることがあります。
罹患率とは、ウイルスに接触した場合の、症状が出る割合です。ウイルスによっては接触しても、症状が出難いものがありますが、犬ジステンパーウイルスの場合は、多くが症状を示すという研究結果があります。
ジステンパーは、犬ジステンパーウイルスによって引き起こされる病気です。細かな分類では、犬ジステンパーウイルスは、パラミクソウイルス科のモルビリウイルスに属します。罹患率が高く、死亡率はワクチン接種歴や免疫応答の強さで変動します。
どのような病気?
ウイルス株の毒性
・犬ジステンパーウイルス株の中には、毒性が高く、神経細胞に向かうものがあります。
ウイルスを排泄する期間
・ウイルスの排泄は感染後7日目までに始まり、最長で90日間続く場合があります。
感染様式
・感染は主にウイスルを含むエアロゾル(空気中に漂う微細な粒子)として起こりますが、犬ジステンパーウイルスは、感染犬の尿、糞便、鼻や眼からの分泌物、皮膚からも採取できます。
感染経路
・初めの感染は、ウイルスを含むエアロゾルを吸引した犬の上部気道上皮組織で起こります。上部気道とは、鼻や喉のことです。ここにある免疫細胞であるマクロファージと呼ばれる白血球に感染し、マクロファージの中でウイルスが増えます。
そのマクロファージは、リンパ管を通って、扁桃腺と喉のリンパ節や気管支にあるリンパ節へ運ばれます。そのリンパ節内で、他の白血球にも感染が起こり、ウイルスに曝露されてから3-6日で、発熱や白血球減少症を引き起こします。
白血球の1種であるリンパ球数も減少します。このリンパ球には、T細胞やB細胞と呼ばれるものがありますが、これらT細胞とB細胞もウイルスによって損傷を受けています。
ウイルス血症
・ウイルス血症は、感染後9日目までに起こります。ウイルス血症とは、ウイルスが血液内に入り、体を循環するものです。ウイルス血症が起こるか否かは、感染した動物の免疫状態によります。
・適切な免疫がある犬は、14日目までにウイルスを排除できます。
免疫応答が強い犬では、明らかな症状が見られません。
免疫応答が中程度の犬では、ウイルスは上皮細胞に感染します。14日目までに、抗体価が上がり、ほとんどの組織からウイルスが除去されると、最終的に症状がみられなくなります。一部のウイルスは、肉球や中枢神経に留まる可能性があります。
免疫応答が低い犬では、ウイルスは感染後14日目までに、皮膚、内分泌線、外分泌線、消化管の上皮細胞、呼吸器系、そして尿路などの多くの組織に広がります。
二次感染には、2つの意味があります。ジステンパーの二次感染とは、犬ジステンパーウイルスに感染した動物の免疫の力が弱まってきて、そこに別の微生物が重ねて感染をすることです。ジステンパーでまず影響を受けるのは、呼吸器と消化器です。この呼吸器と消化器に細菌の感染が起こりやすくなります。
もう一つの二次感染とは、感染した動物から別の動物が続発的に感染を受けることです。通常は、ジステンパーの二次感染としては、この意味では使われず、前述の、他の微生物の二次的な感染という意味で使われます。
これらを区別するために、単に二次感染というのではなく、二次細菌感染症という言葉が使用されます。
ジステンパーの二次細菌感染症は一般的です。この二次細菌感染症が死亡率に影響するという研究結果はありません。
ジステンパーの二次細菌感染症を制御するために、抗菌薬が使われます。抗菌薬の中には、神経系に届くものと届かないものがあります。ジステンパーでは、髄液に届く抗菌薬が選択されます。
犬ジステンパーウイルスが、中枢神経に感染するのには、次の2とおりの経路があります。
・ウイルスが感染した白血球を介して、血液を通って中枢神経に到達する
・鼻に通じる嗅神経を介して、脳まで達する
急性の犬ジステンパーウイルス脳脊髄炎は、免疫不全の子犬で、感染の初期にみられます。仔犬がジステンパーから回復することは稀ですが、もし回復した場合には、生涯にわたって免疫を維持できる可能性があります。
胎盤からの感染では、流産や死産を引き起こす可能性があります。胎盤感染症を生き延びた仔犬は、6週齢までに神経症状を発症し、生涯にわたる免疫不全を起こすことがあります。
感染しやすい犬はいるの?
