股関節を作るのは、骨盤の骨(寛骨臼)と太ももの骨(大腿骨頭)です。この太ももの骨(大腿骨頭)の病気です。特に1歳未満の小型の犬に多く見られます。
痛い病気です。ほとんど犬は、痛みで足をうまく使うことができません。軽い症状ですと、ときどきケンケンすることもあります。また、レッグ・カルベ・ペルテス病は小型犬に多く見られますが、特に体重の軽い子犬の場合には、股関節にかかる力も小さめですので、痛みが少なめで、症状が分かりづらいことがあります。大腿骨頭が壊死する病気で、壊死が進むにつれて、大腿骨頭および骨頸の壊死が、変形、疼痛、続発性変形性関節症に至ります。治療は、外科手術と理学リハビリテーションで、これによって健常な動きができるようになります。
犬のレッグ・カルベ・ペルテス病は自然に治ることはありません。が、かなり早期に発見できると、あまり症状がないうちに予防策を講じることができる可能性があるので、内科的に治療をすることができます。しかし、このようなことは、かなり珍しいことで、犬のレッグ・カルベ・ペルテス病のほとんどは、外科手術が必要です。
その外科手術のほぼ全てで、大腿骨頭・骨頸切除術と呼ばれる方法が選択されますが、股関節全置換術も選択することができます。この股関節全置換術というのは、いわゆる人工股関節です。
そして、手術の後には、術後の痛み止めと理学リハビリテーションがとても重要です。
レッグ・カルベ・ペルテス病という病気の名前は、3名の人物の名前からきたものです。
この疾患は、犬のご家族が気づく頃にはかなり進行しているものです。レッグ・カルベ・ペルテス病が起こっている方の足を上げて歩くようになります。これは痛みがあるために、痛い方の足を使わないようになるためです。そして、その足の筋肉はかなり細くなっていることがほとんどです。力がかからない足の筋肉は細くなります。特に成長期に見られますから、どんどんと体が大きくなる時期に左右の足で、病気になっている方は必要な成長ができません。
この場合には、できるだけ早くに痛みから解放し、できるだけ早くに足を使えるように手術をリハビリテーションを行う必要があります。
一つ問題があります。レッグ・カルベ・ペルテス病の診断が難しい場面があるということです。非常にわかりやすいこともありますが、ときに、診断に苦労することがあります。通常はX線検査(レントゲン)で診断をしますが、X線検査ではわかりにくいことがありますが、その場合には、CTやMRIを使うことで、一般的なX線検査よりも早期に、レッグ・カルベ・ペルテス病を診断することができます。
レッグ・カルベ・ペルテス病におけるX線検査上の変化に分類
グレード1、2-3、4、5に分かれます。説明のために、一つイメージしていただきたいことがあります。右手でグーを作り、左手でパーを作り、その左手のパーで、右手のグーを掴んでください。このとき、右手のグーが大腿骨頭、この右手を掴んでいる左手のパーを寛骨臼と言います。
グレード1:X線に現れる変化は、グーとパーの間に隙間が現れることです。グーとパーの間のことを股関節腔と言います。通常はほとんど隙間はありません。ここに隙間ができてしまうということは、グーとパーの密着が緩むということです。また、グー(大腿骨頭)の方の手首(大腿骨頸)の骨の密度が低下して、X線で骨が薄く弱く見えるようになります。
グレード2-3:レッグ・カルべ・ペルテス病が進行してくると、形の変化が目立ってきます。右手のグー(大腿骨頭)が変形を始めます。通常は、グーはほぼ球形をしていますが、これが扁平化してきます。つまりは、綺麗なスムーズな球形ではなくなるということです。そして、骨密度が低下した、骨として弱くなった領域が目立ってきます。このようなことが、グー(大腿骨頭)のところと、手首(大腿骨頸)に起こります。
グレード4:グー(大腿骨頭)や手首(大腿骨頸)の変形が進みます。また、変形だけではなく、崩壊が始まります。変形だけではなく崩れてくるということです。そして、グー(大腿骨頭)とパー(寛骨臼)の間の空間である股関節腔が広がり、パー(寛骨臼)がグー(大腿骨頭)を掴んでいられなくなる股関節亜脱臼が起こることもあります。
グレード5:レッグ・カルベ・ペルテス病がさらに進行すると、グー(大腿骨頭)が砕けたり、グー(大腿骨頭)の表面が欠けたりします。
ほとんどのレッグ・カルベ・ペルテス病の犬は、診断が立った時点では、元には戻らない骨や関節の変形、そして骨関節炎が起こっています。この場合には、外科手術が必要になりますが、手術によって、股関節や足の機能が回復する可能性が高くなります。
私の体験的な話ではありますが、レッグ・カルベ・ペルテス病の犬で手術を行った全ての犬で、股関節機能の回復が見られています。手術方法には、大腿骨頭切除と呼ばれる術式が選択されます。ときには、股関節全置換術と呼ばれる、いわゆる人工股関節が選択されることもありますが、極めて少数でしょう。
大腿骨頭切除は、手術方法が比較的複雑ではなく、肯定も多くはありません。先ほどの例で言いますと、グー(大腿骨頭)、手首(大腿骨頸)の手首に近いことろで骨を切ってしまいます。そして、切って太ももの骨から離されたグー(大腿骨頭)を股関節から取り除くという大胆な手術です。一見して、そんなことをして、犬は歩けるのだろうかと心配されるかも知れませんが、問題なく歩けるし、走ることも、ジャンプすることもできるようになります。
そして、この手術での回復率は正常な足と比べて80%まで回復するとされていますが、小型犬でも、大型犬でも、特別な運動をしない限りは、その20%の不足分を意識するようなことはなく、全く問題の無いように見えます。
この大腿骨頭切除は、レッグ・カルベ・ペルテス病だけではなく、股関節形成不全、いわゆる股異形成でも選択される手術方法で、この場合、小型犬よりはむしろ大型犬によく見られる病気ですから、体重が30kgを超える犬でも全く問題なく行うことができますし、歩く、走る、ジャンプするなどといった動きも不自然な感じも違和感もなく行うことができます。
文献的な、大腿骨頭切除の機能回復は80%という研究報告は、意識することがないくらいの問題だと考えています。
そして、レッグ・カルベ・ペルテス病の犬に行う外科手術のもう一つは、股関節全置換術という、いわゆる人工股関節ですが、これはもともと大型犬用に開発されたもので、最近では小型犬にも適応できるようになっていますが、手術工程が多く、合併症も多く見られます。小型犬用の人工股関節の手術の合併症は、おおよそ33%に見られるとされています。
そして、レッグ・カルベ・ペルテス病の場合、大腿骨頭切除を選択しても、股関節全置換術を選択しても、重要なのは、手術後の理学リハビリテーションです。痛めた足の太ももの筋肉が萎縮していることが多く、それほど長い間、股関節の痛みに耐えた子犬は、痛みから解放されてもすぐには歩こうとはしません。普通に歩けるようになるためには、ある程度の時間が必要です。それでも、ときどきスキップをするように歩いたり、ときには走ったりすることがあります。回復をできるだけ早めるのは理学リハビリテーションです。