【犬と猫の口にデキモノ】口腔腫瘍を獣医師が解説します。

犬猫の口腔腫瘍

エプーリス(歯肉腫)悪性黒色腫扁平上皮癌線維肉腫を解説します。

エプーリス

歯肉から起こるデキモノの全てをまとめてエプーリスと呼びます。エプーリスとは、一つの病気の病名ではく、歯肉から増殖するデキモノの総称です。

エプーリスは、多くの場合、手術で取り除かれます。そして、病理組織学的検査によって、それぞれ詳細な診断名がつくことになります。

エプーリスは、いくつかの分類があります。まだ確立されたものではありませんが、下のとおりです。

  1. 炎症性エプーリス:線維性エプーリス、巨細胞性エプーリス
  2. 腫瘍性エプーリス:線維腫性エプーリス、骨形成性エプーリス

エプーリスの治療

エプーリスの治療は、発見され次第手術をすることが基本となります。そして、病理組織学的検査を行なって診断します。

悪性黒色腫(メラノーマ)

メラノーマとは、犬の体のいろいろなところにできますが、口の中にできるものは悪性です。そして、顎の骨を溶かしながら大きくなったり、転移も見られるのが一般的です。10歳以上の犬での発生が多い腫瘍です。

口の中には、いろいろな悪性腫瘍ができますが、悪性黒色腫はその中でももっとも発生率が高いものです。

そもそも、犬の口の中を見ることができる飼い主さんは限られています。歯磨きもなかなか思うようにできないことが多いので、できる部位によっては、かなり大きくならないと気づくことができません。

前歯のあたりの歯肉にできれば、犬が口を開けているちょっとした瞬間でも気づくことがありますが、奥歯の近くだったり、唇でも小さかったりすると、なかなかわかりません。

腫瘍そのものに痛みがないために、よだれ、口臭、出血などで気づかれることもあります。

悪性黒色腫の治療

発見された時点で、完治はかなり困難です。できるだけ大きく取り除く外科手術がされます。腫瘍からまわり2cmは広めに取ることが大切ですが、それをやって、かつ近くのリンパ節まで取り除いても、1年を超えて生存できる犬は25%以下という報告があります。

しかし、中には、積極的に広く切除することで完治する犬がいるのも事実です。

扁平上皮癌

扁平上皮癌は、腫瘍がかなり小さい段階で腫瘍を含めて積極的に広く切除できれば完治も見込めますが、ほとんどは再発や転移をして完治が見込めずどうぶつの命を奪う怖い悪性腫瘍です。

口の中の腫瘍では多く見られるものですが、初めは腫瘍とは気づかれないことも多く、口内炎や歯肉炎のような治療を受けている間に次第に腫瘍の表情を取り始めることもあるために、治療が遅れることもあるようです。

扁平上皮癌のできはじめは、デキモノとして膨らまずに、まるで小さな炎症のように見えることがあるために、腫瘍として見落とされることがあります。

発生が多いのは、中高年以上です。扁平上皮癌も、他の口の中の腫瘍と同様に、よだれ、口臭、出血などから異常に気づかれます。

扁平上皮癌も他の腫瘍と同様に、確定診断は病理組織学的検査です。その他には、口腔X線検査では骨吸収と呼ばれる、いわゆる骨が溶けたような変化が見られます。

扁平上皮癌の治療

他の口腔内悪性腫瘍と同様に、腫瘍とその周りをできるだけ広く切除する外科的治療が選択されますが、部位によっては困難なこともあります。その他には、放射線治療も選択できますが、完治を目指す治療ではありません。

線維肉腫

犬の口腔内線維肉腫の発生は、悪性黒色腫、扁平上皮癌に次いで多く、統計では中高齢での発生が高くなっています。

口からの出血で気づかれることが多く、上アゴのや歯肉に硬めのデキモノとして発見されます。しかし、これが発見されるときには、線維肉腫の腫瘍細胞は、すでに骨にまで侵入していることが多く、治療は困難です。

扁平上皮癌同様、初期には気づかれないくらいに盛り上がりのない潰瘍や口内炎のように見えることが多く、見落とされることもあります。

線維肉腫の治療

基本的には治療が困難です。腫瘍治療の基本である外科的切除での完治は難しく、また抗がん剤だけでも完治はしません。それでも外科的切除と放射線を組み合わせることによって、比較的良い成績が得られたとの報告があります。

犬の口の中にできる悪性腫瘍は、悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫、ともに完治は極めて難しく、治療には外科的切除を基本としますが、それも腫瘍が小さいうちでないと効果は限定的です。

私も外科手術を行いますが、かなり広く切除したにも関わらずに、再発と転移を避けれれなかったこともあります。正直言って、犬の口の中にできる悪性腫瘍は、その発見時から、あまり遠い先のことではない最後の瞬間のお話をしなければならないこともあります。