ちゃんと治りますが、治るまでの時間は様々です。そして、繰り返すこともよくあります。よく再発するということです。
治るまでの時間は、1回の治療でしっかりと治ることもあれば、1か月くらいかかることもあります。そして、厄介なのは、治療を開始する段階では、どれくらいで治るかを正確に予測することが難しいところです。
治療には、麻酔を必要としないもの、麻酔までは必要ないけれども鎮静が必要なもの、そして全身麻酔が必要なものがあります。はじめは、特に初発の時には、まず麻酔を必要としない方法で治療をすることが多いと思います。その治療に対して、治りが悪いは場合には、鎮静を使う方法や全身麻酔を使う治療の提案があるかも知れません。
原因
耳血腫の原因は、痒みや炎症による耳の傷や、耳の血管(動脈)が破綻して、耳の中に血が溜まることで耳血腫が起こります。耳が腫れたように見えるのですが、そこには血液や血液を含んだ液体が溜まっています。
診断
見た目や病歴から診断できます。耳血腫に犬の耳は特徴的に腫れています。そして、その原因となるような、耳の痒みが見られることがありはずです。痒みは、よく頭を振るとか、耳を実際に掻いているなどの症状をご家族が見ていると思います。
そして、この耳の痒みの原因は、ミミダニや外耳炎が多く、ときに、全身性に痒みがある犬もよく見かけます。痒みが全身性ぼ場合には、アトピー性皮膚炎が、耳の痒みの原因になっているかも知れません。
そして、アトピー性皮膚炎がある場合には、痒みは耳だけに留まらないことが多いですので、目の周り、口の周り、顔、その他体を痒がることが多く見られます。
ご自身の犬が耳血腫になった場合、多くのご家族の心配は、いつ治るの?と言うことだと思います。
獣医師は、ある程度楽観的な話をするので、重篤な病気ではないことはわかるけれども、なかなか治らない。そのような悩みをお持ちのご家族は多いはずです。
これは、獣医師にも、いつ治るかを正確に見通すことができないからです。すぐに治ることも多いですし、長引いて1か月くらいかかることもあります。
耳の血管が破綻して、そこが動脈出血を起こしていますので、その出血が止まらない限りは続く訳です。
耳血腫に見えて、違う病気もあります。
(慢性ではなく)急性のアレルギー反応が耳にも出た場合の浮腫み、膿瘍、腫瘍です。
どのような治り方をするのか?
キレイに元どおりに治ることがある中で、慢性化したり再発する耳血腫は、線維症や耳介軟骨の萎縮や繊維化で耳が変形することがあります。私は、耳血腫の犬を治療するときには、ご家族の方には、あらかじめ犬の耳が程度変形するかも知れないとお伝えするようにしています。
治療方法
まずは外耳炎の治療を行います。私の勝手な思い込みもあるかも知れませんが、耳血腫ができる犬は、ちょっと活発な印象があります。耳の掻き方や頭の振り方が激しい犬かも知れません。そうなりますと、外耳炎治療の基本としての外耳道洗浄に時間がかかったり、難しかったりします。
ここからが、本当の耳血腫の治療ですが、大まかに3つあります。
保存療法(ある程度急性期で、耳血腫が起こってからあまり時間が経っていない場合)、鎮静が必要かも知れないカニューレを使う方法(急性期から、ある程度保存療法に反応が悪い場合に選択)、外科療法(慢性期や、急性期であっても再発生の場合に選択)
選択の場面は、ある程度の指標ですので、必ずそうなる訳ではありません。かかりつけの獣医師と相談をしてくださいね。
保存療法
耳血腫ができたばかりの時に選択されます。耳血腫で腫れているところに針を刺して、血液を含む耳血腫内の液体を抜きます。この時に鎮静が必要な犬もいるとは思いますが、私は針を刺すところに局所麻酔のゼリーを塗るだけでやっています。もし鎮静が必要だとしたら、針の痛みというよりは、犬の性格として活発すぎるというのが鎮静が必要な理由になるかも知れません。
そして、この治療では、度々再発が見られます。また、耳の変形はこの治療でもあり得ますので、初期治療で針を刺すだけであっても、必ずキレイに治るとは限りません。針で液体を抜いた後には、耳に圧迫包帯を行いますが、これに不快感と言いますか、違和感を覚える犬は多いですね。
代替方法
保存療法にもう少し手を加えます。耳血腫で腫れているところを少しだけ切開します。おおよそ5mmも切開すれば良いのですが、ここに細いチューブ(カテーテル、カニューレ)を挿入します。そして、そのカニューレを通して、常時耳血腫内の液体が抜けるようにしておきます。
液体が出なくなるまで、2-3週間ほどはカニューレを挿入したままにしておきますが、犬が頭を振ったり、耳を引っ掻いたりすると、抜けてしまうことがあります。そうなりますと、もう一度つけることもありますし、他の保存療法やもっと積極的な手術を行うこともあります。いずれにしても、エリザベスカラーが必要です。
もし、ちゃんと治るまでカニューレが外れなければ、抜いて治療終了です。治るまでというのは、液体が抜けなくなり、腫れもない状態ということです。それでも再発することはあり得ます。
外科療法(手術)
これまでの治療方法も、外科療法だと思いますが、一応これが本格的な外科療法とされています。この手術方法を文字だけで説明することは難しいので、近日中にyoutubeにアップしますので、よかったらチェックしてみてください。
概要としましては、耳の内側にやや大きめに切開を行います。もちろん、犬には全身麻酔がかかっています。ほとんどの場合、ある程度の出血があります。この出血は、耳血腫内の液体ではなく、耳の皮膚を切開したことによる出血です。それを丁寧に止血しながら、切開した線が閉じないように少し隙間を開けて耳を縫い合わせます。
この切開線の隙間から、耳血腫に溜まった液体が排出されますので、包帯をしたり、エリザベスカラーをしたり、そしてその間も外耳炎に治療を続けます。おおよそ10日間ほどしたら、包帯を取り除き、縫ったところの抜糸は手術から2週間ほどで行います。
犬は元気ですし、時間はかかってもちゃんと直りますが、いつ治るのかを正確に予想できないのがもどかしい。そんな病気が犬の耳血腫です。