【うっ血性心不全】犬の肺水腫を獣医師が解説します。

動物の治療は、診断に基づいて行われます。そして、診断は獣医師の主観と客観的な事実、すなわち身体検査所見、症状そして検査結果に基づいて行われます。正しい治療には、正しい診断が欠かせません。

私の場合、他の動物病院で肺水腫と言われた、という患者さんが来られますと、まずは診断を再検討することから始めることがほとんどです。再検討を行わずに、言われたままの肺水腫を前提に治療を行なった場合、もし肺水腫ではなければ、正しい治療が行われないことになりますから、この診断の再検討の必要性はかなり大きなものだと考えています。そして、自分で行なった診断であっても、必要に応じて何度も再検討を行うこともあります。

正しい診断があれば、あとは自然に正しい治療へと導かれることになります。

前置きが長くなりましたが、本題に進みます。

うっ血性心不全の診断

肺水腫を起こす、うっ血性心不全の診断には、病歴、臨床症状、臨床検査、胸部X線検査、心臓超音波検査が必要です。病歴には、咳がみられることが多いのですが、咳が認められない場合もあります。重篤な場合には、起座呼吸と言いまして、座ったまま呼吸を続けて、横になることができないこともあります。このような場合には、眠ることができません。失神を起こす犬もいますし、呼吸困難がみられる犬もいます。

症状は、呼吸困難、呼吸数の増加、咳、舌の色が赤やピンクではなくなり、くすんだ色になったり、紫になったりする、咳に血液が混ざるというのが、ご家族の方にもわかる可能性のある症状で、獣医師は、さらに聴診器を使って心雑音や不整脈を聞いたりします。また、肺水腫、胸水、復水、心臓の周りの心嚢に水が貯まることがあります。

臨床検査では、血液検査を行い、特別に甲状腺ホルモンについての検査も行うことがあります。尿検査や、犬糸状虫検査も大切です。

特に肺水腫の程度は、胸部X線検査で最もよくわかるのですが、肺水腫が深刻な程度に進行している犬をX線検査のために横に寝かせたり、うつ伏せや、仰向けにするなどすると、途端に状況が悪化することがあり、X線検査であっても危険を伴う場合があります。必要に応じて、この検査は後回しにする場合もあります。

心臓超音波検査も同様です。犬の状態が安定している場合には、行うべき検査ですが、頻呼吸や舌の色が悪くなっているときに行う検査ではありません。

予後

中期的には、良好から要注意です。