犬が急に下痢をした。【現役獣医師が解説します。】

もしあなたの愛犬が急に下痢をした場合、早めに動物病院に行ければ、それに越したことはありません。

それが大前提ですが、この記事を読んで頂いているということは、急ぐべきか、様子を見てもいいのかを知りたいのではないでしょうか。まず、下痢を起こす病気は数多くありますが、その中で、急いで動物病院に行かないと大変なことになるものは多くはありません。この「急いで」というのは、概ね3日以内のことで、4日以上に渡って下痢が続く場合には、どのような場合であっても急いで動物病院に行って下さいね。

多くの急性の下痢は、少量の便を頻繁にして、ややゼリー状のうんちが出たり、時に真っ赤な血液を伴った血便が出たりします。頻繁に排便姿勢をとるものの、出るものがちょこっとだけだったり、血液だけがポタリと出ることもあります。

これは大腸炎の症状のことが多く、できるだけ早めに診察を受けた方がいいのは確かですが、夜に帰宅したら血便があったとか、夜中から始まったからと言って、夜間救急で診察を受けるほどではありません。翌日に受診をすることでしっかりと治療ができることがほとんどです。

ただ、中には翌朝に仕事があって、動物病院に行けないとか、とにかく早くに治したいという場合には、おそらく夜間の診察料が余計にかかるでしょうけれども、動物病院に行って下さいね。

もちろん、下痢ってこれだけではありませんから、下の記事も読んでくださいね。

まずは、少しの間であれば様子をみても良い下痢と、すぐに動物病院に行った方が良い下痢を並べてみます。

私が普段診察する下痢を症状とする病気で、急いで来院してもらっていないと危なかったなと思うことは少ないものです。

下痢が3日間以内であって、少しの間であれば様子をみても良い下痢

元気と食欲があって、嘔吐が見られないもの

元気と食欲があって、嘔吐が見られるが、嘔吐の回数が3回以下のもの

元気や食欲があまりないということでも、いつもそれほど元気があるわけではないとか、食欲もだいたいいつもムラがあって、元々食べたり食べなかったりすると言った場合には、いつもと同じ程度か否かで判断するのが良さそうです。

下痢が3日以内ではあるが、できるだけ早くに動物病院で受診した方が良い下痢(4日以上続く場合には、どんな場合でも急いで動物病院に行って下さいね。)

元気と食欲がなく、水っぽく量の多い下痢

下痢と嘔吐が頻繁に見られるもの

下痢の原因

下痢をしたどうぶつを連れて受診された場合には、まずご家族の方が気になるのは、その理由のようです。

変わった食べ物は与えてはいません。とか、少しだけおやつを与えました。とお話し下さることが多いですね。

ただ、私が診察をするほとんどの下痢の原因は、ズバリ「ストレス」です。

ただ、診察、問診、検査をする中で、最終的に判断しているわけですが、もちろん断定は困難で、ストレスの可能性が高いですよとお伝えすることになります。

以下、よく見る急性の下痢の原因です。

ストレス(環境の変化)

低品質の食物

急な食事の変化(内容、量、あるいはどちらも)

急性膵炎

もちろん、急性の下痢の原因はこれだけではありません。しかし私が見るのは、上のような理由がほとんどです。

詳細な状況

具体的な例で説明しますね。

この日は血便をした犬が来院しました。

先生、うちの犬が血便をしたんです。そう言いながら、少量の血便をラップに包んで持って来られました。

これは正解ですね。血便ではなくても少量のサンプルがあると検査にすぐに取りかかれます。(どうしても便を持って行くことができなければ、写真を撮って見せて頂いてもいいと思います。)

時々、大量の下痢便を何回分か持って来られる方があります。

まあ、必要ないですよね。検査をするとしても、一番新しいものでやりますから。

先日、チャックができる食品保存用の透明の袋に、「今日の朝」とか「昨日の夜」とか大きく書かれて、5つも持って来られた方がありました。しかもそれぞれがかなり大量です。

全部の袋を調べる意味がありませんから、一番新しいものを調べますし、検便に必要なのはかなり少量ですので、大量にあるとそれだけ良い検査ができるとは限りません。

便サンプルを顕微鏡で調べてみますと、芽胞と呼ばれる特徴的な構造を持つ細菌が見られました。これだけで、何の細菌かを特定することはできないのですが、Clostridium perfringens(クロストリヂウム パーフリンゲンス)と呼ばれる細菌かも知れません。これは常在菌と言って、元々犬の体内にはいるものです。稀に感染することもありますが、多くの犬の腸の中にはいますから、それが感染したものか、元々いるものかを区別することは困難でしょう。

犬の急性の血便の原因で、最も多いのは環境の変化などによるストレスです。こうお話をすると、「うちの子にはストレスはありません。」と言われる方があります。もちろん、原因がストレスだけとは断定できませんが、ストレスになりそうなことはなかったかを探していただくのは悪くないと思います。

ペットホテルや入院から帰って来た

一緒に出かけた(散歩というより、お出かけ)

いつもより長めに散歩をした

初めてのところに行った(ドッグラン、トリミングサロン)

来客があって、たくさん遊んでもらった(少し緊張していた)

寒暖差が激しかった

近所で大きな音の工事が続いている

などでしょうか。特別に変わった食べ物を与えて以内場合には、環境的に変わったことはなかったかも考えてみて下さいね。