【犬のお腹が膨む、大きくなる原因と治療】獣医師が解説します。

犬のお腹が膨らむ場合には、その状態は、命に関わるような緊急事態から、食べ過ぎのようなシンプルなものまであります。

あなたの犬の健康を維持するためには、犬の胃に問題が起こるときのサイン(兆候)やそうなった場合にあなたにできることを知っていることが大切です。

犬の腹部膨満、その一般的な原因と治療

犬の腹部膨満は危険な事態になり得るので、専門的な知識がない場合には、決してあなた自身が診断をしないでください。もし、あなたの犬のお腹が大きくなっている場合、あるいは、いつもと違って見える場合には、すぐに犬を動物病院や救急対応の動物病院に連れて行ってください。タイミングを誤ると危険なことになることがあります。

犬のお腹が大きくなる原因には、次のようなものが含まれます。

胃拡張、胃捻転

犬の胃拡張、胃捻転は、数時間で致命的な事態に陥る可能性があるものです。腹部膨満は、胃の中で発生したガスや、胃の中に残っている食べ物が胃を大きく膨らますことで起こります。胃捻転は、ガスや食べ物で膨らんだ胃が回転することで、ガスが胃の中に閉じ込められるだけではなく、さらにガスの体積が大きくなることで、胃が大きく膨らみ、その結果として、胃の表面にある血管による血液供給が遮断されます。

犬の胃捻転は、強烈な痛みを伴います。食事とともに空気を飲み込むことは、胃拡張、胃捻転の一つの原因になり得ますが、原因はこれだけではありません。食後の激しい運動も、犬の胃拡張、胃捻転の原因になり得ます。しかしながら、犬の胃拡張、胃捻転の明確な原因は、未だ議論されているところです。犬に胃拡張、胃捻転を起こす可能性があると言われているものには、次のようなものが提唱されています。

深い胸:グレートデン、セントバーナード、ワイマラナーなどの品種は、胃拡張のリスクが大きくなります。実際に、体重が50kgを超える犬では、胃拡張リスクが20%ほどあるとされています。小型犬が胃拡張、胃捻転になる可能性は、稀なことです。

食事回数が、1日に1回の犬も胃拡張、胃捻転リスクが高まります。これは、1回の食事量が多いために、胃にかかる負荷が大きくなるためと考えられています。

食器が高めの位置にある場合も、リスクが高くなります。食事や飲水とともに、空気も飲み込むからです。

速すぎる食事も危険です。ゆっくりと食事をすることがリスクを減らします。

7歳から12歳の犬が最も危険です。

胃拡張、胃捻転には、緊急治療が必要であり、胃にかかっている圧力を下げたり、急性循環不全を治療したり、心臓の安定化が重要です。犬のお腹が膨らんできて、犬が苦しそうにしている場合には、様子を見てはいけません。すぐに動物病院に急ぎましょう。

胃拡張、胃捻転には、非常に多くの要因が関わるために、予防することは極めて困難です。しかしリスクを減らすためのいくつかの方法が考えられています。

犬に1日2回以上の食事を与えること。これは、1日に1回だけ食事をする犬に比べて、1回の食事量が少なくなることを意味します。

缶詰のドッグフードも与えること。ドライフードだけではなく、缶詰も同時に、あるいは、缶詰を与えることで、胃の中でのドライフードの膨張を少なくすることができます。

犬が食事を取ったら、十分に休ませることが必要です。満腹時に、激しい運動は良くありません。

腹膜炎

犬の腹部膨満の別の原因として、この腹膜炎という深刻な感染症があります。この原因は、通常、胃や腸に穿孔や破裂が起こることですが、その穿孔や破裂の元となるのは、骨の欠片や潰瘍そして腫瘍です。その他の原因によっても起こります。腹膜炎は、胆嚢または膀胱が破裂した場合にも発生する可能性があります。

腹膜炎の犬は、非常に痛みを伴い、気弱になっていて、あまり動こうとしません。腹部が腫れている、嘔吐している場合があります。 急性の循環不全、すなわちショックが発生する可能性があるため、緊急治療が重要です。

腹膜炎の治療には、静脈内輸液、抗生物質、疼痛緩和が含まれる場合があります。 穿刺の修復、感染した体液の除去、腹部の洗浄のためには手術が必要です。

クッシング症候群

太鼓腹の犬は、副腎皮質機能亢進症、またはクッシング症候群の可能性があります。これは、コルチゾールの過剰産生によって引き起こされる症状です。 6歳以上の犬ではより一般的で、クッシング症候群の他の徴候には、より多くの飲食、排尿、脱毛、喘ぎの増加が含まれます。この喘ぎの増加は、パンティングと呼ばれ、ハアハアという呼吸を続けるものです。

クッシング症候群は、通常、脳にある下垂体というものがホルモンを過剰に産生することによって引き起こされます。あまり一般的ではありませんが、副腎に見られる腫瘍によっても起こります。クッシング症候群の両方の形態を治療する新しい薬があります。しかし、副腎型のクッシング症候群に関連する腫瘍を取り除くために手術を行うことができます。

腹水

腹水は腹部に体液がたまることで、しばしば腹部膨満が見られます。腹水は、様々な原因によって引き起こされます。その中には、心不全、肝疾患、腎臓の問題、または重度の腸疾患があります。腹水の治療は、腹水を引き起こす状態によって異なります。

犬の腹部膨満の他の原因

犬の腹部膨満は、犬が一度に食べすぎたり、外傷や腫瘍の破裂による腹腔内出血、腸閉塞、腫瘍などが原因で起こることもあります。子犬の重度の回虫寄生も腹部膨満を引き起こす可能性があります。

あなたの犬のお腹の問題を防ぐためのヒント

胃の問題を防ぐために、獣医があなたのペットの心臓、肺、胃、腸、および他の臓器の健康状態を把握できるように、定期的な健康診断のために必ず犬を連れて行ってください。

犬の腹部の簡単な検査であっても、胃のトラブルの兆候のいくつかを認識するのにも役立ちます。犬の腹部を調べるために、優しく触る、熱を測定する、べたつき、しこり、そしてもちろん膨らみ具合、どれくらいに膨満しているかを診察します。問題に気づいたらすぐに犬を獣医に連れて行ってくださいね。