長頭種では、短頭種よりも高いい死亡率が報告されています。
予防方法
ジステンパーの予防のため特に仔犬には、ワクチン接種が必要です。
<ガイドラインに即した仔犬のワクチン接種プログラム>
・生後6週間で1回目
・その後3-4週間ごと
・生後16週間目で終わる
仔犬が生後6週間になったら、第1回目を接種します。その後は、3-4週間毎に接種しますので、下のようなプログラムもあります。一例として参考にしてください。
生後6週間目→3週間空ける→9週間目→4週間空ける→13週間目→3週間空ける→16週間目
ガイドラインでは、仔犬の時期に4回の接種が推奨されています。
このワクチン接種の目的は、犬ジステンパーウイルスの抗体価を必要なレベルにあげることです。私は、生後12週齢を過ぎ仔犬の飼い主さんに抗体価を測定することをおすすめしています。この抗体価測定で、有効な抗体価が認められれば、次のワクチン接種は1年後です。
<1歳のワクチン接種>
仔犬の時期に有効な抗体価が確認できたら、最後のワクチン接種から1年経ったときに追加のワクチン接種をします。
<2歳齢以上のワクチン接種>
犬のワクチン接種ガイドラインによりますと、1歳のときに行ったワクチン接種は、3年間は有効だとなっています。つまりは、2歳、3歳、4歳までは追加のワクチンを必要としないだろうということです。しかし、私が2歳齢以上の犬の犬ジステンパーウイルス抗体検査を行ったところでは、有効抗体価に満たないで、ワクチンを接種しなければならない犬は少なくはありません。
<3歳齢以上のワクチン接種>
ワクチンの効果をしっかりと持続させるためには、
・毎年接種する
・毎年抗体価検査を行ってから、その結果でワクチン接種をするかどうかを決める
という方法が理想的です。
ワクチン接種による合併症はまれです。
・ワクチン誘発性感染症
・若年性蜂巣炎
・肥大性骨異栄養症
これらの合併症は、通常ワクチン接種から10日以内にみられますが、最短で4日目から最長で21日目にみられることがあります。
ワイマラナーは、ワクチンの影響を最も受ける犬種です。これは、生ワクチンではなく、組替えワクチンを選択することで可能性が低くなります。組替えワクチンは、生ワクチンと同等の効果が認められています。
ワクチン接種で通常は十分な免疫が得られます。しかし、免疫不全の犬や毒性の高い犬ジステンパーウイルス株に暴露された犬は、病気を発症する可能性があります。
関連する疾患
ジステンパーに関連するものとして、次のような変化があります。
・肉球が硬くなる(足蹠の角質増殖症)
・前部ぶどう膜炎、視神経炎、網膜変性そして角結膜炎などの目の症状は、全身性症状や後遺症としてみられることがあります。
・脳炎やてんかん
・ミオクローヌス
ミオクローヌスとは、筋肉や筋肉群に起こるピクッと動くような短時間の収縮のことで、体の一部、手足、顔面、まぶたなどに無意識的に起こります。
・回復した犬に、持続性無嗅覚症という嗅覚の喪失がみられることがあります。そうなると、匂いを嗅ぎ分けることができません。
犬にみられる変化→健康な犬との違いは?
ジステンパーの犬は、無症状だったり、症状が軽度にみられるだけのことがありますが、全身性に症状が見られることが一般的です。
ジステンパーの症状は、初めに呼吸器症状として現れ、その後に消化器症状、そしてしばしば中枢神経症状が続きます。中枢神経症状は、呼吸器や消化器の症状が治ったのと同時に現れたり、治った後で現れることがあります。
中枢神経に、犬ジステンパーウイルスの感染によって起こる炎症反応が続くことによって、老犬脳炎が起こる可能性があります。その症状は、運動失調や歩行異常です。
犬ジステンパーウイルス感染症によって、慢性再発性脱髄性脳脊髄炎がみられることがあります。
獣医師が身体検査で注意してみる項目→犬の何を診ている?
