猫がくしゃみを頻発することがあります。ほとんどが、猫上部気道感染症により起こります。そして、この上部気道感染症の原因になるのが猫ヘルペスウイルス1型、猫カリシウイルス、各種細菌、クラミジアなどです。
この病気は、ときに慢性化して治りづらく、治ったと思ってもまた繰り返すことがとても多い病気です。動物病院で治療を受けたのに、また同じ症状が始まるような場合には、治っていないことも、そして、治ったのにまた繰り返していることもあります。
治療には、抗ウイルス薬の投与、支持療法、局所療法があります。
全身的な抗ウイルス薬には、1日に4回を目安に、やや大きな錠剤を猫に与えなければならないものもあります。また、L-リジン塩酸塩が有効と言われることがあります。ちなみに、L-リジンは、ヒトもよく使う物で、ネットショッピングでも買うことができます。その場合の使用につきましては、自己責任でお願いしますね。他には、インターフェロンの注射を使うことがあります。
動物病院で最も多く行われる支持療法は、十分に食事を取れない猫に点滴をしたり、嗜好性の高い、栄養価の高い食事を与えたり、食欲増進効果のある薬を使ったりします。熱が高い場合には、解熱剤を使うこともあります。二次感染予防のために抗生物質を使うことは、ほぼ必ずと言って良いほどに行われている治療でしょう。
局所療法とは、症状のあるところにだけ薬を使ったり、処置を行ったりすることです。局所療法には、点眼薬、眼軟膏、点鼻薬があります。これらの薬には、抗ウイルス薬、インターフェロン、そして抗生物質を使ったりします。
2匹以上で飼われていたり、他の猫と接触する機会がある猫は、感染と発祥のリスクが高くなります。そして、1匹だけで飼われていても、潜在的にウイルスを保有している猫、すなわち、一度でも上部気道感染症を発症したことがある猫が、何かしらのストレスを受けると、ウイルスが再活性して、くしゃみを始めることがあります。
くしゃみ以外にみられる、上部気道感染症の症状は、次のようなものがあります。
沈うつ、食欲不振、発熱、目ヤニ、涙、鼻水、よだれ、目の充血、まぶたのむくみ
これらは典型的な症状で、ときには、分泌物が目や鼻を塞いでしまうことがあります。さらに、目に起こる病変には、潰瘍性角膜炎、結膜炎、そしてぶどう膜炎があります。
潰瘍性角膜炎、結膜炎、そしてぶどう膜炎のような病気は、動物病院で診察を受けてから、何かしらのお薬が必要になることがほとんどです。これらが、目だけの病気ではなく、全身的な感染症であることを考えますと、目薬だけで治すことは難しいかも知れません。
猫ウイルス性鼻気管炎の診断は、通常は臨床症状から行われます。つまりは、獣医師が、特徴的な所見を確認して診断をするということです。他には、確定診断がありますが、これは多くの場合には実施されないでしょう。ご参考までに、確定診断の方法は、ウイルス分離、ウイルス核酸の検出、血清学的診断方法があります。
ウイルス分離とは、ウイルスを採取して、それを培養細胞と呼ばれる特別な細胞で増やします。その過程で、細胞に特徴的な変化が起こり、その変化を観察してウイルスを特定したり、更なる実験を行ってウイルスを特定したりします。
ウイルス核酸の検出は、PCR検査でおこないます。血清学的検査とは、猫の血液にある抗体を調べる方法です。
ほとんどの場合、猫のウイルス性鼻気管炎の診断は、臨床的に行われます。つまりは、獣医師の診察だけで行われ、確定診断まで行われることは少ないものです。
多くの場合、この病気の治療期間は、おおよそ1週間ほどです。ときに、4週間以上に渡って続く場合や、長い治療期間にも関わらず、スッキリと治らない慢性的な感染症もみられます。