【猫の乳腺腫瘍、乳癌】雌猫の胸にしこりを発見したら。獣医師が解説します。

乳腺に起こる腫瘍は、ほとんどが癌です。癌は猫の生命を危険にさらします。そして、確実に大きくなり、3cmを越えると、生存中央値が9か月です。もし肺やリンパ節に転移があれば、生存中央値は1か月です。乳癌の大きさが3cm以上であれば、2年生存率は0%というデータがあります。

猫の乳腺に起こる腫瘍のほとんどが悪性腫瘍、すなわち癌です。統計的な数値では、少なくとも80%が悪性、多ければ90%が悪性との報告があります。ほとんどが悪性という見方は間違いありません。

そして、猫の乳腺に起こった腫瘍はそのほとんどが癌であり、その大きさによって、その後の生存率がある程度わかっています。生存中央値というのは、生存した猫の生存期間の中央値ということで、短い猫もあれば長い猫もあります。その中央値のことです。ややこしいですが、平均値ではありません。

大きさ2cm未満の場合、生存中央値29か月

大きさ2-3cmの場合、生存中央値12.5か月

大きさ3cm以上の場合、生存中央値9か月

そして、大きさに関わらず、リンパ節や肺に転移がある場合、生存中央値は1か月

治療

見つけたら、できるだけ早くに手術をすることが大切で、小さなものであっても、できるだけ大きく広く取ることが推奨されます。

予防

確実に予防できるというものは、現在明らかではありませんが、避妊手術を早い時期に行っていると、乳癌の発生率が下がるという報告が多く見られます。しかし、乳癌が見つかった後で、その乳癌の摘出手術と同時に不妊手術(卵巣と子宮の摘出)を行っても、明らかにその後の乳癌を予防できるかというと、残念ながら、そのような報告はありません。やらないよりは、やった方がいいかも知れませんが、明らかにメリットだという報告がないのが現状です。とにかく若いうちに不妊手術を行った場合には、予防効果があるとされます。

猫の乳腺にできる腫瘍の大きさが、その後の生存期間を決めると言っても言い訳ですので、発見したらできるだけ速やかに切除手術を行うのが、生存期間を長く希望する場合には必要なことです。

猫の場合も、犬の場合も、不妊手術を行っていない場合に見ることがほとんどです。すると、ご家族の方の中には、不妊手術であっても乳腺の腫瘍摘出であっても、手術はかわいそうだというお考えの方も少なからずいらっしゃいます。

色々なお考えは尊重すべきですが、その決断に必要な情報の提供だけはさせていただくようにしています。

抗がん剤や放射線治療では、猫の乳癌を完治させることはできませんが、手術ができない場合の緩和的治療として選択されることがあります。