飼い主の方が犬の変化について、お話をしてくださる内容は、元気がない、眼脂、鼻汁、咳、嘔吐、下痢のいずれか、または複数の症状です。より進行した場合には、神経学的な症状として発作、運動失調の他に、前述したミオクローヌスがみられることがあります。
獣医師が身体検査をする場合に、注意するのは主に下のような項目です。
<全身状態>
・発熱、眼の症状(角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎)、聴診での呼吸音の異常、脱水症、悪液質、毛並みに色つやがなく荒れている(被毛粗剛)
仔犬の時期にジステンパーになり、生き延びることができた場合には、歯のエナメル質形成不全、埋伏歯、乏歯症がみられることがあります。
エナメル質形成不全とは、歯の表面を覆う光沢のあるエナメル質がツルツルではなく、ガタガタになるものです。永久歯に起こりますので、生涯にわたって、ツルツルに戻ることはありません。
埋伏歯は、歯茎の中に埋まったままの歯で、乏歯症は、あるべきところに歯がないもので無歯症とも言われます。
<神経症状>
・脳炎や脳脊髄炎の症状がみられます。具体的なものとしては、発作、前庭障害、小脳失調、測定障害、不全麻痺があります。通常発作は、チューインガム発作という形で現れます。
小脳失調とは、小脳の機能が障害された状態で、複数の筋肉をバランスよく強調させて動くことが困難になります。その結果、ふらついて歩き難くなります。
測定障害とは、四肢の運動を目的のところで止めることができない症状です。歩いているときに、目的の物を通り越したり、歩幅がばらついたりします。
不全麻痺とは、完全な麻痺とは異なり、一部の感覚を残した状態の麻痺です。フラフラしますが、立つことも歩くこともできます。
チューインガム発作とは、口をくちゃくちゃさせるような発作のことです。
ウイルス性髄膜炎による知覚過敏が起こることはまれです。ミオクローヌス(頭、首、または1つから複数の四肢のリズミカルな痙攣)は、病気の進行と共に発症し、ジステンパーではよくみられます。
その他には、眼に視神経炎と脈絡網膜炎が観察されます。
視神経炎では、視覚の低下が起こります。眼球の中には、脈絡膜や網膜と呼ばれるところがあり、ここに炎症が起こると視覚の低下が起こったり失明してしまうこともあります。
<全身症状と神経症状>
ジステンパーでは、全身症状と神経症状が常に同時に見られるとは限りません。多くの場合、神経症状は、全身症状から回復後1-3週間で発生します。まれに、神経症状が数週間から数か月後に起こることもあります。
診断→どうしたら、この病気と判断できるの?
診断の手順は、下のように行います。
・犬にみられる症状をリスト化する
・その症状をみせる病名をリスト化する(鑑別診断リスト)
・検査を行って、鑑別診断リストにある病気を絞り込む(確定診断)
ジステンパーの診断は、除外診断が基本です。除外診断とは、同じような症状をみせる病気のリストから、検査によって他の病気を除外していく方法です。
<犬にみられる症状をリスト化する>
症状には、発熱、眼脂(メヤニ)、嘔吐、下痢、痙攣発作、運動障害など、他の病気と類似していますので、このような症状がみられたら、ジステンパーも含めて鑑別診断リストを検討する必要があります。
鑑別診断リストとは、犬にみられる症状から、考えらる疾患名をリストにしたもので、その疾患名リストから1つの疾患に絞り込む作業を行うことで確定診断を行うことになります。
初めにジステンパーを疑うべきなのは、下のような犬です。
・仔犬で、ワクチン未接種だったり、免疫が十分ではないもの
・仔犬以外で、ワクチン歴を問わず、気管気管支炎と同じような症状、または痙攣発作やミオクローヌスなどの神経症状があるもの
<検査を行って、鑑別診断リストにある病気を絞り込む(確定診断)>
ジステンパーの確定診断は、症状とウイルス学的検査で行われます。
・PCR検査
ウイルスの検出には、PCR法が用いられます。検査材料は、唾液、痰、眼脂、糞便、脳脊髄液です。脳脊髄液を採取するためには、鎮静や麻酔が必要です。多くの場合、MRI検査と併せて、中枢神経の形態学的検査と同時に脳脊髄液を採取することになります。
・血清抗体検査
他には、抗体価で評価する方法があります。これには、まず採血を行い、3週間した後に再度採血を行い、この2回の採血でそれぞれ抗体価を測定する方法です。2回の採血で得られるペア血清と呼ばれるもので検査を行います。
・CBC(全血球算定)
CBC(全血球算定)では、リンパ球減少症がみられ、まれに、犬ジステンパーウイルス封入体がリンパ球、単球、好中球、または赤血球で同定されることがあります。
