【犬の短頭種】目の病気を獣医師が解説します。

短頭種と呼ばれる犬種には、いろいろな特徴的な病気が見られることがあります。代表的なものには、短頭種気道閉塞症候群の呼吸器系疾患、嚥下障害のような消化器疾患、そして外耳、中耳に起こる様々な耳疾患です。そして、目の病気も一般的に認められます。

今回は、そのような目の病気を取り上げます。短頭種に一般的に見られるのが、色素性角膜炎や角膜潰瘍です。また乾性角膜炎も見られます。

犬の眼球は頭蓋骨の大きさによって異なることがわかっています。その半径はおおよそ1.0cmです。そして、眼球が収まっている頭蓋骨のくぼみは、眼窩(がんか)と言いますが、短頭種は、短頭種ではない犬と比べて、この眼窩が浅いのです。

短頭種に起こりやすい目の病気

自然発生性角膜潰瘍、乾燥性角膜炎と、それに伴う深部角膜潰瘍、色素性角膜炎、眼球突出

原因は、眼窩が浅いこと、それによって目が飛び出していること、下のまぶたが眼球側に軽く反転していることもありますし、涙が少なめだったり、鼻のシワが高いことによって皮膚の毛が目の表面を刺激し続けることもあります。

一つには、目の表面の保護には、眼球表面に涙の層が必要です。その涙の層を作るのは、涙と瞬きです。目が大きめで、やや飛び出しているので、瞬きをしても目の表面に十分な涙の層を作ることが難しいということです。特に眼球の高いところ、すなわちちょうど真ん中あたりの一番高いところには、涙が残り難く、涙が少なくなるために、傷がつきやすく、またついた傷が治り難くなります。

ちなみに、短頭種に角膜潰瘍(目の表面の傷)が起こる可能性は、雑種犬と比べて10倍以上であるという報告があります。また、短頭種の角膜(目の表面)は、短頭種ではない犬種と比べて知覚が弱く、つまり鈍感になっていることがわかっています。

色素性角膜炎という病気があります。これは、目の表面(角膜)に黒い色素がつく病気です。はっきりとした原因はわかってはいませんが、多くの短頭種に見られます。私の個人的な印象ですと、ある年齢を超えた短頭種には、ほぼ全てで見られるというのがあり、短頭種では必ずと言っていいと思っています。

ただ、この色素性角膜炎は、犬のご家族には、ほとんど認識されません。つまりは、気づいてもらえないのです。理由は簡単で、見た目ですぐには判断できないのです。もともと犬の目は黒目がほとんどです。その表面(角膜)は、正常では無職透明なわけですが、色素性角膜炎は、この目の表面(角膜)に黒い色素がつく病気です。例えるなら、透明のガラスの向こうに黒い紙が貼ってあります。この黒い紙は瞳孔だったりいわゆる瞳なのですが、この色素性角膜炎とは、ガラスに黒い油性ペンで印をつけるようなものですから、一見、奥の紙が黒いのか、表面のガラスに黒い印が付いているのかわかりにくいわけです。どちらも黒ですから。私は、これを犬のご家族に見ていただくために、ペンライトをよく使います。ペンライトを使いますと、すぐにわかっていただけます。