【犬の高カルシウム血症】カルシウムが高いのは、いいこと?獣医師が解説します。

健康診断や、その他の血液検査で、血液中のカルシウム値が高くなっていることがありませんか?血液中のカルシウム濃度が高いことは、骨が丈夫ってこと?のような捉え方をしてはいませんか?

血液中のカルシウム濃度を決めるのは、小腸からの吸収、腎臓での再吸収、そして骨からで、これらのうちどれか一つか、複数です。

つまりは、小腸からたくさん吸収されますと、血液中のカルシウム濃度が高くなります。

腎臓(尿細管)での、再吸収がさかんに行われますと、血液中のカルシウム濃度が高くなります。

そして、骨が溶かされて、そこからカルシウムが血液中に入ることで、血液中のカルシウム濃度が高くなります。

血液中のカルシウム濃度を調整しているのは、上皮小体と呼ばれる組織から分泌される、上皮小体ホルモン(PTH)や、ビタミンDの作用です。

ここで、高カルシウム血症がみられるものには、どんなものがあるかをお書きしておきます。

上皮小体機能亢進症、アジソン病、腎不全、ビタミンD中毒、多発性骨髄腫、悪性腫瘍の骨への転移、肉芽腫性疾患、脱水、健康で若齢のどうぶつ、殺鼠薬中毒ですが、犬で最も多く見られるのは、悪性腫瘍随伴性高カルシウム血症です。

そして、悪性腫瘍随伴性高カルシウム血症を引き起こす腫瘍というものがあります。

リンパ腫、多発性骨髄腫、アポクリン腺癌、扁平上皮癌など

これらの腫瘍は、上皮症体ホルモン関連ペプチドというものを分泌します。

上皮小体機能亢進症には、原発性上皮小体機能亢進症と、二次性上皮小体機能亢進症があります。原発性には、上皮小体の腺癌(悪性)、腺腫(良性)、過形成(非腫瘍)があります。二次性は、腎不全によるものです。

実際には、どのような原因が多いの?

重い高カルシウム血症の主な原因になるのは、上に記した病気の中で、上皮小体機能亢進症、アジソン病、ビタミンD中毒、そして、悪性腫瘍随伴性高カルシウム血症です。

高カルシウム血症になると、どのような症状がみられるの?

元気がなくなる、食欲の低下、嘔吐、下痢、多飲、多尿、神経過敏、不整脈、高血圧、腎不全の悪化

治療方法

高カルシウム血症の原因には、いくつかの病気が考えられますので、その病気を治すことを第一とします。

その他に、点滴、利尿薬、グルココルチコイド、などを使うことがあります。

悪性腫瘍随伴性高カルシウム血症では、骨のカルシウムも多く血液に溶け出しますので、骨の強度が弱くなり、弱い力でも骨折するようになります。

血液検査で、高カルシウム血症と診断されたり、受け取られた血液検査結果のカルシウムが高くなっていましたら、どうぞ注意して下さいね。