日本橋動物病院だより

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遠くからのご来院 - 橈尺骨の骨折 –

涼しくなりましたね。雨が降ると、寒ささえも感じる日になりました。

ちょっと遠くから来院された、小型のワンコさんがあります。

この子は、ある動物病院からのご紹介です。

4年間に今回も含めて3回も骨折をしたとのことでした。

今回の骨折の原因は、抱っこした腕から落としてしまったとう事故でした。

このような事故はどうしても起こってしまいますが、ワンコさんは意外と元気な事が多く、そしてお家の方はとっても落ち込んでいらっしゃることがほとんどです。

ご紹介元の動物病院で、1回目と2回目の手術を受けられたようですが、どちらもそれぞれやり直し手術が必要だったようで、どうにか1回で治してあげたいというお話もありました。

このワンコさんはとにかく小さく、骨もとっても細い子です。

ご紹介元では、2回目の骨折の整復手術のときに国内最小の骨プレートで手術をされたようで、これが逆に小さすぎてうまくいかなかったようでした。

お母さんが連れてこられましたが、ご自宅から当院までは結構時間がかかりますので、骨折のワンコさんをかかえて、診察室のご案内したときにはお疲れのようでした。

ワンコさんは、骨折した腕を軟らかいクッション素材の包帯でぐるぐる巻きにしてあるので、痛みはなく、とっても元気にしています。床に置いたら、包帯のついている腕を重そうに上げながら走り回ります。キャンキャンとすごい勢いで「遊ぼうよ!」と言ってくれます。

お母さんも苦笑いでした。

レントゲンで骨折様子を確認し、手術計画を立てました。

必要な器具は全て手術に向けて用意してありましたので、その日に手術をすることにしました。

お母さんは、ご自宅から当院までの距離から、面会には来られませんので退院の日に迎えに行きますとお話しされ、あとはお預かりする事にいたしました。

今回の腕はかつて1回骨折をしたことのある右腕で、やや変形があるだけではなく、橈骨と尺骨が一部でくっついていました。

歩いたり走ったりと、腕の機能はある程度は保たれていますが、100%ではないはずでした。

X線検査の結果をもとにして、使うプレートをどれにするかを決めました。

当院には体重毎や骨の太さなどによって使い分けるために、いろいろな種類のプレートがあります。多くの動物病院では1-2種類ではないでしょうか。

うちにある骨プレートは、DCP (Depuy Synthes)、LCP (Depuy Synthes)、ALPS (KYON)、SOP (Orthomed)、MATRIX (Depuy Synthes)、TITAN LOCK (シグニ) の6種類です。全てを同じように使うわけではなく、今ではLCPとALPSを使うことが多くなっています。TITAN LOCKは体重が2kgに満たない子に使います。僕が骨折の整復手術をした子でこれまで最も小さかったのは800gの子でした。

それぞれのプレートには、適応サイズが決まっていまして、最近よく使用するLCPやALPSというプレートでは800gの子には適応していません。

今回は体重が2kgを少し超える子でしたので、ALPSというロッキングプレートを使うことにしました。

骨折してしまった腕(橈骨)は幅が5mmもなく、厚みも4mm程度です。

落下による骨折の場合には、他にも怪我がないか、内臓には問題がないかを調べてから手術を行います。

麻酔をかけてからワンコさんが動かなくなったところでそっと骨折した腕を触ってみます。

とても細い腕ですので、骨折した骨の端っこが皮膚を突き刺していないかもみます。

内出血の程度、腫れの様子、関節の様子。

毛を刈って消毒をしてから手術をはじめます。

骨折部位に向けて切開をしたり、骨をみるために筋肉をよけたりします。

この部位の骨折の整復手術では、筋肉は避けますが切りませんからあまり出血はしません。

しかし骨折をしたときの出血の影響はあります。

筋肉を分けて骨折した骨を露出してみました。

レントゲンで見えた橈骨と尺骨の一部がくっついているところがあります。

その近くで骨折していました。

骨折している骨をそっと起こして、まずは真っすぐに直してみます。

やや捻転させてちょうど真っすぐになりますので、このまま固定に入ります。

骨の上にプレートを当てて、ドリルで穴をあけます。

その穴にネジを入れながらプレートを固定します。

これを数か所に行い、手術は終了です。

これまで何回骨折の整復手術をしたでしょうか。

だんだんと早くなっていると思います。

先輩獣医師にお話を伺ったことがあります。

もう還暦を過ぎた先生です。

それでも、だんだんと早くなるし、失敗もしなくなる。そうお話ししてくださいました。

やっぱりそうなんですね。

このワンコさんは、数日後の退院のときには包帯も何もない状態で元気よく歩けるようになっていました。

お迎えにはお父さんも来られていまして、ワンコさんがもう歩けることを見られて、喜んでくださいました。

次は抜糸のときにまた来院してくださる予定です。

まだ若い子ですから、たくさん歩きながら手を使いながら丈夫な骨になると思います。

骨折した時は痛かったはずですが、そのこともすぐに忘れることがでたように見えました。

久しぶりのお家です。少し長旅だけど、皆待ってますよ。