犬の急性胃炎
犬が吐くこと、嘔吐は、動物病院では日常的にみるもので、多くが急性胃炎です。獣医師が急性胃炎と診断する病気は、原因不明の急性嘔吐が24時間、あるいは48時間以内に治るものです。これ以上続く嘔吐は、急性胃炎という病名にはなりません。
それ以上続く嘔吐でも、はじめは24時間あるいは48時間のうちは、急性胃炎という診断で治療を受けることもあると思います。そして、嘔吐が48時間を超えて続くときに、急性胃炎という診断を一旦再検討して、急性胃炎ではない病気ではないかと、次の確定診断に向けて検査を追加することもあるでしょう。
急性胃炎の症状は?
食べ物や胆汁の嘔吐です。断続的に吐くことが多いですね。
急性胃炎、犬が吐く原因は?
原因の追究が困難なほどに、早くに治ることが多いのですが、急性胃炎の原因としては、腐敗物や中毒性のものを不適切に食べてしまったり、化学的刺激物、ステロイドやその他の消炎鎮痛薬などの薬剤、食べ物に対するアレルギーや不耐性というものもありますし、免疫に関係するもの、ストレス、尿毒症、肝不全、副腎皮質機能低下症などがあります。
急性胃炎の他にも嘔吐を症状とする病気は多いですので、犬が吐くというだけで原因を追究することは難しいでしょうね。
犬が吐く、胃の病気 (犬の嘔吐の原因が胃にあるものの代表的なもの)
*胃拡張捻転症候群の記事↓
これらは、犬が吐く原因が胃にあるものだけですので、犬の嘔吐の原因全てではありません。私がよくみる胃の病気は、この急性胃炎、胆汁嘔吐症候群です。ときに出血を伴う場合には、吐いたものに血が混ざっていることがあります。
どうやって急性胃炎と診断するの?
多くは病歴や身体検査、そして他の病気ではないことを除外して診断します。対症療法に反応するか、すなわち、吐き気どめなどの薬で治るかどうかでも判断します。いくつかの検査を行うことも多く、一般血液検査、尿検査、糞便検査は最低限行う検査です。
異物を飲み込んだ可能性がある場合や、犬の具合が悪い場合、その他必要な場合には、X線写真(レントゲン)や超音波検査(エコー)を行うことも多いですね。
どのように治療するの?
急性胃炎であれば、多くの治療を必要としないことがあります。それでも、早期に解決させるためにはお薬がとても役に立ちます。吐くわけですから、口から与える薬ですと、それもまた吐く可能性があります。できるだけ注射で投薬して、早くに楽にしてあげたいものです。
症状が軽く、犬が元気であれば、半日から24時間ほどの絶食をしてから、低刺激性(低脂肪や低線維)のフードを始めます。犬の症状の程度によっては、食べ物を変更したり、対症療法として点滴やビタミン剤、その他の薬剤の投与を行うことがあります。
有害物質を吐かせる必要があるとき
もし犬が有害物質を誤飲や誤食している場合には、催吐薬で吐かせる処置も検討します。
異物などを取り除いてもなお嘔吐を繰り返すとき
吐き気を止める薬を注射します。特に始めの治療から飲む薬を選択しても、注射に比べて効果が限定的だったり、投与した薬を吐くなどすることがあるので、注射で投薬することが推奨されています。
胃の運動を改善させる
消化管運動機能改善薬というものがあります。1回の投与では長い時間作用はしないために、点滴での投薬が有効です。
その他
胃粘膜を保護する薬や、胃酸を抑える薬、ときに抗生物質を使いますが、明らかな細菌感染がない場合には、急性胃炎の治療で抗生物質は必要ないことが多いです。
犬が突然吐くことは多いことです。吐く物は、食べ物や胆汁が多いですが、ときに胃液だけや白い泡も吐きますね。そして、血液が混ざることもあります。しかし、犬が元気で、吐き始めて24時間も経っていなければ、まずはシンプルな病気を疑うことが妥当です。突然に、極めてまれな病気が起こることは少ないですし、ほとんどの嘔吐は一過性で、早期にちゃんと治ることが多いものです。