【犬の歯周病とは?】どんな病気か?獣医師が解説します。

犬の歯周病

歯周病とは、歯肉炎と歯周炎のことで、歯肉だけが炎症を起こした場合には、治療によってよい状態にすることができますが、歯周組織にまで炎症が進んだ歯周炎になると、回復させることは極めて困難です。

犬の歯周組織

歯周組織とは、どのようなものでしょうか。歯周組織とは、歯槽骨や歯根膜といわれるもので、ここが侵されることで、歯が動揺するようになります。

歯槽骨や歯根膜が侵され、歯が動揺をし始めますと、いずれば抜歯が必要になります。抜歯を行わない場合には、次のようなことが起こります。

  • 時間が経って、さらに悪化すると歯が自然に抜ける。
  • 悪化した状態が続くと、根尖周囲に外歯瘻や内歯瘻が見られるようになる。
  • 下顎骨が吸収されて、ときに骨折する。

当然のことながら、動揺している歯に触れると犬は痛がります。触れなくても、犬自身の舌で触ったり、ものを食べる時には痛いはずです。

犬の歯肉炎はこうして起こる

犬の唾液に含まれる糖タンパクが歯に付着します。始まりはここからです。このタンパクが歯の表面に膜を作ります。唾液に含まれる成分ですから、歯磨きをしても何をしても、唾液があるわけですから、歯面の膜はまたできます。ちなみに、歯磨きや洗浄をしてから、どれくらいでこの膜ができるかと言いますと、20分もするとできます。

この歯面の膜に細菌が付きます。これが歯垢です。そして、歯垢が歯についてから歯肉に炎症を引き起こすまでの時間は、8時間ほどと言われます。

犬の歯垢に含まれるもの

細菌が作る糖類、死んだ細胞、白血球、唾液に含まれるタンパク質、細菌、食べ物の残渣、脂質など

歯垢に含まれる細菌は数と種類を増やし続けます。そして、これら細菌が歯と歯茎の間に接触し続けると歯肉は炎症を起こします。

そして、これらの細菌が作る物質は、歯肉表面だけではなく、歯肉の中に侵入します。歯と歯茎の間、歯肉溝は拡大して歯周ポケットが作られるようになります。

犬の歯周炎はこうして起こる

歯垢に含まれる細菌が出す成分に刺激されて、歯周組織にある細胞が、その組織を破壊する酵素を作ります。その酵素が、歯肉や歯根膜、そして、歯槽骨を支える成分を分解します。そうして歯周組織が壊れていきます。これが歯周炎です。

歯周炎が進むと、その周囲にある顎の骨が吸収されていきます。つまりは、骨が溶けるわけです。

もしかして、骨が溶けるほどの歯周炎はとってもひどい状態の犬にしか起こらないと思われていませんか?私がみる犬では、かなりの数に見られます。歯周病治療を行う多くの犬では、すでに顎の骨が吸収されていることがほとんどで、程度が軽いとか重いとかはありますが、全く何ともない犬は少ないという印象です。

犬の歯石は5日でできあがる。

歯垢は唾液の中のミネラルを取り込んで、硬い歯石になります。歯石は歯磨きでは取り除くことは非常に困難です。犬では、歯垢が歯石になるのに5日ほどです。ちなみに、ヒトでは歯垢が歯石に変わるのに20日と言われるようです。

歯石は、歯とは異なり、表面がザラザラしていますので、歯垢がつきやすくなります。この繰り返しです。歯槽骨は、顎の骨と歯に間にあって、歯がぐらつかないのは、歯槽骨が健康だからですが、歯周病ではこの歯槽骨が吸収されます。すなわち溶けます。すると歯は支えを失い、グラグラするようになります。最終的には歯が抜け落ちることになります。