停留睾丸 – 犬の精巣腫瘍 –
外の空気は冷たいですけど、とっても良い天気になりました。
日本海側では雪が降っているところもあるようですし、スキー場のオープンのお話しもニュースで流れるようになりました。
もうそろそろ水天宮前の歩道に提灯が並ぶはずです。毎年のその提灯がを見ますと、今年も残すところもう少しという感じがします。
当院に通われているワンコさんのお散歩友達が来院されました。
ご紹介されて来られたのは、その子と毎朝公園で一緒にお散歩をする、同じくらいの大きさの男の子です。
お母さんはとっても心配そうな表情でお話を始められました。
本来なら左右にあるはずの精巣が片側しか見えないから、もう1つはお腹の中にあるようだということでした。かかりつけの先生は、これまでエコーで定期的に検査をされているとのことで、その大きさが最近になって大きくなってきていて、そのお腹の中にある大きくなった精巣を取り除くために手術が必要とお話をされたということでした。
その手術を当院で希望されていました。
ご紹介をしてくださったお友達ワンコさんも、初めて当院に来られたのは、もともとは手術の御依頼からでした。
かかりつけの動物病院では、手術のための準備にやや日数がかかるということで、早めにできる当院で行うことになりました。
事前ににいくつかの検査をして、特別な問題がないことを確認しました。
もし大きくなっている精巣が腫瘍の場合、転移が起こっていたり、貧血が見られたりすることがあります。血液検査や胸のレントゲン検査を行いました。
手術の当日は、午前中からお預かりをするのですが、ご家族の方は色々な不安から涙、涙のお別れでした。この手術は1泊2日で行います。そのワンコさんは、これまでご家族と離れてお泊まりをしたことがないということで、きっと不安だけではなく寂しさもおありだったのだと思います。
いくら仲の良いお友達のご紹介で、前情報をたくさん聞かれていても、うちは初めて来院する動物病院ですし、はじめてのお泊まりをしなければならないところでから。
かなり大きくなっている精巣ですが、いつものように手術をすれば想定外の問題はないはずです。とにかく元気な状態でお返ししなければなりません。
血管を確保して点滴を流しながら、ゆっくりと薬を入れて寝かせました。
仰向けに寝かせると、右の下腹部に大きくなった精巣の形がはっきりとわかるくらいに膨らみが現れました。かなり大きいのがよくわかり、開腹前に手術のチームは無言になってしまいました。
慎重に切開を広げ、腫瘍化した精巣をそっとお腹の中から出しました。
まだ血管その他が繋がっていますから、それらを順番に処理しました。
腫瘍の重みだけで重要な血管が切れてしまわないかを気にしながら、数か所を処理して腫瘍化した精巣を取り除くことができました。縫合して終了です。
開腹手術をしていますから、1泊だけは様子を見せてもらい、翌日にお迎えに来ていただきました。
ワンコさんの元気な姿を見て、お母さんも笑顔になっていただきましたよ。
それでも心配は続きます。
傷口を舐めてはしまわないだろうか、痛みはどれくらいあるのだろうか、などなど。
そのご質問の多くは、手術を済ませたほとんどのご家族からいただくものとほぼ同じで、散歩には行けること、傷口は舐めても問題がないこと、食事は何でも食べられること、などなどお話をしました。
無事に退院し、1週間目の検診も終わりました。
お母さんの笑顔で、ワンコさんがとっても元気だということはわかります。
お散歩仲間は多いようです。数名の方から、ワンコさんがいつもの公園で元気にお散歩しているという話を伺っていました。
お腹の傷口もきれいで、腫れも赤みもありませんでした。
もう少ししたら抜糸ができます。その頃には病理検査の結果も出ているはずです。良性か悪性か、これもまたお母さんの心配の種になっています。いずれの結果でも、しっかりとフォローアップできます。
これからも笑顔でお散歩が続けられますように願っています。