【犬と海外、移住や旅行】その手続きを獣医師が解説します。

犬を連れて海外に移住される方に、その手順を解説します。

今回は、概ね2年以内の短期間に帰国される方に向けた手順です。

もっと短い旅行でも同じ手順です。

  • 日本を出るための条件
  • 相手国に入るための条件
  • 日本に再度入国するための条件

これを揃えることになります。

日本を出るための条件や、再度入国するための条件は、難しくはありません。難しいというか、何を準備すれば良いの分かり難いのが、相手国に入るための条件です。

これは国によって異なります。

まずは、日本を出るための条件と再入国するための条件です。

日本にいるうちに行う手続きです。

1 マイクロチップを挿入する。

これがないと始まりません。これから行う狂犬病ワクチンに証明書にも、マイクロチップの番号が入ります。マイクロチップを入れる前に行った狂犬病ワクチン接種などは、有効とみなされません。マイクロチップは、ISO(11784及び11785)規格の物を挿入するようにとなっています。日本国内の動物病院で挿入する場合には、何も言わなくても、この規格にものになるはずです。

マイクロチップを用意していない動物病院もあるかも知れませんので、事前に確認してから行くのが良いですよ。

マイクロチップの仕組みは、番号情報が入ったチップを犬の皮下と呼ばれる領域に少し太めの注射器のようなもので入れます。マイクロチップの大きさは、長さ1cmほどのそうめんのような感じです。私の体験にはなりますが、これまでマイクロチップの挿入時に犬が痛がったことはありませんし、その後犬が違和感を訴えることもありませんでした。

そのマイクロチップは、マイクロチップリーダーと呼ばれる読み取り機をかざして読み取ります。買い物をした時のレジで商品のバーコードを読み取るのに似ています。

マイクロチップの番号は、いわゆるIDナンバーですから飼い主さんは覚えておく必要はなくても、いつでも取り出せるように何かにメモするなどしておいて下さいね。

もしも、マイクロチップを入れた犬が日本で迷子になった場合、その犬が保護されるとすぐにマイクロチップを読み取って飼い主さんの照会をすることができます。このように、日本に再入国した後もマイクロチップを効果的に役立てたい場合には、マイクロチップ情報を登録しておくと良いでしょう。
登録方法は動物病院で説明してくれるはずです。登録料が1,000円ほどかかります。

2 狂犬病ワクチン接種をする。

狂犬病ワクチンは、不活化ワクチンまたは、遺伝子組換えワクチンでなければなりません。日本国内に流通している動物用狂犬病ワクチンは不活化ワクチンです。

もし、毎年受けている前の狂犬病ワクチンからあまり日が経っていなくても、必要であれば接種しなければなりません。

3 狂犬病ワクチンをもう一度接種する。

1回目を接種してから、30日以上、1年以内に2回目の狂犬病ワクチン接種をします。多くの方は、ある程度急いで渡航準備をされているはずですので、1回目の狂犬病ワクチン接種から30日もすると、2回目を打つことになると思います。

4 狂犬病抗体検査をする。

2回目の狂犬病ワクチン接種から1週間以上あけて採血をします。個人的には2週間ほど開けるのが良いと考えています。その方が抗体が上がっている確率が高くなります。採血は動物病院で行います。採血をするときは、あらかじめ動物病院に連絡しておくと良いですよ。その後にも動物病院の獣医師に健康診断を依頼したり、そこには獣医師の署名も必要になりますので、協力は必要です。

獣医師は採血をして、その血液を処理します。具体的には血清分離ということをします。そして、その血清を「一般財団法人 生物科学安全研究所」に送ります。これは、犬の飼い主がやってもいいのですが、この狂犬病抗体検査証明書(兼申請書)には、マイクロチップを挿入した日を書いたり、狂犬病ワクチンの名前製造会社名などを書かなければなりません。獣医師に任せても良いと思います。

