犬の便秘
まず、初発のもので、犬に食欲があればほとんどの場合、大丈夫です。特に、慢性化や繰り返していなくて、初めてのものであればあまり心配いりません。でも、獣医師がいくら大丈夫ですよと言っても、出るまでは心配されるでしょうし、何か飼い主としてやれることはないかとお考えなら、難消化性デキストリンであれば、最悪効果がないとか下痢になったいうことはあっても、便秘の状況を悪くすることはないので、ご参考までに。ちなみに、amazonでも買えますよ。毎食、ティースプーン1-2杯くらいから初めて量の調整をしてみてください。(これは自己責任でお願いします)
犬の飼い主さんで便秘を心配される方は結構いらっしゃいます。何日までは出なくても大丈夫ですか?という質問は多いですね。私が普段診察をしているどうぶつの飼い主さんからの質問が多いので、その便秘だったり、飼い主さんが便秘と思っていらっしゃることの原因や背景を把握していますので、そのほとんどの方に、何も心配ないですよとお答えすることが多いです。後述しますが、排便困難による便秘が多く、その原因を治療することで便秘が解消されることが多いからです。
多くの便秘、あるいは、飼い主さんが便秘と思っている現象は、だいたいは無処置で解決しています。いつものように出なくて、とても心配だから質問されているんですよね。それは承知していますが、多くは様子を見ても良いものです。犬が元気で、特に食欲があるのであれば、なおのことです。食欲があるということは、口から消化管に食べ物が入っています。そうすれば、自然と出るはずです。もうちょっとの辛抱です。
とは言え、本当に治療を必要とする便秘もあります。
まずは、便秘とはどのようなものでしょうか。一応、獣医師が便秘という言葉を使うのは、次のようなものです。
犬の便秘とは、何日も排便しない、かなり努力してわずかしか出ない、残便感がある と、いうものです。
腸の中の物を肛門に向けて送る働きがうまく行かないと、便が大腸に留まって便秘になります。しかし、何日排便しなければ便秘なのですか?という問いに回答はありません。個々に違うからです。便が長く大腸に留まりますと、発酵ガスが発生して、腸の粘膜に炎症を起こすことがあります。このような便秘は、慢性化していたり、繰り返し繰り返し便秘を体験している犬の方が問題になりやすいものです。
犬の便秘の種類
便秘は、大きく分類すると、症候性便秘と機能性便秘に分けられます。
症候性便秘とは?
腸の中に異物があったり、腫瘍ができてしまったり、あるいはオス犬であれば前立腺が大きくなったり、メス犬であれば子宮が大きくなったりするなど、大腸周囲に便が出にくくなる原因がある状態です。
機能性便秘とは?
機能性便秘とは、排便をするという機能に障害がある場合に起こる便秘で、腸の運動異常や、便意を感じることができないなどして起こります。機能性便秘は、さらに痙攣性、弛緩性、直腸性の便秘などに分類されます。
麻痺性便秘
神経の過度な興奮によって、腸の動きが活発になることが原因とされています。副交感神経の緊張によって、大腸の動きが活発になり過ぎて便を肛門方向へ動かすことができずに、次第に便中の水分が減って便が硬くなります。難消化性デキストリンなどを食事に混ぜて与えるのも効果的です。
弛緩性便秘
大腸の収縮力や筋力が低下で、動きが悪くなっている状態です。便を肛門方向へ移動させる働きが低下しているために、ゆっくりとしか便が動かず、その間に水分が失われて硬い便になります。これは慢性的な便秘の原因になることがあります。例えるなら、握力が低下してうまく掴めないようなものなので、便の量を増やすような食べ物も治療の一つになります。
直腸性便秘
排便反射、すなわち、便意が極端に弱くなっている状態です。長い間、便意を我慢したり、浣腸を多用することで、神経の反応が弱くなることがあり、結果として直腸性便秘を起こすことがあります。他の便秘と同様に、長い時間便が大腸にとどまると、水分が吸収されて硬い便になることで、排便が難しくなります。
難消化性デキストリンは効果的です
獣医師からも便秘という診断があった場合で、犬に食欲があれば、難消化性デキストリンは有用です。amazonでも買えます。難消化性デキストリンは白い粉末です。使い方は、毎食食事に混ぜます。量は犬の大きさや、便秘の程度によりますので、一概には言えませんが、毎食ティースプーン1-2杯から初めて、必要な便の硬さと言いますか、軟らかさになるまで1食ごとに量を増やしてみるのも良いと思います。私がみる犬の中には、毎食大さじ1杯ずつ与えて、調子が良いという子もいます。ただ、使用につきましては、かかりつけの動物病院の獣医師にご相談してくださいね。
主な便秘の原因
閉塞、狭窄
腸管の中や腸の壁の異常として、大腸の腫瘍、肉芽腫、瘢痕、異物、憩室(会陰ヘルニア)、先天性狭窄などがあります。
腸管の外の異常として、腫瘍、肉芽腫、膿瘍、骨盤の骨折、前立腺やリンパ節などの大腸周辺臓器の腫大などがあります。
排便困難、排便拒否
肛門や会陰部の疼痛、排便姿勢がとれないなど
神経疾患として、脊髄疾患や骨盤神経損傷など
かがんで、排便姿勢を取ると痛みを覚えるために、我慢をすることがあります。
環境
居住環境の変化(引越し、新しいどうぶつの参加、家の模様替えなど)
しつけ(誤ったトイレトレーニングによって、家の中で排泄することを避けることがあります)お家の中で排泄をしてはいけないと覚えてしまうことがあります。
行動異常
食事
薬物
胃粘膜保護のお薬やバリウムなど
全身性疾患
高カルシウム血症、低カリウム血症、甲状腺機能低下症、重度脱水など
初期の便秘の多くはあまり心配のないものですが、慢性化したり繰り返す便秘は、犬も飼い主さんにとっても大変に深刻なものです。
便秘の治療は、便秘を起こしている基礎疾患を突き止めて、治療できるものであればそこから始まります。それでには、対症療法で症状の緩和をはかったり、再発を防ぐ必要があります。排便の様子だけではなく、全身状態を見ながら治療を行うことが大切です。