【犬の口腔鼻腔瘻(口鼻瘻管)】手術の詳細を獣医師が解説します。

犬の口腔鼻腔瘻については、別記事をご覧ください。このページは、犬の口腔鼻腔瘻の手術の詳細を記しています。

犬の口腔鼻腔瘻の治療は、外科手術が行われるのが一般的です。全身麻酔をして行います。

まずは、犬の上顎の図です。黄色の矢印で示しているのが、犬の上顎の犬歯です。犬の上顎の歯は、全て口腔鼻腔瘻の原因になりうるのですが、特にその原因になりやすいのは、犬歯です。

犬上顎と犬歯

その上顎をやや横から見た図が下です。↓

犬の上顎を少し横から見ています。

検査の結果、この犬歯が口腔鼻腔瘻の原因だとわかれば、抜歯を行います。抜歯をすると、犬歯の断面ほどの穴が開き、これは鼻に通じています。いろいろな程度の口腔鼻腔瘻がありますが、ときには、この穴からチーズのような膿の塊が出てくることがあります。

抜歯をしたら、この穴から傷んだ組織、血液や膿を掻き出します。結構な出血が見られることがあります。

犬歯を抜いたところです。

白い点線に沿って、メスで切開します。ここでも出血がありますので、止血をしながら行います。

メスで切開します。

下の図のように、切開した組織の下には、上顎の骨があります。この骨にある骨膜という組織ごと歯肉を上顎の骨から剥がします。ここでも出血がありますが、やや少なめです。

ピンクの部分を剥がします。

上で剥がした歯肉で、開いた穴を塞ぐようにして縫います。この縫合が終われば、まずは終了です。

縫合して、穴を塞ぎます。

犬の口腔鼻腔瘻の診断は、X線検査で行うこともあります。そして、最もわかりやすいのは、プローブと呼ばれる器具を使って、口の中と鼻の穴が交通しているかを調べる検査を行うことです。

そのときに、プローブを口の方から入れて、鼻血が出るようでしたら、口腔鼻腔瘻と判断をします。

手術は、出血をしっかりと止めてから終わるのですが、麻酔から覚めて、ある程度活動的になると、また鼻から出血が始まることがあります。

私は、基本的に日帰りで帰っていただいておりますが、もし帰宅後の鼻血の可能性があれば、1泊だけはしていただいています。ほとんどの場合、翌日まで出血が続くことはありません。

犬の口腔鼻腔瘻の症状には、慢性的なクシャミ、鼻水、などがあります。この手術をすることで、それらが解消されますが、治るまでの時間は翌日から症状が見られなくなる犬もいますし、1週間ほどかかる犬もいます。

この手術で最も多い合併症は、縫ったところにまた穴が開いてしまうことです。この場合、再手術が必要になります。歯肉の蓋(歯肉フラップ)をしっかりと作れば、ほとんど合併症が見られることはありません。