【猫がくしゃみをした。】獣医師が解説します。

猫はよくくしゃみをします。もちろん、病気です。あまり気にしなくても良いくしゃみが実はほとんどですが、注意しなければならないくしゃみもあります。

動物病院では、くしゃみをする猫を診察しない日はないと言ってもいいくらいに、日常診療では最も多い来院理由の一つが、猫のくしゃみです。そして、猫のくしゃみの原因で最も多いのがウイルス感染症です

そもそも、くしゃみとは、鼻から刺激物を排出しようとする動作です。これは、自発的には起こりません。つまりは、鳴き声を出すようには、自発的には起こりません。何かの原因によって受動的に引き起こされる症状です。

そして、猫のくしゃみには、自然に治ってしまうものから、進行すると命に関わる致死的なものまで、幅広くあります。

では、どのような原因で猫はくしゃみをするのでしょうか

異物/刺激物外傷感染症炎症腫瘍

異物/刺激物

国内では屋外に出る猫は少なくなっています。特に都市部では、猫を外に出さないようにと言われます。ちょっと脇道に逸れますが、アメリカでは50%ほどの猫が室内飼いです。また、英国ではほとんどの猫が屋外に出ることがあり、オーストラリアで、主に室内飼いだとされているのは、おおよそ20%だと言われています。

そのような中で、異物とは、草の葉やノギのような鼻から吸引した物も含まれますが、これらは特に屋外に出る猫に多く見られます。

刺激物が鼻の中にあるので、自然に出てくることがほとんどですが、もし異物が猫の鼻から出てこなくて、くしゃみが止まらない場合には、動物病院で猫に鎮静をかけて口の中や鼻を検査しなければなりません。そして、鼻腔を洗浄しなければなりません。

外傷

くしゃみを症状とする外傷で、最も多いのが交通事故です。交通事故による顔面骨折です。交通事故で顔面骨折があり、くしゃみの原因になるというわけですので、鼻を傷めている訳です。鼻甲介の損傷や骨折によって鼻腔内に出血が起こることで、それがくしゃみの原因になります。

鼻血の原因は、交通事故だけではなく、くしゃみを続けることによって出血することもあります。

診断はX線検査と触診ですが、どこをどのように損傷しているのかを詳細に把握するには、CT検査も有用ですが、必ずしも必要というわけではありません。

交通事故や怪我で顔面骨折があるならば、治療の基本は整復手術です。しかし、機能的な問題がなく、出血や鼻水、くしゃみなどの症状が治るようであれば、手術は必ずしも必要ではありません。

感染症

猫のくしゃみで最も多い原因は感染症で、動物病院では、ヘルペスウイルスやカリシウイルスといった猫から猫への伝染病によるくしゃみが一般的に見られます。細菌感染がくしゃみの直接的な原因になることはまれですが、ウイルス感染症で弱った粘膜で、細菌が増えることがあります。ウイルス感染症で病原体そのものを検出することは困難なために、基本的には猫にみられる症状で診断をすることが多く、もしウイルス感染症を立証すべきであれば、PCRという遺伝子検査を行うことになります。

クリプトコッカス(Cryptococcus)とう真菌によってもくしゃみが見られることがありますが、これは鼻水や鼻の穴に綿棒を入れて取った材料で細胞診を行うことで診断ができます。

炎症

猫の慢性的な鼻炎は、鼻甲介の破壊を起こします。そして、破壊された鼻甲介に粘液や壊死組織が蓄積することで、くしゃみの回数が増えたり、くしゃみをしている時間が長くなったりします。

くしゃみの原因になるのは、いろいろな疾患で、これらを基礎疾患といいますが、どのような炎症が原因でもくしゃみと鼻水を引き越します。

腫瘍

鼻の中の腫瘍がくしゃみの原因になることがあります。これは、鼻の周りにできた腫瘍が、その経過の中で鼻にも進行をした場合でも、猫はくしゃみをすることがあります。腫瘍の診断をする場合には、病理組織学的検査が必要で、注射針を使った針生検と呼ばれる検査では、十分な診断ができないことがあります。

年齢別の傾向

くしゃみの原因を年齢別に見てみますと、子猫と中高齢の猫ではやや違いが見られます。子猫や若い猫は、新しい家族に迎えられる前に、上部気道感染症に罹りやすく、これがくしゃみの原因になります。上部気道感染症の原因で最も多いのがウイルス感染症です。この場合のウイルスとは、猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスです。こんウイルスは、猫同士で感染しやすいだけではなく、感染をした猫に関わるヒトを介しても感染することがあります。

屋外で過ごすことのある猫には、外傷や鼻の中への異物の混入があります。

中高齢の猫では、腫瘍によるくしゃみが見れれます。しかしながら、中高齢の猫であっても、ウイルス感染症によるくしゃみが最も多く、子猫や若い猫では少ない腫瘍が、中高齢では見られやすいというものです。また、子猫や若齢から鼻炎を繰り返していた猫では、慢性鼻炎に発展していることもあり、中高齢ということで、腫瘍によるくしゃみが最も多いというわけではありません。

慢性鼻炎の完治は困難で、再発を繰り返したり、治ることなく障害に渡って症状を見せる猫もいます。

くしゃみは、上部気道疾患によるものですが、この症状を見せる猫の中には、下部気道疾患を患っているものがあり、この場合には、くしゃみだけではなく咳をすることがあります。

猫がくしゃみをしていたら、慢性化する前に治療を始めることが大切ですが、早期に治療を開始しても、避けることができずに慢性鼻炎に進行することもあります。