犬の歯周病を無麻酔で治療する? 【全身麻酔と無麻酔の歯科処置はこんなに違う】

口臭がする。歯は大丈夫かな?動物病院で診察を受けると、歯周病と診断され、全身麻酔での処置を勧められることになることは、とてもよくあることでしょう。

そこで悩むのは、犬の口腔処置は「全身麻酔」で行うということ。
全身麻酔は危ないのではないか?麻酔なしでどうにかならないか。

結論ですが、一般的な犬の歯周病を全身麻酔を使わないで治療することはできません。それは、技術的にできる動物病院とできない動物病院があるということではありません。

なぜ全身麻酔でないと、適切な口腔処置ができないのか?

これにお答えするには、口腔処置とはどのようなことをするのかを知っていただく必要があります。歯周病治療として、最も大切なところは、歯と歯茎の隙間です。

歯周病治療の柱は3本あります。歯石の除去、ルートプレーニング、キュレタージです。

そして、この処置はいずれも、歯と歯茎の間に行います。

歯石の除去は、通常はほとんどの動物病院で行うことができて、超音波スケーラーという機器を使います。ヒトと同じもので、超音波振動で歯面から歯石を剥がします。超音波スケーラー作動中には、機器と歯の間に、かなりの熱が生じますので熱を取り除くためにスプレーのように水を噴射させながら処置を行います。

ヒトも同様ですので、超音波スケーラーを使う時には、口の中にたまる水を吸引しながら行います。

ルートプレーニングやキュレタージは、歯と歯茎の間の歯石の除去や、また歯と歯茎の間の隙間を浅くするために、傷んだ歯肉を取り除いたりします。これは、シンプルな手技ですが、とても大切で、歯周病治療には欠かせません。

これを1本の歯の全周に行い、さらに全ての歯に行います。

さらには、歯を洗浄したり、もし歯に修復不可能な深刻な歯周病や動揺があれば、抜歯をしなければなりませんし、抜歯をする時には、全身麻酔をしている中でも、局所麻酔を口の中に施し、さらに痛みを低減させます。

そして歯の根っこ、根尖膿瘍などの感染症があれば、口の中にレントゲンフィルムやX線センサープレートを入れて、レントゲン検査をしなければなりません。

この中で、どうぶつの安全を確保しつつ、無麻酔で行える処置はありません。

無麻酔で歯石を除去しますという動物病院があります。

本来しっかりと治療しなければならない歯と歯茎に間には、何も処置をせずに、見えるところの歯石を取るだけのことしかできていません。

残念ながら、全身麻酔を懸念する飼い主の心配と知識不足に漬け込んだ、非常に中途半端なことしかできないのが実情です。

全身麻酔下と、無麻酔の歯科処置はこんなにも違います。