シー・ズー、ペキニーズ、そしてラサ・アプソなどの犬の中には、下のようにまつ毛が眼球に入り込み、目を刺激する原因になることがあります。
この異常なまつ毛が生えているのは、涙丘と呼ばれるところです。拡大しますと、下のようになっています。毛が生えているところが涙丘、そして、その周りはやや窪んでいて、涙湖と呼ばれています。
涙丘睫毛乱生と呼ばれるものです。これは、元々は顔面の皮膚から起こったもので、それがこの涙丘に発毛したものです。ちょっとわかりにくいですね。
これだとうまく説明できていますか?
元々顔面の皮膚だった組織が、涙丘にも同じように起こってしまったもので、そもそも毛が生えるところではない涙丘に毛が生えてしまったというものです。
また、眼瞼縁と呼ばれる、いわゆる目頭は、顔面の皮膚から眼の粘膜である眼結膜へ移るところですが、犬ではこの眼瞼縁が不明瞭です。つまりは、はっきりと皮膚と眼結膜の区別がつきにくいことがあります。そうなると、元々毛が生えている顔面の皮膚と、元々毛が生えていない眼結膜がぼんやりと入り混じっていて、毛の一部が、涙丘や瞬膜、そして眼の表面に触れていることがあります。
こうなると、毛がずっと目に触れていますから、慢性的な刺激が続き、角膜炎や流涙症が起こります。
治療方法は、外科手術です。この涙丘を切り取るのが、手術の目的です。定期的に抜くこともない訳ではありませんが、毛ですから、すぐに生えてきますので、根本解決にはなりません。やはり、外科手術が必要です。
外科手術では、この涙丘のごく近くにある涙点、いわゆる涙管の入り口が上と下の瞼にありますから、これを傷つけないようにして、流丘を切り取ります。
涙丘を切り取った後は、また綺麗に縫い合わせます。この眼に手術に使う糸は、ヒトの髪の毛よりも細い糸を使いますし、とても細かな手術ですので、すべての工程は手術用の顕微鏡を使いながら行います。
慎重さは必要ですが、リスクレベルが低い、比較的安全な手術です。