TPLOを行なっています。 – 犬の前十字靭帯断裂 –
寒くなりました。
それでも今は一番過ごしやすい季節かも知れませんね。
時間ができると散歩に行こうと思いますし、散歩に行ったら行ったで長めに歩こうと思いますし、きっと体で感じるストレスも少なくなる気がします。
始まりはお電話でした。
「TPLOの手術はおいくらですか?」
(色々な決まりごとがあり、費用を掲載することはできません。スミマセン。)
初診の方です。当院でTPLOができることをどのようにして知られたのか気になりましたが、費用をお伝えすると、一度診察に来たいとのことでしたので診療時間をお伝えしました。
お母さんに抱っこされて小型犬の診察が始まりました。
ただこのワンコさんは、当院が3件目ですので診断は既に立っています。
左前十字靭帯の完全断裂です。1件目はいつものかかりつけ動物病院。そこで診断は立ったものの、手術ができないとのことで、紹介された2件目に行かれ、そこで手術費用を聞かれてびっくりされて当院にお電話されたという流れです。
この2件目で提案された手術方法がTPLOというものです。
前十字靭帯の断裂とは、膝にある靭帯が一部だったり、完全にだったり、切れてしまいます。
この靭帯が切れてしまうと、膝に痛みがあるので、うまく歩けないようになります。
お家の方々は、痛めた足をあげて歩く子を見て、動物病院に行かれることになります。
前十字靭帯の断裂が起こると、手術をすることになります。お薬では治りません。ときに、自然に治ったように見えることもあります。これはあまり活発ではない体重の軽い小型犬に見られるものです。前十字靭帯を損傷あるいは断裂を起こしたワンコのほとんどは手術を受けることになります。
手術方法は、関節外法と呼ばれるものが主流です。国内、海外問わず、関節外法がほとんどでしょう。しかしながら、関節外法には色々と問題があります。そこで、関節外法以外の手術方法として、TPLOやTTAというものがあります。これらは骨を切って行う手術です。
TPLOやTTAという手術方法にも何も問題がないわけではありませんし、手術の失敗や合併症となりますと、とても厄介なことになります。もし合併症が起こると、結構大変です。しかしながら、合併症の確率は低く、TPLOやTTAという手術方法は歩けなかった子が歩けるようになるまでの早さが違います。格段に早く歩けるようになります。
TPLOやTTAでは、スネの骨(脛骨)を切って特殊な器具を装着します。
骨を切るための電動のノコギリや、特殊な骨プレート、ロッキングスクリュー、などなど他の手術では使わないようなものをたくさん使って行います。
僕が興味深かったのは、ワンコの飼い主さんが、TPLOという手術をどこでもできると思われているのではないかと感じたことです。かかりつけの動物病院ではできなくても、近所の動物病院ではできて、そこで手術費用の比較をされたのではないかと思いました。しかし、特別な道具や機器、そして技術が必要なために、できる動物病院がかなり限られます。東京都内でTPLOやTTAができる動物病院が何件あるかはわかりませんが、もしかすると10件もないか、予想以上にあったとして多くても20件くらいだと思います。スミマセン、何も調査していない数字です。
できる動物病院がほとんどありませんから、どこの動物病院でTPLOをやろうかな、などと比較することができないのが普通です。TPLOを提案する動物病院も、他ではできない手術だという前提でお話をすることになるでしょう。
このワンコは2日前に手術を終え、まだ足をうまく使うことはできませんが、その他はいたって元気ですので、あとはもう少し時間が経てば歩けるようになるはずです。
今回の手術ではワンコが小型犬だったために、骨を切るときにミリの単位での正確さが要求されました。1mmでも違うラインで骨切りを行うと、危ない合併症が起こる確率が高まります。とにかく慎重に、慎重に骨切りを行いました。(大型犬ですと、そこまでの精度は求めれませんが、それでもミリ単位で手術計画を立てます。)
この手術は、しっかりと正しい骨切りができるかが最も重要なので、切れてしまえばあとは難しいところはありません。
順調に手術は進み、骨からも、膝裏の動脈からも出血することなく終わりました。
その日のうちにご面会があり、元気そうな姿を見られて安心されていました。
食欲も旺盛ですし、少しだけですが手術した方の足をついて歩きますし、まずまず順調だと思います。
きっとこれからもTPLOで手術をすることが増えそうです。