毛周期
ヒトと同様に、犬にも毛周期というものがあります。毛周期とは、毛が生える周期のことです。毛は、成長期、退行期、休止期という周期を繰り返します。私たちに見える毛は、基本的に成長期の毛です。犬の体の毛は、成長期のものもあれば、退行期のものもありますし、休止期のものもあります。休止期には、毛穴に毛はありません。
毛周期停止
アロペシアX(脱毛症X)、偽クッシング症候群、成長ホルモン反応性皮膚症、去勢反応性皮膚症、そして、毛周期停止などといろいろな呼び方を持つ疾患です。そして、原因不明の脱毛を起こします。
この疾患の特徴
この疾患、ここでは、アロペシアXとしますが、特徴は、頭部と手足を除く体の広い範囲が脱毛します。1-2歳で発症します。そして、ポメラニアンに多く見られるために、ポメラニアンの病気と言われることもありますが、その他にもこの皮膚症が見られる犬種もあります。身近なトイ犬種では、プードルもそうです。
どのように診断するの?
原因不明ですし、この検査でアロペシアXとわかる、というような検査はありません。基本的には、頭と手足を除く体の広い範囲に脱毛があること、多くが1-2歳で発症すること、そして、他の似たような病気ではないことを検査で調べることで診断をします。
他の似たような病気とは、内分泌疾患と呼ばれるものです。すなわち、ホルモン異常による皮膚疾患のことです。
皮膚疾患の診断によく用いられる、皮膚組織学的検査では、ホルモン性の脱毛に見られるような所見が認められます。皮膚組織学的検査とは、病理検査で、犬の皮膚を局所麻酔でくり抜いて行う検査です。通常は、直径6mm程度の円形で数か所くり抜きます。どうぶつは行うのは局所麻酔だけで、多くは全身麻酔を必要とはしません。
皮膚組織学的検査には、結果が出るまで数日の日数を要しますが、ここで毛周期が停止している毛包が確認されます。
似たような内分泌疾患(ホルモン異常)
アロペシアXに似た、内分泌疾患(ホルモン異常)があります。クッシング症候群、甲状腺機能低下症、性ホルモン失調です。
これらの内分泌疾患(ホルモン異常)には、それぞれを診断するための検査があります。それを行い、これらの病気ではないことを示す必要があります。
アロペシアXの治療
アロペシアXには、治療効果が期待できる方法がありますが、必ずしも成功するわけではなく、重大な副作用が考えられるものもあります。この皮膚疾患は、全身症状を伴わないもので、皮膚に限局したものですので、副作用のリスクを取らず、安全性を優先した治療を行うことが一般的です。
つまりは、重大な副作用の心配がない、安全性の高い治療です。もちろんもこと、必ずその治療に反応するとは限りません。
予後
この病気で寿命が短くなることはありません。そして、上の治療に反応して、発毛が見られたとしても、また数年以内には脱毛が再発することがあります。たまたま反応した犬と同じ治療を期待して、真似たとしても、同様な結果が得られるとは限りません。
見た目を除けば、全く健康体ですので、治療を一切行わない飼い主さんの方が多いのではないでしょうか。私は、一応の治療方法はご説明するようにしていますが、積極的にはオススメしてはおりません。