検査結果は、2週間後ほどで飼い主のお住まいに送られてきます。動物病院には届きません。

ちなみに、狂犬病抗体検査の結果は、この狂犬病抗体検査証明書(兼申請書)に手検査結果が手書きされます。その検査申請書自体が結果証明書になります。この検査申請書には、日本語と英語の書式があります。もし、渡航先でも必要になるようでしたら、英語の書式のものを英語で書いて(あるいは、動物病院で書いてもらって)申請することをお勧めします。日本国内では、日本語でも英語でも使えます。

私は、基本的には英語で書くようにしています。

5 出発の7日前までに、犬の輸出検査を受ける動物検疫所に連絡します。

羽田や成田などの出発する空港ターミナルの動物検疫所に連絡をします。その頃には、ご利用する航空会社が決まっていると思います。その航空会社がわかれば、出発するターミナルが決まっていると思います。

6 出発の日、または数日前に動物検疫所で輸出検査を受けます。

基本的には、出発日に輸出検査を受けます。しかし検疫所が開所している時間と出発時間が合わない場合には、前日なり、数日前を指定されることがあります。そのときには、出発日直前でも出発空港に犬を連れて行き、輸出検査を受けることになります。

このときに必要な書類は、狂犬病予防法及び家畜伝染病法に基づく犬の輸出検査申請書獣医師発行の健康診断書(出発の10日前から出発日までに行った健康診断の証明書)、狂犬病ワクチン接種証明書(第一回目と第二回目)、狂犬病抗体検査の結果です。

これらは、検疫所での輸出検査当日に初めて検疫官に見せるのではなく、事前にFAXなどでやり取りをしておいて、当日には原本を見せるだけにしておくことが大切です。

相手国に入るための条件

これは、滞在する国によって異なります。最近、お手伝いをした米国シカゴに行かれた方々がされた準備は、とてもシンプルでした。彼らが持って行った書類。

  • 狂犬病予防法及び家畜伝染病法に基づく犬の輸出検査申請書(英語)
  • 2回の狂犬病予防接種証明書(英語)
  • 混合ワクチン接種証明書(英語)
  • 健康診断証明書(英語)

これだけです。これらすべての書類は私が作りました。そして狂犬病抗体検査は行なっていません。米国に入国するためには必要ないのです。しかし、日本に再度入国することが決まっていれば、狂犬病抗体検査は必要です。

シカゴへは、この数か月の間に3名の方が行かれましたが、皆さん到着後にメールを下さいまして、とてもスムーズに米国入国ができたと書いて下さっています。

しかし入国条件は、その国々で異なります。米国でも、ハワイは厳しいですし、オーストラリアはまたいくつかの検査を追加で必要です、シンガポールは特別な書式の申請書が必要ですし、EUはほぼ統一された書式があります。また東南アジアの国々もぞれぞれの入国基準があります。

それらを調べる必要がありますが、どこに聞くのが良いかが問題です。実はそこも正確には把握しいるところはないようにも見えます。

一応は、相手国の入国に使う空港の動物検疫所に入国条件を聞くのがベストだと思います。

ここからは、滞在される国で行う手続きです。

7 日本到着の40日以内に、到着予定空港や港を管轄する動物検疫所に届け出ます。

もし羽田空港国際線ターミナルに到着予定でしたら、そこに、もし成田空港でしたら、第一旅客ターミナルか、第二、などです。そこの動物検疫所に知らせておきます。

8 出発前検査

出発前に滞在国の動物検疫所で検査を受けます。ここでは、狂犬病とレプトスピラ症にかかっていないことを証明してもらい、その国の政府機関発行の証明書を受け取って下さい。

9 日本到着後の手続き

8で受け取った滞在国政府機関発行の証明書と、日本の動物検疫所発行の輸出検査証明書(日本を出るときに受け取っていた証明書)を確認され、さらに輸入検査で問題がなければ無事に帰国、入国が許されます。