アメリカに行ってきました。-その3-
3月の雨は、降る度に暖かくなる区切りの雨のようにみえますし、街に降り注いだ花粉を洗い流してくれるような、そんな期待の雨です。
4日間だけ滞在したアメリカから帰ってきて、そろそろ2か月になろうとしています。かなか更新できずにいたら、こんなに月日が流れていました。
最終日はこれまでの総仕上げで、手術手技の中で気になるところを解決するため日です。
みんなにも、講師にも疲労ひ色が見えてくる日になりました。午前中いっぱい、そしてお昼を軽くとってからおおよそ午後2時までずっとずっと手術トレーニングでした。
もう同じ手術手技を何度も何度も繰り返しますので、あまり考えたり迷ったりすることもなくなり、どんどんと手術を展開していけるようになります。
あとは、前十字靭帯の損傷だけではなく、半月板の損傷の程度や、滑膜炎の程度により、ほかの手技を加える必要があるかどうか、そしてしっかりと治るまでの時間がどれだけ短縮できるかという不確定な要素を検討することになりますが、これは個々に異なる問題ですので、実際の患者さんの膝を開けてみないとわからないものです。そこには経験値が大きく関わることになるはずです。
3日目の最終日だけは、午後が3時前には終わりました。
少しだけ休憩して、帰りのバスです。
そのままラスベガスの空港に直行です。
みんな色々なところへ帰りますので、利用するターミナルも異なり、オクエンドセンターのバスは順番にそれぞれのターミナルを通り、参加者を降ろしてくれます。
僕はラスベガスからまずはロサンゼルス、そして東京です。
ラスベガスの空港ではある程度時間に余裕のある飛行機を予約していましたので、少しゆっくりできます。
東京の動物病院に電話をしてみました。
研修中も毎日、日に何回か連絡を取っていますので、おおよその動きはわかっています。
「園田です。全ての日程が終了し、これから帰ります。みんな元気ですか?」
みんな元気そうですし、特別に大きな問題はなさそうでした。
まあ、本当によくやってくれたと思います。
ラスベガスからロサンゼルス行きのLCCに手荷物を預け、何でも高価な空港では財布の紐をしっかりと締めることにしました。
たまりかねて、コーヒーとバナナだけ買ってしまいましたが、本当にアメリカは物価が高いといいうか、日本が安いというか。
ロサンゼルスまでの飛行機では熟睡して、何も覚えていません。
僕は飲み物のサービスを受けられないことが多く、これは国内線でもそうなのですが、飛行機の中ではとにかく寝ることにしています。
ロサンゼルスの空港に着いて、驚いたのは、国際線に乗るための長蛇の列です。
保安検査場を通過するまでに1時間以上はかかります。
その間に、薬物探知犬でしょうか、何度も何度も列を作っている乗客の周りをグルグルと回っていました。
保安検査場を出ると、もう搭乗まであまり時間がありません。
病院で待っているみんなにお土産を買いたくて、ロサンゼルスに来ると必ず買うチョコレートを探して歩きました。See’s candy が僕もみんなも大好きなので、いくつかの種類を集めて購入しました。
飛行機の搭乗、そして早朝の羽田着です。
朝の5時前には羽田空港に着陸しました。
そのまま箱崎に向かって出勤し、夜までの診療が始まります。
弾丸研修ツアーはこのように終わりました。
それからおおよそ2週間、TPLOを実践する日がきました。
大型のワンコで、完全に前十字靭帯の損傷がみられます。
いくつかの手術手技をお話しし、TPLOに決まりました。
東京のでの手術をでは、アメリカではみられなかったことが起こります。
脛骨の骨切りラインからかなり出血します。
TPLOを行う多くの獣医師がこの出血に遭遇します。
例外に漏れず、僕もそうでした。
ただ、特別に注意が必要な膝窩動脈からの出血ではなかったために、それほど問題にはならず、そのまま手術を続け、無事に終了しました。
アメリカで、膝窩動脈から出血したらどうすれば良いかと質問しました。
日本の先生方は、圧迫するとか、包帯でぐるぐる巻きにしておけば5分くらいで止まるし、それほど問題にはならないとお話しされていました。
アメリカ人の専門医の先生は、出血は気にしない。そのまま手術を続ける。それだけでした。
僕もその教えに従い、気にせずに手術を続けましたが、看護士さんがちょっと慌てていました。
その大型のワンコも今日で手術から1か月でした。
再診でご来院されましたが、とてもよく歩けるようになっていて、手術は成功したと考えています。これまで、前十字靭帯の手術で用いてきた手技は、関節外法、TTAでしたが、新しくTPLOが加わりました。
そして来週もTPLOが予定されています。
着実に手術数を増やし、経験値をあげ、良い成績を積み上げて行きたいと願っています。
アメリカ研修のご報告はこれで終了です。
長い文章を読んでいただきまして、ありがとうございます。