このようなポスターをご覧になった方は少ないかも知れません。
共催に書かれているとおりに、日本鳥類保護連盟、日本野鳥の会、野生動物救護獣医師協会が提唱することを環境省が後援して作られたポスターです。
ヒナが地面に落ちていても、拾わないでください。ヒトに拾われることで、その後生きていくことが難しくなります。また、野鳥の自然環境での生死について、ヒトが介入することは、慎重になる必要があります。
ときに、文鳥などのヒナに温めてふやかした粟玉などのエサを与えて、大きく育てることをイメージして、地面に落ちているヒナも、同じように大きく育てることができると想像する方があることは容易に想像できますし、気持ちもよくわかります。
しかし、文鳥のようなペットと野鳥の違いがあります。野鳥は、基本的に大きくなったら自分でエサを獲得する必要があります。その前に、飛ぶことも教えなければなりません。
地面に落ちているヒナは、親鳥と飛ぶ練習中ということが多く、巣立ちヒナとも言われます。つまりは、飛ぶ練習が必要だということです。これをヒトが教えることは困難です。
まして、ヒナに自然界でのエサの取り方を教えることは、もっと困難でしょう。
地面に落ちているヒナを拾いたくなる気持ちはわかりますし、放置できない気持ちや、善行をしているような気持ちになることもわかりますが、ここはぐっと辛抱して、そっとしておくことが大切です。自然のことは、生まれることも、傷つくことも、元気に生きていくことも、そして最後の瞬間も、すべて自然に任せるのが良いことがありますよね。
そして、大切なことがもう一つあります。
野鳥は法律で保護されています。国や都道府県などの許可を得ないで捕まえると、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」に違反します。つまりは、法律違反になります。
かなり深いお話
ときに、地面に落ちているヒナを放置することは、そのままだと危険だし命だから放置できない!!という正義感の強い方から反発されることもあるでしょう。
しかし、動物には、私達が手を出さなければならない動物、手を出しても良い動物、手を出すべきではない動物がいます。
手を出さなければならない動物は、ペットです。自力で生きていくことは難しいでしょう。手を出すべきではない動物は、野生動物です。自然の流れの中で、生きています。中間的には、家畜がいます。私達人間が自らの生命を維持するために生まれてくる動物です。
私たちの周りにいる動物は、おそらくは多くはペットです。(最近は、ペットという呼び方は嫌がられることがあります。)犬や猫ですし、野良犬、野良猫もほぼいませんから、飼い主がいる動物が、皆さんが見る動物のほとんどだと思います。
他には、野生動物、家畜がいます。家畜には、仕事をする使役動物と、食べ物になるフードアニマル(産業動物)がいます。
ベジタリアンを除いて、スーパーで肉を買って食べる人は多いと思います。焼肉が好きな人も多いですよね。フライドチキンや肉まんもお肉ですし、犬や猫を飼っている方は、これら肉食動物には、何かしらの肉を与えることになります。それはドッグフードだったり、キャットフードだったりするかも知れません。
そして、その肉は、もともとはだれかが育てた動物であり、それをお仕事として殺して肉に加工する方々があり、成り立っています。
お肉が好きという方に、まさかこれらの動物を殺すときに、ひどい!!とか、やめて!!などと言える方はないでしょう。私は食べる専門で、殺す人はひどいう人などというのは、まさに矛盾ですからね。
野生動物はどうでしょうか?
例え話です。遠い国の話になりますが、ライオンが、しかも、5日も食事にありつけていないライオンがいたとします。そして、もうそろそろ何かを食べないと命の危険があるところで、やっと獲物のシマウマの子供を見つけて狩をするときに、シマウマの子供がかわいそうだから、ライオンを殺して、などというのもおかしいですよね。単純に、命の大切さとかではなく、どちらかが命を落とす場面ですから、自然の流れに任せることも、大切だと考えるべきです。
何でも命であれば、保護するべきだというのは、生きている上では偽善にすぎません。これは断言できます。
高熱が出て、ときに抗生物質を飲むのだって、細菌とい命を奪っているわけですし、部屋にゴキブリが出たときにも、もし殺虫剤があれば使うでしょう。腕に蚊が止まったら、どうしますか?常識的は範囲では、多くの方が取る行動は一致しているのではないでしょうか。
そこで野鳥です。
この野鳥も、何かしらの命をもらって生きているわけです。まあ、このポスターの意図とは、ちょっと離れますけどね。
中にはいるんです。どんな命も救うべきだと考える方が。焼肉好きだったり、腕に止まった蚊を叩いたりする人かも知れません。
野鳥を保護した人から連絡があることがあります。そうすると、まず都道府県の鳥獣保護担当に連絡をしてくださいと伝えます。
流れとしては、野鳥を保護する→都道府県の鳥獣保護担当に連絡をする→野鳥の受け入れができる動物診療施設(動物病院など)に受け入れ要請の連絡が入る→保護した人が、受け入れてくれる動物診療施設(動物病院などに保護した野鳥を運ぶとなります。
そこで、保護した方の中には、良いことをしたと思う方がいます。しかし、どうでしょうか。その方は、本当に良いことをしたのでしょうか。
言い分としては、命あるもの、守ってあげなければという正義感かも知れませんが、その野鳥が生き延びることで、命を奪われる生き物だってたくさんいるはずです。
その自然の流れを完全に無視して、1点だけで話をするところが薄いと言われても仕方がないと思います。生きることと、死ぬことを裏と表で繰り返しながら、自然は存在していますから、全体の流れで捉えることも大切だと思います。
本題に戻ります。
ヒナは、巣立ちの練習中です。親鳥が見守っています。このようなヒナを拾った多くの人は、イヤ、親鳥はいなかったと言い張りますが、巣立ちヒナですから、親なしで遠くにはそもそも飛べないのです。それを、飛べないヒナを拾ったと言われますからね。
ちょっと厳しい話になりましたが、命を大切にするというのは、保護だけではないと考えています。生き物を一切殺めずに生きることはできないわけですから、保護だけを訴えると、すぐに破綻します。
命を尊重し、大切に大切にしていきたいと思っています。