血液の中には、白血球と赤血球という細胞があります。白血球には、さらに細かな分類があります。それが、リンパ球、単球、好中球などで、好中球はさらに細かな分類があります。
封入体:細胞の中に、異常な物質が集まって固まると、顕微鏡で見た時に通常は観察されない構造物として観察されることがあります。これを封入体と呼びます。細胞質にみられる細胞質封入体、細胞核にみられる細胞核封入体があり、犬ジステンパーウイルスは、細胞質封入体も、核内封入体も作ります。犬ジステンパーウイルスを普通の光学顕微鏡で見ることはできませんが、封入体は観察可能です。
・その他の血液検査と尿検査
血液検査で、血液生化学検査、尿サンプルで検尿を行います。通常、これらには、ジステンパーを決定するような異常値はみられませんが、他の病気ではないことを確かめるために必要です。
・胸部X線検査(レントゲン)
ジステンパーの犬が細菌感染症を起こすと、気管支肺炎がみられることがあります。肺炎が悪化した場合には、細胞診、培養および細菌性病原体の検査を行う目的で気道洗浄を行うことがあります。
鑑別診断→この病気に似ている疾患
ジステンパーに類似する病気には、下のようなものがあります。
・犬の感染性器官気管支炎
・犬のパルボウイルス性腸炎→犬のパルボウイルス性腸炎
・若齢犬から中年犬のジステンパー以外の中枢神経疾患
急性期の治療
治療の概要
治療には、次のようなものがあります。
・支持療法
・二次細菌感染を抑えるための抗菌薬
・発作を抑えるための抗痙攣薬
・ジステンパー疑われる場合には、隔離を行う
ジステンパーに対して、ウイルスを根絶するための薬はありません。
<支持療法>
食欲がなく、下痢や嘔吐がみられたり、流涎(ヨダレ)、鼻汁(鼻水)、眼脂(メヤニ)などの量が増えていくようであれば、脱水しているので、輸液(点滴)を行う必要があります。通常は、静脈点滴を行います。血清中のカリウムを測定し、その値に応じて点滴液のカリウム量を調整します。
嘔吐があれば、吐き気を抑える薬を、下痢に対しては、止瀉薬を使います。必要に応じて、胃腸保護剤を併せて投薬します。
<二次細菌感染を抑えるための抗菌薬>
ジステンパーでは、感染の初期から呼吸器や消化器の表面を覆っている粘膜上皮細胞が炎症が起こります。この炎症によって弱くなった上皮には、細菌感染が起こりやすくなり、これを二次細菌感染と呼びます。この二次細菌感染を抑えるために、抗菌薬を使用しています。
<発作を抑えるための抗痙攣薬>
急性発作を抑えるために、注射や坐薬で、抗痙攣薬を投与します。
慢性期の治療
慢性期の治療の目的は、発作を抑えることです。抗痙攣療法を行います。
グルココルチコイドの使用には、議論があります。視神経炎には、有効だと考えられていますが、呼吸器、眼球、消化器に症状があり、二次細菌感染が認められる場合、脳脊髄液で炎症が認められない場合、などでは、使用すべきではありません。
起こりうる合併症
ジステンパーの全身性症状から回復した場合、数週間から数か月後に神経学的な症状がみられることがあります。関節リウマチと犬ジステンパーウイルスとの間に、関連がある可能性が示唆されています。
予後
中枢神経症状がみられると、厳しい予後になる可能性が高くなります。
<ワクチン接種などで十分な免疫がある場合>
ジステンパーの症状がみられることがなく、感染から14日間でウイルスは排除され、遅発性中枢神経症状の発生率は低くなります。
<十分な免疫がない場合>
軽度から重度の全身性の症状がみられ、頻繁に中枢神経症状を発症します。
看護のポイント
<消毒薬の選択>
犬ジステンパーウイルスの消毒には、70%エタノールが使えます。この他に、次亜塩素酸ナトリウムも有効です。感染した犬が使用した器具や食器の消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使用することができますが、エアロゾルと呼ばれる空気中に浮遊するウイルスに対して噴霧するのは70%エタノールが良いでしょう。
環境中では、犬ジステンパーウイルスは、紫外線、熱、そして乾燥に対して非常に弱いので、消毒に加えて、これらを活用した対策も有効です。
<感染犬の隔離>
ジステンパーの犬を入院管理下で治療をする場合には、他の入院動物から隔離して、他の犬への伝染を防ぐために、ジステンパーの犬を治療するときにはガウンや手袋を装着する必要があります。
<食器や器具の消毒>
物を介した感染にも注意が必要です。治療や検査に使用する物は、ジステンパーの犬に使用した後には完全に消毒しなければなりません。
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