【犬と猫の水頭症】どんな病気? 獣医師が解説します。

水頭症では、こんな症状がみられる。

両目の外腹側斜視、発育不良(小さいまま大きくなりません)、泉門(頭頂部の頭蓋骨にみられる隙間)、意識レベルの低下、性格や知的行動の異常、盲目(視覚障害)、旋回(グルグル回る)、徘徊(うろうろと歩き続ける)、てんかん発作、歩様失調(歩き方が異常)、起立困難、四肢不全麻痺(前足も後ろ足も麻痺していて立ち上がったり、歩いたりが自由にできない)、脳神経の異常(立とうとしても、平衡感覚に支障をきたして倒れたり、眼振が見られたりする)、その他さまざまな神経症状がみられます。

この全ての症状がみられるわけではありません。そして、水頭症があっても無症状の犬もかなりの数います。

水頭症ってどんな病気?

頭に水が多く溜まる病気です。犬の頭の中には、脳脊髄液という液体が流れています。脳の中、桃に例えると種がある部分、ここに脳室という脳脊髄液を容れている部屋があります。そして、脳と頭蓋骨の間にもくも膜下腔という領域があり、そこにも脳脊髄液があります。

水頭症とは、この脳脊髄液が増えることで起こる病気のことです。脳脊髄液が増えることで、頭蓋内圧が上がります。そうなることで、いろいろな神経症状と呼ばれる変化が見られるようになります。

なぜ脳脊髄液が増えるの?

脳脊髄液は、脳室やくも膜下腔を流れています。脳脊髄液が作られ、一部は吸収され、一部は排泄されます。

  • 脳脊髄液が多く作られすぎる。
  • 脳脊髄液を吸収する働きが低下する。
  • 脳脊髄液の流れが、その通り道の閉塞など絵滞る。

まあ、単純といえば単純かも知れませんが、上の3つが、いろいろな原因で起こります。

治療はできるの?

治療はとても困難です。脳の中で脳脊髄液が増えているので、それをどこかに逃がす必要があります。外科手術を必要とします。そのために、脳の中からお腹まで細めのチューブを通します。脳でいっぱいになった脳脊髄液をこのチューブを通じてお腹に逃がします。そのチューブは、皮膚の下を通しますので、外からは見せません。このチューブをVPシャントと言います。

このVPシャントは、重度の神経症状が見られる犬、猫には効果的です。

一つのエピソードです。

生後数か月の小さな猫がいました。大きくならない猫でした。寝たきりで動くことはありますが、立つことも歩くこともできません。診断をするために検査をする必要がありますが、まだ今ほどMRIなどの検査装置があちこちにない時代でしたので、遠くにある大学病院に運んで、MRI検査を行いました。そこで水頭症ということがわかり、治療としてVPシャントを設置することになりました。VPシャントを設置すると、この小さな猫はだんだんと大きくなり、歩けるようにまでなりました。このVPシャントの問題点は、お腹にあるシャントチューブがお腹の中の脂肪や大網という組織で詰まってしまって、脳から流れてくる脳脊髄液が流れなくなることです。その度に、開腹手術をして、その詰まりを解除する必要があります。

うちのどうぶつは、水頭症だけど手術の話はありませんでしたよ

VPシャントは、治療ではあるのですが、この方法が選択できるのは限られていると思いますよ。それには、他の内科的な治療方法では水頭症の症状を解決できない場合に使う最終手段の位置付けがあります。

水頭症の内科治療をいうのは、基本的に原因療法ではなく、そこで起こる様々な神経症状に対して行う対症療法です。

その内科治療の基本は、高くなった脳圧を下げたり、脳脊髄液の産生を抑制したり、排泄を促すための治療です。

時に、てんかん様発作が見られることがあるので、抗てんかん療法を用いててんかん様発作をコントロールすることもあります。