犬が動かない
犬が突然動かなくなることがありますよね。元気が無く、ぐったりとしていれば、飼い主さんもお心あたりがあったり原因がある程度わかっていることもあるでしょう。しかし、さっきまでは元気にしていたのに、とか、昨日までは何も変わったことがなかったのに、とか、そのような場面で動かなくことがあります。
犬が動かなくなる病気は何ですか?
この質問に、これです! キッパリ。と答えられることはありません。いろいろなことが考えられるからです。このように、一つの病気に一つの症状というものではないので、動かないだけでは、病名まで絞り込むことはできません。非特異的症状と言われるものです。
動かない犬の診断へのアプローチ
私がまず動かない犬を診るときには、何が動かない理由なのかを調べます。診断はもっと後になります。犬にみられる、動かない以外の症状にもよりますので、基本的に動かない以外はあまり変わったことがないとして考えてみます。
犬が突然動かなくなる理由
これは、犬が動かないだけで、その他に目立った症状がない場合です。とは言っても、痛みで動けないくらいでしたら、食欲も落ちていることがあります。
では、何の痛みで動けないの?
私が診察する中で、多いのは背部痛です。背部痛がみられると、いつもはピョンピョン飛ぶことが多い犬が、飛ばなくなったり、飛ぶ高さが低かったりします。食欲はあったりなかったりですが、いつもモリモリと食欲旺盛な犬ほど、このようなときには食べなくなる傾向があるという印象です。その他、抱っこをするときや触ったときにギャンとなくこともあります。
この背部痛を確認するのは触診です。
一通りの身体検査が終わったら、脊椎を後頭骨から尾側に向かって触診していくと痛みがあるところで反応がみられることがあります。この背部痛は、椎間板ヘルニアや椎体の炎症などで起こることがあるのですが、血液検査やX線検査でそれを証明するのが難しいことがあります。ですから、慎重な触診だけに頼ることもあります。
次には、腹痛です。膵炎や子宮蓄膿症など、本来は他の症状を伴う病気でも、まずは動かなくなることがあります。これらの場合には、血液検査、X線検査、超音波検査で診断ができます。おのような場合、実は飼い主さんが把握できていない他の症状があることも多いのですが、その症状がわかり難いことがあります。
例えば、子宮蓄膿症の場合、本来は多飲多尿と言いまして、水を普段よりも多く飲んだり、排尿量や回数が増えることがあるのですが、普段から水をたくさん飲む犬もいたり、庭で過ごすことが多い犬で、いつも庭にはたっぷりの水が用意されていて、どれだけ飲んだかの把握ができていないという場合もあります。子宮蓄膿症では、食欲がなくなるのは最後の最後で、それまでは元気ですし、食欲もいつもどおりです。が、あるとき動かなくなったり、食べなくなったりします。
そして、視覚の低下や喪失です。
これには、進行性網膜萎縮や緑内障があります。進行性網膜萎縮は、そこまで急速に進行するものではありませんが、治療法も予防法もない失明に至る犬の眼の病気です。進行性網膜萎縮になりますと、資格を失います。しかし、外からはキレイな眼に見えることが多く、失明しているように見えることはないと思います。動物病院で、瞳孔を開く散瞳という処置をして、しっかりと眼底を観察しないとわかり難いものです。
他には、緑内障です。
緑内障は、眼球にある視神経が圧迫される病気で、とても痛い病気です。これになりますと、あまり動かなくなったり、動きが鈍くなったりしますし、元気もなくなることが多いです。
緑内障は、動物病院で網膜検査や眼圧検査を受ければわかる病気です。
動かない。ただそれだけでも、飼い主さんがおかしいなと思われたら、多くの場合、何かの異常が起こっていることがほとんどです。そして、その異常は、慎重な身体検査がもっとも有効であり、血液検査、X線検査、その他の検査では全て問題なしという結果が出ることもあります。それらの検査結果に異常がないからと言って、正常なわけがありません。いつもは動くのに動かないわけですから。それらの検査結果では異常値が出ない、そのような異常であると考えるのが妥当です。
慎重に、優しく病気に向き合ってくださる。かかりつけの獣医さんに期待をしながら、犬の体調の変化に対処してみましょう。