特に、普段食欲旺盛の猫が、突然に何回も吐いたり、あるいは吐こうとしたり、食欲がなくなり、うんちもしないとき、このような場合に最も可能性が高い問題は、消化管閉塞です。
突然ではなく、何日かかけてだんだんと食べる量が減ってきたり、痩せてくる場合には、また別の原因も考えなければなりません。食べなくて痩せきている場合、この体重減少は急性ではなく、少し時間が経っていることを意味します。
今回は、モリモリ食べていた猫が急に食べなくなった、急性の場合のお話です。多くの場合、この段階では体重は減っていません。
治療は、薬を使って吐かせてみるか、内視鏡で取り出すか、手術をして取り出すかという3択になることがほとんどです。腸に詰まってしまった異物を取り出すには、外科手術の1択になります。
吐かせる→異物に丸みがあり、小さいもので、胃の中にある場合
吐かせてもどうぶつの体に傷をつけない物、しかし、動物病院に着くまでに何度も吐いている場合には、さらに吐かせる処置を行なっても吐き出すことは難しいので、次の処置に進むことになります
内視鏡→異物の形が吐かせるには危険があり、比較的小さめのもので、胃の中にある場合
吐かせるには危険だが、食道を通って取り出すことができる物
外科手術→吐かせたり、内視鏡を使って取り出すことができない物、これは、尖ったものや大きな物、そして、胃を通過して、腸に移動して詰まってしまった場合
主な症状
嘔吐、食欲不振、元気がなくなる、排便回数の減少、便に血液が付く
症状とは、これらの症状のどれか一つがみられることがあったり、全ての症状がみられることがあったりします。
現場を目撃した場合には、間違いはないでしょう。異物を口にしていたり、飲み込んだりする様子が目撃されることがありますが、誰もみていないところで飲み込んでいることの方が多いものです。
猫の場合には、紐状異物と言いまして、まさに紐、糸、そして装飾品で遊んでいる現場を目撃された場合には、紐状異物を誤って飲み込んだ可能性があります。猫が好んで飲み込むものには、動くおもちゃ(猫じゃらし)や、動物の毛皮で作られたおもちゃ、特にウサギの毛皮を使ったおもちゃなどには、注意が必要です。遊ばせるときには、必ず大きさや数を確認し、遊び終わったら猫の届かないところに片付けるようにしてください。
また、過去に異物を食べて治療を受けた猫は、同じようなことを繰り返すことがよくあります。過去に消化管内に異物が詰まったり、詰まらないにしても、そのことで治療や手術を受けた猫の場合には、同じようなことが起こっている可能性を考える必要があります。
動物病院で行われる検査
一つの検査や、一回の検査で、消化管内異物を明確に診断することは難しいことが多く、特に身体検査やX線検査(レントゲン)では異常がみられないことがほとんどです。また、腹部の触診で異物がわかることもありますが、猫の協力が必要で、なかなかお腹を触らせてくれない猫の場合、これは興奮している猫のことですが、その場合には、さらに診断が困難です。
血液検査は、診断をするというよりはむしろ、他の病気ではないことを否定するために行うことになります。
内視鏡検査は、異物が胃の中にある場合には特に有用です。もし内視鏡で、胃の中の異物を発見した場合には、そのまま内視鏡を使って取り除くことができるのか、あるいは外科手術で胃を切開しなければならないのかを判断します。
もしも、内視鏡で胃の中に異物が確認されなければ、それは、そもそも異物がないか、あるいは、異物が胃よりも先の小腸に進んでいることを意味します。
腹部超音波検査(エコー)
腹部超音波検査も、とても有用な検査です。これも興奮している猫では難しい場合があります。その場合には、できるだけ猫さんの興奮を沈めるようにしてから検査を行うことになります。
治療
吐かせる処置は、静脈内注射か、筋肉内注射を行います。通常は、薬を注射してから15分以内には吐き戻します。
内視鏡は、全身麻酔を行いながらの検査です。
内視鏡を口から挿入し、胃、そして十二指腸まで検査をすることができます。ここで異物を発見したら、鉗子を使って取り除くことを試みますが、明らかなに大きな異物だったり、異物が尖っていて、内視鏡で取り出すことによって胃や食道を傷つける可能性がある場合には、開腹手術を行うことになります。また、内視鏡検査は、胃の中に何も入っていない状態で行いますので、何かしらの食べ物が胃の中にある場合には、十分な検査を行えないことがあります。
開腹手術は、胃や腸に異物があることが明らかな場合、または、試験的開腹手術と言いまして、検査目的で開腹することもあります。検査目的で開腹するのは、持続性の嘔吐、腹痛、腸管拡張、腹膜炎などがみられる場合です。
開腹手術では、胃を切開したり、腸を切開したりします。腸切開の場合には、ときに腸をある程度の長さで切り取らなければならないこともあります。端々吻合と呼ばれる手術手技です。
私も、最近猫の小腸に詰まった異物を手術で取り除きましたが、小腸が真っ赤に腫れ上がっていて、切開だけをして閉じようとしましたが、傷んだ小腸は縫い合わせるには脆すぎました。そこで、小腸を10cmほど切り取り、端を端を縫い合わせることにしました。もともと食欲旺盛の猫さんでしたので、手術後は早い段階で食欲が戻り、元のようによく食べるようになってくれました。
胃切開や腸切開の後の食事の再開には、いろいろな方法がありますが、一般的には、手術後24時間したら水を与え、半日ほどは水だけにして、その後に消化の良いフードを少量ずつ与えるようにしています。多そよ3日から5日間くらいしたら、通常の食事に戻すようにしています。
縫い合わせた胃や腸が完全に心配なくなるのは、2週間はかかります。心配なくなるとは、傷口が塞がって、開くことがない状態になるということです。胃や腸を縫合する場合、通常は、合成吸収糸と呼ばれるいわゆる溶ける糸を使いますが、この糸が溶けるまでには数か月かかります。
手術を行った場合には、入院が必要になることが多いのですが、猫さんは長期の入院には向きませんので、できるだけ早めの退院を心がけるようにしています。入院期間は、おおよそ3日から5日間が多いでしょうか。