犬の膿皮症
抗菌薬を繰り返し使うと、ときに、抗菌薬が効きにくい、あるいは効かない細菌が現れることがあります。これを薬剤耐性菌と言います。通常は、全ての薬剤に耐性を持つ細菌は稀で、何かしらの薬剤には感受性があることが多いものです。
薬剤感受性とは、薬剤耐性の反対で、薬で効果的に叩ける細菌というものです。
犬の膿皮症は、上の記事のようにアトピー性皮膚炎に続発することが多く、そうなりますと、毎年ある決まった時期に膿皮症が現れることがあります。そうなると、毎年決まってある一定時期には、膿皮症治療のために抗菌薬を飲むことになります。
膿皮症に使える薬の決定には、細菌同定および薬剤感受性検査を行います。
膿皮症の部位から採取した細菌を培養します。そして、細菌同定と言って、何という細菌かを特定します。また、その細菌には、どのような抗菌薬が効くのかを調べます。私はこれらの検査を、通常は専門の機関に依頼することが多いですね。
これまでは、犬の膿皮症の原因菌として、staphylococcus intermedius が挙げられていました。しかし、細菌は、staphylococcus psudintermediusということがわかり、一般化しています。
そして、このstaphylococcus psudintermediusにも、耐性菌があり、ときにメチシリンという抗菌薬に耐性を持つメチシリン耐性staphylococcus psudintermedius (MRSP)という細菌をみることがあります。
MRSPについてのいろいろ
MRSPはヒトに感染することがあります。しかし稀なことです。基本的な対策をとれば、感染症のリスクを低くする可能性があります。
もし、あなたの犬の膿皮症の原因菌としてMRSPが分離されたら、行うと良いことは下のとおりです。
- 犬との接触を最低限にする。(できるだけ一緒に寝ない)
- MRSPが多く認められそうな部位を触らないようにする。(膿皮症がある皮膚、鼻、口、会陰部)
- 犬の薬浴やシャンプーのときは、あなたの子供を犬から遠ざける。
- 犬の薬浴やシャンプーの後では、手洗いをして、できれば服を着替える。
MRSP保菌犬ってどんな犬?
MRSP保菌している犬は、ほとんどが何の症状も見せません。そして、膿皮症などの症状を見せることはないでしょう。しかし、他の犬や稀にはヒトに対しては、感染源になることがあります。
しかし、MRSPは、ヒトに感染する力が弱く、ヒトのMRSP感染症例はわずです。
適切な対処方法で対策すれば、ヒトにとっては決して怖い細菌ではありません。