【犬の耳が臭う!】耳からの分泌物。原因と治療を獣医師が解説します。

耳だれとは、耳から出てくる液体や、その液体が流れてくる状態のことです。犬の耳だれは、特定の一つの病気を意味するものではなく、また、いくつかの原因が考えられます。多くは、ダニや耳の感染症が根本にあることが多いものです。

犬に耳だれが見られる場合、犬はとても痛がることが多いので、できるだけ早くに治療を始められるようにしてください。犬の耳に起こる病気の兆候や症状、そして予防方法や、起こってしまった場合にできることをご紹介します。

一般的な原因と治療

耳からの分泌に加えて、耳を触ったときに痛がったり、片側の耳を下にして頭を傾けたり、つまづいてしまったり、右や左の片側にクルクルと回ったり、耳を引っ掻いたり、頭を振っている場合、そして、臭いがするときには、犬の耳に炎症が起っているかも知れませんし、何かしらの耳の病気の兆候である可能性があります。

耳ダニ

耳ダニそのものは、非常に小さいにも関わらず、犬、特に若齢の犬にとっては大きな問題になることがあります。耳ダニがいる場合に、よく見られる症状の一つには、黒くて乾燥したやや量の多い耳垢があります。他には、強めの痒みです。

耳ダニにはいくつかの治療方法があります。耳ダニだけではなく、ダニの卵と幼虫にも効果がある薬があります。使い方も簡単なものが多いので、獣医師にご相談してみてください。

外耳炎

外耳炎では、べっとりとしていたり、黄色かったり、やや白っぽかったり、赤茶色の耳垢が見られることがあります。これらの分泌物が見られる主な原因としては、アレルギー、ダニ、ポリープ、耳垢が過剰に作られることや、頻繁な入浴、そして水泳が挙げられます。そして、これ以外の原因でも同じような耳からの分泌物が見られることがあります。

これらの病気の兆候で、ご家族の方が気付けるのは、犬の耳からの臭いです。悪臭や酸っぱいような、甘いような、いつもとは異なる臭いがすることがあります。また、犬に見られる症状は、耳や耳の後ろを頻繁に引っ掻いたり、耳を床で擦ったり、頭を振ったり、という行動です。耳を触ると痛がることもあります。

もしも、このようなことがありましたら、できるだけ早くに動物病院に連れて行ってあげてください。外耳の感染症の治療は、耳垢や分泌物の検査を行った後で、耳の中をクリーニングして、薬を使うことになります。薬には、耳に直接入れる物もありますし、口から飲ませる物もあります。これらのお薬を同時に使うこともあります。そして、慢性的であったり、再発を繰り返す場合、そして耳の穴の中にデキモノがある場合には、外科手術が必要なこともあります。

内耳炎と中耳炎

外耳炎の治療が行われていなかったり、外耳の感染症が慢性化して長期にわたって続いたりすると、強い痛みを伴う中耳炎や内耳炎に繋がることがあります。中耳炎も内耳炎も、外耳炎と同じような兆候があります。そして、口を開けることを嫌がったり、平衡感覚、バランス感覚に異常が見られることがあり、頭を傾けたまま真っ直ぐに歩けなかったり、立ち上がろうとして転んでしまうこともあります。そして、眼振と呼ばれる眼球の振動が見られたり、吐き気を催すこともあります。このような犬は大抵は、症状が見られて数日の間、食事を取りたがらないこともあります。

中耳や内耳の感染症の治療は、適切な抗生物質が必要なことが多く、動物病院での耳のクリーニングであったり、感染症の程度によっては外科手術が必要なことがあります。

ご家族にできること

犬の耳の中をのぞいてみてください。耳に問題がない犬であれば、きれいな皮膚の色が見えるはずです。そして、臭いがしないはずです。もし、耳垢、耳だれ(耳からの分泌物)、赤み、腫れ、臭い、そして耳の穴近くの皮膚が厚くなっていたり黒ずんでいたら、獣医師に相談しましょう。犬の耳の異常を治療せずに放置すると、強い痛みや、耳血腫、平衡感覚やバランスを失ったり、難聴を引き起こす可能性があります。

犬の耳からの分泌物は、何かしらの病気の症状かも知れませんので、まずは動物病院で検査を受けることをお勧めします。

犬の耳のケアで、ご自宅でできること。

耳の洗浄

犬の耳の中をのぞいてみてください。もし、汚れが見えれば、耳の洗浄をしてください。できれば、初めは動物病院でそのやり方の指示を受けていただくことをお勧めします。使用するのは、綿球と犬用の耳の洗浄剤です。見える範囲の汚れを取り除くのに役に立ちます。決して綿棒は使わないようにしてください。耳垢を耳の中に押し込んだり、綿棒の断片が鼓膜近くに詰まったりすることがあります。

耳の洗浄液には、いくつかの種類があります。主な目的は、耳垢を取り除くことですが、耳垢を溶かす働きには違いがあります。つまり、耳垢がよく溶けるものと、溶けにくいものがあるということです。これは、特に皮膚治療を得意とする獣医師が研究していることがあり、その獣医師を発信源として、多くの獣医師はどの洗浄剤が犬の耳垢をより溶かすかを知っています。そして、よりよく耳垢を溶かす洗浄剤は、やや高価です。

このブログで商品名を出すことはできないようになっていますが、動物病院で使われていたり、販売される犬の耳用洗浄剤(イヤークリーナー)では、どれも同じではなく効果に違いがあります。その効果とは、耳垢を溶かす力の違いです。

犬の耳用洗浄液の使い方は、それぞれの製品によって若干異なります。製品に書かれている使い方を守ってご使用ください。多くの洗浄液は、犬の耳の中に直接入れて、耳の付け根あたりを優しくマッサージするようにして使います。

いずれにしても、獣医師の指示に従っていただく必要があります。犬の耳に洗浄について、ご自身で判断しない方が良い理由があります。鼓膜が健康ではない場合には、耳の洗浄を行わない方が良いことがあるためです。慢性的な外耳炎の犬の場合、ある割合で鼓膜に穿孔がみられることがあります。この場合、通常は耳の洗浄剤は鼓膜までしか届かず、鼓膜を行き止まりとするのに対して、鼓膜に穴が空いていると、その鼓膜の穴を通過して中耳へと入り込みます。

もしも、耳の洗浄中に、犬がゴクゴクと何かを飲み込んでいるような仕草をする場合には、鼓膜に穴が開いている可能性があります。穴のあいた鼓膜を通過した耳の洗浄剤は、中耳から鼻、口へと進みます。犬はこれを飲み込むことがあるのです。

獣医師による、犬の耳の洗浄の方法と鼓膜を含んだ耳の中の診察を受けてから、家庭でのケアを開始するようにしてください。

耳の治療を始めたら、少なくとも2週間ごとには、犬の耳を検査して、汚れや臭い、そして異物が混入していないかを検査します。

犬がよく泳いだり、耳の感染症にかかりやすい場合は、外耳道を濡れたままにせずに乾燥させ、細菌や酵母の増殖を防ぐようにしましょう。そのための製品について獣医に尋ねてください。